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脱・格差社会をめざす福祉
現代の貧困と地域の再生
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2009年7月
- 書店発売日
- 2009年8月4日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
日本社会に広がる格差・貧困問題の解決に向けた社会福祉の役割、そして地域で支え合う仕組みを整備し社会のセーフティネットを充実させていく方途を識者・福祉関係者が論議。2008年に開催された第45回社会福祉セミナーを元にした一冊。
目次
はじめに 財団法人鉄道弘済会社会福祉部
序章 現代の貧困と社会福祉の役割(岩田正美)
第1章 格差社会と公的責任――行政、機関、市民、NPOの連携を探る
1 本章の問題整理(平野方紹)
2 貧困の拡大、深化と福祉事務所の課題(池谷秀登)
3 地域包括支援センターの現場から見えてきたもの(鈴木博之)
4 少子高齢化と格差社会(白波瀬佐和子)
第2章 地域生活支援と社会福祉施設の役割――地域で活き活きと暮らすために
1 本章の問題整理(石渡和実)
2 まちづくりに向かう障害者地域生活支援システム(田中正博)
3 あったか地域の大家族――富山型デイサービスの15年(惣万佳代子)
4 住民活動と社会福祉施設(岸川洋治)
第3章 自立支援と当事者参加――地域再生における担い手のあり方を考える
1 本章の問題整理(朝日雅也)
2 闘いは続くといえどゴールの日 手繰り寄せたし原告我ら(山口美智子)
3 家族会の組織とその役割(東川悦子)
4 誰もが住みやすい豊かなまちづくり――地域力・市民力の結集と官民協働による活力のあるまちづくり(菊谷秀吉)
第4章 脱・格差社会への挑戦――安心して期待できる社会への道筋を問う
〈シンポジウムより〉
取材現場で見えた「貧困」「格差」(大久保真紀)
多様化する貧困と多様化が求められる「自立」(湯浅誠)
地域から見た「格差」の諸相(片山善博)
雇用から見た格差・貧困問題(佐口和郎)
コメント・総括(古川孝順)
おわりに――格差・貧困を乗り越える施策の体系(古川孝順)
前書きなど
はじめに
2008年7月24日~25日の2日間、東京・有楽町朝日ホールにて、「第45回社会福祉セミナー」が開催されました。今回のテーマは「脱『格差社会』への挑戦―地域再生と社会福祉の役割」とし、1日目は岩田正美氏による基調講演と3つの課題別選択講座、2日目は古川孝順氏の司会によるシンポジウムおよび養老孟司氏による記念講演が行われ、約500人の参加者が集い、熱い議論が交わされました。本書は、その模様を再構成し、まとめたものです。
当会は、公益事業の運営を本旨とする財団法人として1932年に設立されて以来、各種の福祉施設の運営や、社会福祉の専門誌『社会福祉研究』の発行など、幅広く事業を展開しております。このたび45回目を迎えた「社会福祉セミナー」は、1965年、福祉従事者への教育・研修体制が十分でなかった実情を踏まえて開催した「第1回社会福祉研修講座」が始まりです。1970年から「社会福祉セミナー」に名称を変更し、福祉界で懸案となっている施策や現場実践の課題をテーマに設定、参加者と共に考えるセミナーとして毎年夏季に開催し、例年、地方自治体や福祉施設などの従事者、社会福祉にかかわる市民や企業などの多くの方がたにご参加いただいております。
さて、本書の素材となりましたセミナーは、格差の拡大や貧困問題が新聞・雑誌・テレビなどを通じて伝えられる中、複雑で多様な生活課題を抱えて苦しんでいる人びとに対して、福祉サービスは十分に行き渡っているのか、セーフティネットは機能しているのかという問題意識から企画が進められました。当日は、地域再生と社会福祉の役割に焦点を当て、講師それぞれの立場からの示唆に富む発言を得ながら、参加者を交えた活発な討論を行い、「格差社会」からの脱却に向けて克服すべき課題は何であるか、いま何をしなければならないかを明らかにすることができました。
しかし、セミナーが開催されて3か月も経たないうちに、世界同時不況のニュースが駆けめぐり、セミナー会場から程近い日比谷公園には「年越し派遣村」が開村され、大勢の居場所のない人びとが集まる事態に陥りました。このような雇用危機により、格差や貧困は子どもから高齢者まで広範囲に広がるとともに深刻化の一途をたどり、いまや、人びとの暮らしはますます混迷の度合いを深めていると言えましょう。
人びとが安心・安全を実感できる生活の構築に寄与できる社会福祉のあり方を模索しつつ、社会福祉の関係者が現状や課題を共有し、将来への展望を見いだすことのできる場として、また、良質かつ先駆的な情報発信の場として、今後も更に充実した内容のセミナーとなるよう努めてまいる所存です。
最後に、本書の刊行にあたり、セミナーの書籍企画にご賛同くださった講師の方がた、セミナーにご参加いただいた皆さま、本書を企画された明石書店に対し、深く御礼申し上げます。そして、本書が一人でも多くの方の目にとまり、格差や貧困への関心が高まり、その解決へ向けた手がかりとなることを祈念するものです。
2009年7月 財団法人 鉄道弘済会 社会福祉部
上記内容は本書刊行時のものです。