発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 344ページ 上製
定価:6,200円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-3036-5 C0037
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年09月 書店発売日:2009年09月26日
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跡見学園や東洋女学校など明治期から現在まで続く女子高校、女子大学を中心に、その建学の理念、当時の授業内容をつぶさに調査。「和洋裁伝習」などの職業訓練や「良妻賢母」の養成など、現代の教育に通じる男女不平等の要素を詳細に検証する。
目次
まえがき
序論 問題の所在と研究の目的および方法
第一節 問題の所在
第二節 研究の目的と研究方法
第三節 研究方法に関する理論
第四節 潜在的カリキュラムにおける「マクロ」と「ミクロ」の視点
第五節 本書の構成
第一章 キリスト教主義女学校の建学精神とカリキュラムの分析
はじめに
第一節 明治期キリスト教系女学校の中の明治女学校の位置
第二節 授業内容に見るカリキュラムの特徴
第三節 『吾党之女子教育』に見る建学の精神と教育内容
第四節 卒業生の証言による明治女学校の教育
第五節 考察と結論
第二章 仏教主義女学校の建学精神とカリキュラムの分析
はじめに
第一節 明治期仏教系女学校の中の東洋女学校の位置
第二節 授業内容に見るカリキュラムの特徴
第三節 『女子教育管見』に見る建学の精神
第四節 卒業生の証言による東洋女学校の教育
第五節 考察と結論
第三章 道徳・規範主義女学校の建学精神とカリキュラムの分析
はじめに
第一節 明治期儒教・儒学系女学校の中の三輪田女学校の位置
第二節 授業内容に見るカリキュラムの特徴
第三節 『女子の本分』および『女子教育要言』に見る建学の精神
第四節 卒業生の証言による三輪田女学校の教育
第五節 考察と結論
第四章 教養系女学校の建学精神とカリキュラムの分析
はじめに
第一節 明治期教養系女学校の中の跡見学校の位置
第二節 授業内容に見るカリキュラムの特徴
第三節 跡見花蹊の教育観と卒業生の証言による跡見学校の教育
第四節 考察と結論
第五章 職業系女学校の建学精神とカリキュラムの分析
はじめに
第一節 明治期職業系女学校の中の和洋裁縫伝習所と共立女子職業学校の位置
第二節 和洋裁縫伝習所の基本的性格、および創設と授業内容
第三節 和洋裁縫伝習所の授業内容に見るカリキュラムの特徴
第四節 共立女子職業学校の基本的性格と目的
第五節 共立女子職業学校の授業内容に見るカリキュラムの特徴
第六節 卒業生の証言による共立女子職業学校の教育
第七節 考察と結論
第六章 天皇制国家主義的イデオロギーに依拠する公立高等女学校のカリキュラムの分析
はじめに
第一節 官立・公立女子中等教育学校設立の歴史的動向
第二節 良妻賢母の教育
第三節 東京府立第二高等女学校開設の経緯
第四節 卒業生の証言による東京府立第二高等女学校の教育
第五節 考察と結論
結論 明治期の私立女子中等学校の特色および男女差別
1 質的研究としての「潜在的カリキュラム」の視点に見る男女差別の様相
2 ヘゲモニー的視点から見る男女差別の様相
3 「人間的自立」の視点から見る男女差別の様相
4 女子教育の国家主義的再編
5 まとめ
参考文献
あとがき
前書きなど
まえがき
筆者は過去四○年にわたり男女平等教育の理論的・実践的研究を続けてきた。その中で、現在でも男女差別を当然と考える人々の存在や、特に意識上は平等を主張しながらも、無意識における言語や行動の中に、差別意識が種々な形で現れる現象に疑問を持つようになった。
無意識な言動は、男性ばかりではなく女性にも見られ、このような人々の無意識な「発言と行動」は、明治期以来の一般社会だけではなく、学校教育の歴史の中で形成されたものと考えられる。近代日本における中等教育が、男子生徒と女子生徒に対して、いかなる認識と人間関係および学校文化を身につけさせたかが、問われることになる。ここで中等教育が重要なのは、初等教育では対象者が年齢的に未発達であり、また当時高等教育を受けたのは極めて少ない人数であったのに対し、中等教育は人数的にも多く、また教育の意図を汲み取ることが可能な年齢に達していたことによる。
江戸期からの男女間の学力格差解消をめざして始まった明治初期の女子教育は、次第に特性論の方向をとるようになり、女子特性論が確立されることになった。このような時期において、女学校の設立者はいかなる人間観を基に女学校を設立したかは、後々に及ぼす影響が大きかった。これらの学校設立者の人間観は、潜在的カリキュラムの分析を通してのみ明らかとされ、男女平等教育の推進を阻害する要因が明確にされる。「我々の現在は過去に制約されている。しかも我々を制約する過去は、必ずしも表層に現れているとは限らない。それは、言説化された思想の奥に潜むものである」(末木文美士『日本の宗教史』二頁、岩波新書、二○○六年)。この言葉の意味は深く、また重い。
本研究は、常にこの言葉を念頭に置きつつ、制度的、文化的、人物像的分析を主とする従来のアカデミックな研究方法によっては、掬い上げることのできない、男女平等教育の推進を妨げる精神的な要因を、明治期の私立女学校設立者の思想と実践活動に焦点を当てることによって、追究したいと考えた。
本書は、早稲田大学大学院安彦忠彦教授の指導のもとで書き上げた、博士学位請求論文「明治期女子中等教育機関における女子特性教育確立に関する研究——潜在的カリキュラムの分析を中心に」を改題し、加除修正したものである。前書『男女平等教育 今まで、これから』(ドメス出版、二○○二年)において、戦後の教育改革時の男女平等教育を、制度とカリキュラムの面から検討する中で、日本人の心の中に根深く潜むヒドゥン・カリキュラム(潜在的カリキュラム)の正体を見極めたい、と心底から動機づけられていた。本書では、明治期の検証のみに終わったが、明確になった要因を、男女平等教育推進のためにできるかぎり早く世に問いたいと思った。「すべてのことには時がある」。好きな言葉だ。この書に示した問題提起に、読者の方々のご批正を願うものである。
著者プロフィール
櫛田 真澄(クシダ マスミ)
東京学芸大学学芸学部卒業。同大学教育学専攻科修了。早稲田大学教育学部教育学研究科博士課程単位取得。教育学博士。
東京都公立中学校三校の教諭をへて、岡山大学教育学部専任講師、茨城大学教育学部教授、白鴎大学教育学部教授。現在、東京純心女子大学非常勤講師。
著書に『男女共学家庭科を創る』学芸図書、1985年。『高齢化社会と教育』(共著)中央法規出版、1985年。『性というつくりごと』(共著)勁草書房、1992年。『男女平等教育 今まで、これから』ドメス出版、2002年。
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