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若者と貧困 湯浅 誠(編著) - 明石書店
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若者と貧困 (ワカモノトヒンコン) いま、ここからの希望を (イマココカラノキボウヲ)

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発行:明石書店
A5判
276ページ
並製
定価 2,200円+税
ISBN
978-4-7503-3021-1   COPY
ISBN 13
9784750330211   COPY
ISBN 10h
4-7503-3021-3   COPY
ISBN 10
4750330213   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0336  
0:一般 3:全集・双書 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2009年8月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2015年8月22日
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書評掲載情報

2012-01-08 朝日新聞
評者: 中西新太郎(横浜市立大学教授・現代日本社会論)
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紹介

派遣切り・奨学金返済問題・ハウジングプアの現場からの真摯なレポートや、貧困研究・教育学・若者論など荒削りだが刺激的な論考が議論の交差を生み出す。ホームレスを経験した若者自身によるライフストーリーは圧巻。貧困の現場から希望を見出そうとする書。

目次

 序章 「若者と貧困」を語ること(湯浅誠)

第1章 ライフストーリー――絶望と希望(冨樫匡孝)
 プロローグ
  仲間たちへ
  僕自身の物語
  彼女の物語
  彼の物語

第2章 加速する生活と生存の危機
 派遣切り・雇い止めと若者たち――セーフティーネット・クライシス取材の現場から(中澤陽子)
 沖縄発奨学金が返せない――奨学金返済問題を解決する沖縄なかまユニオン(比嘉勝子)
 住まいの貧困に陥る若者たち――ワーキングプアからハウジングプアへ(稲葉剛)

第3章 若者の貧困と社会――場と議論の交差する地点
 不平等な若者の自立――貧困研究から見る若者と家族(大澤真平)
 貧困が見えない学校――競争の時代区分で見る学校から排除される子ども・若者たち(上間陽子)
 諦念と競争に覆われる若者の労働――若者自身による調査でとらえる雇用と意識(今野晴貴)
 「若者論」批判の陥穽――「世代」と「承認」をめぐって(佐々木隆治)

第4章 世代論を編み直すために――社会・承認・自由(仁平典宏)

終章 いま、ここからの希望を――参加とつながりが人生と社会を変える
 闘うための、闘わないでいい居場所づくり(武田敦)
 エピローグ――僕らは無力ではない(冨樫匡孝)

 あとがき――若者への希望(上間陽子)

前書きなど

 あとがき――若者への希望

 若者とは、不安や戸惑いに翻弄されながらもこれから始まる人生をいかようにも形づくることができる希望に満ちた存在である、これが長きにわたる私たちの若者のイメージだったのではないか。だが、2008年暮れの製造業の派遣切りは、仕事とともに住む場所を奪われて路上に放り出される若者たちの存在をはっきりと社会に示すこととなった。これらはある日突然起きたのではない。若者の失業率の高さや非正規雇用の増加は1990年代にはすでに始まっており、閉塞的な将来展望とともに、十分な収入を得て暮らすことの困難や生活基盤の破壊は、水面下で徐々に進行していた。
 他方でこうした若者の反対の極には、自らは貧困に落ちまいと進学や就職のために必死で努力し、そうであるがゆえに、貧困に陥る若者を見下し、あるいは批難を強める若者がいる。同じような不安や閉塞的な将来展望を抱えながらも、二つの極に引き裂かれて、出会いそびれている両方の若者に向けて本書を届けたいと私たちは思った。

 ■ ■ ■

 ここ沖縄では暴走族の若者が大量に検挙されている。暴走行為はこの数年間で激しさを増しており、これに対する怒りを強める若者も多い。だが、暴走行為を行う彼らが中学校卒業者であること、仕事を求めて本土に出かけたものの、派遣切りなどによって沖縄にもどってきたことなどは意外に知られていない。沖縄には地域共同体があり、相互扶助的なネットワークが機能しているという言説が流通しているが、そうしたネットワークから彼らや彼らの家族の多くが排除されていることもあまり知られることのない事実である。
 学校や労働市場から排除された彼らが、居場所と仲間関係を求めれば、それは時に暴力をともなう逸脱行為という危うい形態にならざるをえない。路上を走る若者には、新しい貧困と古い貧困の両方が折り重なった排除があるということ、そしてそれは彼らだけによって生み出されている現実なのではなく、自らは貧困に落ちまいとする懸命な努力も、そうした現実をつくり出す片棒を担いでいるということ、そうしたことに思いを馳せるような本になってほしいと私たちは願っている。

 ■ ■ ■

 新しい貧困と古い貧困とを扱いつつ、貧困の現場から希望を見出そうとした本書は、序章にて湯浅が述べているように雑多なものとも受け取れるかもしれない。だが、寄せられた原稿の多くが、自らの立ち位置や今後の身の振り方に対する決意をともなうような内容になっている。おそらくそれは、執筆者自身も若者であるという事実に由来するように思われた。自らのあり方を介しつつ悩みながらも、それぞれの場所から新しい場所を創り出そうとしていることに、私たちは若者に対する希望を見出している。

 ■ ■ ■

(…後略…)

梅雨明けの沖縄にて   上間陽子

著者プロフィール

湯浅 誠  (ユアサ マコト)  (編著

1969年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長、反貧困ネットワーク事務局長。1990年代より野宿者(ホームレス)支援に携わる。数年前から「ネットカフェ難民」問題を指摘し火付け役となるほか、貧困者を食い物にする「貧困ビジネス」を告発するなど、現代日本の貧困問題を現場から訴え続ける。2008~09年年末年始の「年越し派遣村」では村長を務める。著書に、『どんとこい、貧困!』(理論社、2009年)、『反貧困』(岩波新書、2008年、第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞大賞、第8回大仏次郎論壇賞)、『貧困襲来』(山吹書店、2007年)、『本当に困った人のための生活保護申請マニュアル』(同文舘出版、2005年)など。

冨樫 匡孝  (トガシ マサタカ)  (編著

1978年生まれ。NPO法人自立生活サポートセンター・もやいスタッフ。2006年に自身がホームレス状態を経験し、〈もやい〉へ相談。その後生活を立て直し、スタッフとして活動を始める。現在は生活保護の申請同行や、電話相談、その後のアフターフォローなどを担う。また、もやい事務所こもれび荘にて、若者当事者のための居場所「Drop in こもれび」を主宰するなど、自身の経験を元に活動に携わる。

上間 陽子  (ウエマ ヨウコ)  (編著

1972年生まれ、沖縄県出身。琉球大学教育学部准教授。学校における人間関係の分析や、生徒文化の分析をエスノグラフィーや統計調査の手法を用いて行っていたが、最近の関心は教育実践・学び論。主要論文として、「沖縄の若者をめぐる労働市場の現在と相互扶助ネットワーク」(『現代と教育76 貧困・格差問題と教育』桐書房、2008年)、「若者は今をどのように生きているか」(久冨善之・長谷川裕編『教育社会学』学文社、2008年)、「進路をめぐる親子間葛藤」(乾彰夫編『18歳の今を生きぬく』青木書店、2006年)、「現代女子高校生のアイデンティティ形成」(日本教育学会『教育学研究』第69巻、2002年)など。

仁平 典宏  (ニヘイ ノリヒロ)  (編著

1975年生まれ。法政大学社会学部専任講師。社会保障抑制・削減という文脈における参加型市民社会の両義性、及び野宿問題について、社会学の諸手法を使いつつ研究を行ってきた。主要論文として、「若年ホームレス」(湯浅誠と共著)(本田由紀編『若者の労働と生活世界』大月書店、2007年)、「ボランティア活動とネオリベラリズムの共振問題を再考する」(『社会学評論』56(2)、2005年)、「三丁目の逆光・四丁目の夕闇――性別役割分業家族の布置と貧困層」(橋本健二編『家族と格差の戦後史』、青弓社、近刊)、「〈シティズンシップ/教育〉の欲望を組みかえる(仮)」(広田照幸編『〈教育〉――せめぎあう「教える」「学ぶ」「育てる」』、岩波書店、近刊)など。

上記内容は本書刊行時のものです。