シリーズ・叢書「エリア・スタディーズ76」の本一覧
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 416ページ 並製
定価:2,000円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-3008-2 C0336
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年06月 書店発売日:2009年07月02日
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デンマークの地理・歴史・言語の特質を専門の執筆陣が懇切に記述。さらに政治・外交・軍事・教育・福祉に関し、北欧ならではの特徴を具体的に紹介。映画・文学・買い出しツアー・食生活、留学案内など暮らしと文化にも触れた実践的デンマーク案内。
目次
はじめに
I デンマークの地理
第1章 デンマークの地勢——浅海に散らばった土塊の国
第2章 Danmark er et fladt land——デンマークは平らな国
第3章 コペンハーゲン——変貌する首都
第4章 ぶらりデンマーク——知られざる魅力の発見
第5章 「南ユトランド」——デンマークの民族性のこだわり
第6章 グリーンランド・フェーロー諸島——「自立した」デンマーク自治領
II デンマーク語とは
第7章 デンマーク語とは——壮麗でも、溌溂でも、堅牢でも、優美でもなく
第8章 デンマーク語の歴史——現在のデンマーク語ができるまで
第9章 デンマーク語の方言——地域方言の減少と多民族方言の出現
第10章 デンマーク語の発音——一六個の母音のある言語
第11章 デンマーク語あれこれ(1)——難しきより、悩ましき言語
第12章 デンマーク語あれこれ(2)——コンマ・イディオム・法助動詞
【コラム1】ユニット強勢
III デンマークの政治
第13章 デンマーク政治の特徴——草の根民主主義の伝統
第14章 デンマークの諸政党——政党模様にみるデンマークらしさ
第15章 デンマークとEU——デンマークらしさのディレンマ
【コラム2】労働市場における「デンマーク・モデル」——フレキシキュリティって何?
第16章 デンマークの王室——グリュクスボー家
第17章 六八年の世代——デンマーク社会を変えた人びと
第18章 デンマークの移民問題——二〇〇三〜二〇〇五年の滞在を通じてみえたもの
第19章 ムハンマド風刺画問題——表現・言論の自由と他者存在
IV デンマークの歴史から
第20章 ヴァイキング時代のデンマーク——スカンディナヴィア世界の先進地として
第21章 初期デンマーク王列伝——イェリング王権の王たち
第22章 マルグレーテ一世——その生涯と人物像
第23章 ハンザとデンマーク——中世後期から近世初頭のバルト海にて
第24章 オレンボー朝の二人の国王——クリスチャン二世と四世
第25章 一七世紀オランダの動向——デンマーク・スウェーデン間の勢力均衡を図る
第26章 デンマーク絶対王制の成立と発展——フレゼリク三世とクリスチャン五世の治世
第27章 デンマークの海外進出——植民地事情
第28章 一八世紀を彩る王室物語——フレゼリク四世からフレゼリク六世まで
第29章 「自由記念碑」の建立——コペンハーゲンの繁華街に建つオベリスク
第30章 対ドイツ問題——「宿敵」と「宿命の隣人」
第31章 デンマークのナショナルリベラル——「デンマークはアイダ川まで」
第32章 一九世紀後半の政治・文化のラディカリズム——ギーオウ・ブランデスの切り拓いたもの
V デンマークの文学・文化
第33章 「本当に読みたかったアンデルセン童話」——珠玉の二九話
第34章 近代文学にみるアンデルセン童話のアレゴリー——ロマン主義文学から自然主義・リアリズム文学への移行
第35章 現代文学にみるアンデルセン童話のアレゴリー——社会福祉国家における個の確立
第36章 現代のデンマーク児童文学——その魅力的世界への誘い
第37章 キルケゴール——実存の真理
第38章 キルケゴールを生んだデンマークの精神性——土俗信仰と北欧神話
第39章 N・F・S・グロントヴィ——生きた言葉とナショナル・シンボル
【コラム3】グロントヴィのキリスト教観と北欧神話観
第40章 フォルケホイスコーレ——「国民高等学校」の過去と現在
第41章 ホイスコーレ歌集——人の集うところに歌声あり!
第42章 風力発電——現代デンマークのナショナル・シンボル
VI デンマークの芸術
第43章 デンマークの近・現代音楽——デンマーク王立音楽院
第44章 『妖精の丘』——デンマークの国民的祝祭劇
第45章 デンマーク王立バレエ団——功労者ブアノンヴィレ
第46章 カール・Th・ドライヤーと同時代のデンマーク映画——世界に誇る映画の古典
第47章 デンマーク映画と現代——老舗ノーディスク社の存在
第48章 デンマーク絵画の再評価——沈黙、辺境、近代の見直し
第49章 デンマーク・デザイン——それを生み出した人びと
VII デンマークの暮らしと社会
第50章 デンマーク社会福祉事情(1)——要介護高齢者の住まいを保証する
第51章 デンマーク社会福祉事情(2)——高齢者の全国組織とボランティア
第52章 デンマークに暮らす——二〇年間、デンマーク社会をみつめて
第53章 デンマークで絵を描く——ある画家の独白
第54章 デンマークの食事——Tak for mad!(ごちそうさま!)
第55章 オープンサンドイッチ——smorrebrodってどんなもの?
第56章 おいしいスウィーツ——「デニッシュ」は「ウィーンのパン」!
第57章 デンマークビール——「カールスベア」だけでなく!
第58章 隣国への買い出しツアー——グランセハネルの風景
第59章 デンマークの年中行事——太陽の軌跡と人びとの生活
VIII 彼我のデンマークと日本
第60章 文化の翻訳——森鴎外とアンデルセン
第61章 デンマーク人の日本「発見」——文化交流の始まり
第62章 二〇〇二年度コペンハーゲン大学最優秀教師賞——「ハラルド賞」の行方
第63章 デンマークの学生に日本語を教える——実践力養成の日本語教育
第64章 デンマーク留学事情——高校留学とフォルケホイスコーレ留学
第65章 想像を超える家族模様——さて、家族構成員の名字は?
第66章 彼岸の喫煙風景——此岸との隔たりは如何に?
第67章 様変わりの新聞事情——無料新聞の出現後
第68章 「日本のデンマーク」と「日本デンマーク」——海外文化の受容の一形態
おわりに
前書きなど
はじめに
『スウェーデンを知るための60章』との双子である『デンマークを知るための68章』が誕生しました。
本書出版の最終段階を目前とした二〇〇九年四月四日のNATO(北大西洋条約機構)首脳会議で、デンマーク首相アナス・フォウ・ラスムセンが八月以降のNATO事務総長に選出され、デンマークでは彼のあとを継いで四月五日蔵相ラース・ルケ・ラスムセンが新首相となったニュースが届きました。二〇〇一年以来アナス・フォウは三度の内閣を組閣し、彼は伝統的なデンマークの「平和志向的」外交政策を批判し、軍事においても国際舞台における「目に見える」存在として、アフガニスタン・イラク問題に積極的立場を表明しました。さらにデンマークで生じた「ムハンマド風刺画問題」のいわば“言論の自由の擁護者”たる「外交的主役」として、自らを内外に印象付けた人物です。その結果としてNATO次期事務総長への指名があり、アナス・フォウの事務総長就任案に異論を表明していたトルコ政府が、最終的にそれを承認し、オバマ米大統領のトルコ初訪問と合わせて彼の就任「お披露目」が、イスタンブールでなされようとしているのですが、デンマーク紙『ポリティケン』のインターネット記事(四月六日)は、トルコ国民の前で「ムハンマド肖像画問題」での対応をアナス・フォウが「謝罪」する予定であると、トルコ紙があらかじめ報道していることを批判的に告げております。いずれにせよ、あの穏やかで人懐こい、「民主主義が最もすぐれて機能していた」デンマーク社会の外観は、彼が政権を担っていた時期を通じて、刻々と変容していったことは確かなようです。
結論としては、アナス・フォウ次期事務総長は、六日、イスタンブールで他人の信仰を尊重することは大切とはしたものの、言論の自由が「自由である社会」の前提であるとして「謝罪」はせず、お披露目を終えております。
さて、本書では、大阪外国語大学デンマーク語・スウェーデン語研究室の新谷俊裕先生にデンマーク語に関する章を担当していただき、とくにデンマーク語のカナ転記法に新しい画期的な表記法が示されることになりました。現在、大阪外国語大学のデンマーク語・スウェーデン語研究室は、大阪大学世界言語研究センター、デンマーク語・スウェーデン語研究室に二〇〇八年から改組されましたが、この数年、新谷先生は間瀬英夫先生(大阪外国語大学名誉教授)とともにデンマーク語の固有名詞のカナ表記(カナ転記)法を示されてまいりました。
(…中略…)
さて、本書は、三〇人の執筆者によって書かれております。バルト=スカンディナヴィア研究会の会員諸氏、大阪外国語大学(現大阪大学世界言語研究センター)デンマーク語研究室の方々、デンマークに滞在されている私の知己の方々、そして、職場の同僚の小松弘氏に執筆を依頼し、デンマークのあれこれのことをそれぞれの立場から論じていただき、多岐にわたった特徴ある文章を集めることができました。また、本書の双子の姉妹編である『スウェーデンを知るための60章』をも、ぜひ手にしていただいて、私たち北欧を真摯に見つめているものたちの視点を確認していただければ幸いです。とくに、カナ表記問題では、かなり共通するものがあります。また、さらには、津田塾大学名誉教授・広島市立大学名誉教授である百瀬宏先生のご提唱によって本書出版へのレールがひかれ、本書に先行する形で、百瀬宏・石野裕子編著『フィンランドを知るための44章』が二〇〇八年に出版されており、これらによって皆様方の北欧に関する知識がより豊かになることを願っております。
二〇〇九年五月 村井誠人
著者プロフィール
村井 誠人(ムライ マコト)
1947年生まれ。
津田塾大学・大阪外国語大学・東京大学等非常勤講師を兼務し、2000-01年にコペンハーゲン大学客員教授としてデンマークに滞在。早稲田大学文学学術院教授。北欧史専攻。
主な著書に、百瀬宏・村井誠人監修『読んで旅する世界の歴史と文化 北欧』(新潮社、1996年)百瀬宏・熊野聰・村井誠人編『新版 世界各国史21 北欧史』(山川出版社、1998年)村井誠人・奥島孝康編『ノルウェーの社会』(早稲田大学出版部、2004年)岡澤憲芙・村井誠人編著『北欧世界のことばと文化』(成文堂、2007年)など。
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