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若者と貧困
いま、ここからの希望を
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2009年8月
- 書店発売日
- 2009年7月28日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
書評掲載情報
2012-01-08 |
朝日新聞
評者: 中西新太郎(横浜市立大学教授・現代日本社会論) |
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紹介
派遣切り・奨学金返済問題・ハウジングプアの現場からの真摯なレポートや、貧困研究・教育学・若者論など荒削りだが刺激的な論考が議論の交差を生み出す。ホームレスを経験した若者自身によるライフストーリーは圧巻。貧困の現場から希望を見出そうとする書。
目次
序章 「若者と貧困」を語ること(湯浅誠)
第1章 ライフストーリー――絶望と希望(冨樫匡孝)
プロローグ
仲間たちへ
僕自身の物語
彼女の物語
彼の物語
第2章 加速する生活と生存の危機
派遣切り・雇い止めと若者たち――セーフティーネット・クライシス取材の現場から(中澤陽子)
沖縄発奨学金が返せない――奨学金返済問題を解決する沖縄なかまユニオン(比嘉勝子)
住まいの貧困に陥る若者たち――ワーキングプアからハウジングプアへ(稲葉剛)
第3章 若者の貧困と社会――場と議論の交差する地点
不平等な若者の自立――貧困研究から見る若者と家族(大澤真平)
貧困が見えない学校――競争の時代区分で見る学校から排除される子ども・若者たち(上間陽子)
諦念と競争に覆われる若者の労働――若者自身による調査でとらえる雇用と意識(今野晴貴)
「若者論」批判の陥穽――「世代」と「承認」をめぐって(佐々木隆治)
第4章 世代論を編み直すために――社会・承認・自由(仁平典宏)
終章 いま、ここからの希望を――参加とつながりが人生と社会を変える
闘うための、闘わないでいい居場所づくり(武田敦)
エピローグ――僕らは無力ではない(冨樫匡孝)
あとがき――若者への希望(上間陽子)
前書きなど
あとがき――若者への希望
若者とは、不安や戸惑いに翻弄されながらもこれから始まる人生をいかようにも形づくることができる希望に満ちた存在である、これが長きにわたる私たちの若者のイメージだったのではないか。だが、2008年暮れの製造業の派遣切りは、仕事とともに住む場所を奪われて路上に放り出される若者たちの存在をはっきりと社会に示すこととなった。これらはある日突然起きたのではない。若者の失業率の高さや非正規雇用の増加は1990年代にはすでに始まっており、閉塞的な将来展望とともに、十分な収入を得て暮らすことの困難や生活基盤の破壊は、水面下で徐々に進行していた。
他方でこうした若者の反対の極には、自らは貧困に落ちまいと進学や就職のために必死で努力し、そうであるがゆえに、貧困に陥る若者を見下し、あるいは批難を強める若者がいる。同じような不安や閉塞的な将来展望を抱えながらも、二つの極に引き裂かれて、出会いそびれている両方の若者に向けて本書を届けたいと私たちは思った。
■ ■ ■
ここ沖縄では暴走族の若者が大量に検挙されている。暴走行為はこの数年間で激しさを増しており、これに対する怒りを強める若者も多い。だが、暴走行為を行う彼らが中学校卒業者であること、仕事を求めて本土に出かけたものの、派遣切りなどによって沖縄にもどってきたことなどは意外に知られていない。沖縄には地域共同体があり、相互扶助的なネットワークが機能しているという言説が流通しているが、そうしたネットワークから彼らや彼らの家族の多くが排除されていることもあまり知られることのない事実である。
学校や労働市場から排除された彼らが、居場所と仲間関係を求めれば、それは時に暴力をともなう逸脱行為という危うい形態にならざるをえない。路上を走る若者には、新しい貧困と古い貧困の両方が折り重なった排除があるということ、そしてそれは彼らだけによって生み出されている現実なのではなく、自らは貧困に落ちまいとする懸命な努力も、そうした現実をつくり出す片棒を担いでいるということ、そうしたことに思いを馳せるような本になってほしいと私たちは願っている。
■ ■ ■
新しい貧困と古い貧困とを扱いつつ、貧困の現場から希望を見出そうとした本書は、序章にて湯浅が述べているように雑多なものとも受け取れるかもしれない。だが、寄せられた原稿の多くが、自らの立ち位置や今後の身の振り方に対する決意をともなうような内容になっている。おそらくそれは、執筆者自身も若者であるという事実に由来するように思われた。自らのあり方を介しつつ悩みながらも、それぞれの場所から新しい場所を創り出そうとしていることに、私たちは若者に対する希望を見出している。
■ ■ ■
(…後略…)
梅雨明けの沖縄にて 上間陽子
上記内容は本書刊行時のものです。