格差を広げる新自由主義改革を問い直す批判的教育学と公教育の再生
マイケル・W・アップル:編著, ジェフ・ウィッティ:編著, 長尾 彰夫:編著, 高山 敬太:編集協力
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 228ページ 上製
定価:3,200円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2985-7 C0037
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奥付の初版発行年月:2009年05月 書店発売日:2009年05月26日
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紹介

今日、日本、イギリスやアメリカをはじめとする多くの国で教育改革が猛烈な勢いで推し進められている。本書は、第一線の研究者たちがこうした改革に批判的な声を上げ、公教育の新自由主義的再編に抵抗する人々に向けて試論的・実践的知のベースを提供する。

目次

 序文 (マイケル・W・アップル/ジェフ・ウィッティ/長尾彰夫)
第1章 批判的教育学の政治、理論、現実(マイケル・W・アップル/ウエイン・アウ)
第2章 言語リテラシー教育の政治学(佐藤学)
第3章 教育における市場主義の問題——教育バウチャー・学校選択制の政策言説と現実(乾彰夫)
第4章 公教育の危機と学校選択・バウチャー制度(大田直子)
第5章 日本の学校教育とジェンダー・ポリティックス(木村涼子)
第6章 比較教育学への批判的アプローチ——グローバルな抵抗のネットワークの構築に向けて(高山敬太)
第7章 教育改革のポリティックス分析——新たな「教師論」の構築に向けて(長尾彰夫)
第8章 日本の教師と現代の教員制度改革(久冨善之)
第9章 教師の新たな専門性に向けて(ジェフ・ウィッティ)
 あとがきにかえて(長尾彰夫)
 Abstract(英文要約)

前書きなど

 序文

 イギリスやアメリカをはじめとする多くの国々において、ある種の教育改革が猛烈な勢いで推し進められている。自由経済と強い国家を追求する新自由主義と新保守主義勢力の同盟は、一方で「民主主義」を口にしつつ他方では民主主義の意味そのものを根底から変え、さらなる不平等を作り出している。そして「伝統」を声高に叫びつつ、正統な知と見なされるものへの異議申し立ては徹底して排除する。こうした現在進行中の「改革」がもたらす最大の問題は、公教育の破壊である。批判的教育学に携わる私たちは、良い教育とは何か、誰の知を教えるのか、その知がどう評価されるのか、教育の目的とは何か、といった一連の問いの意味を再編成しようとする今日的流れに抗する理論的・概念的道具の精緻化を続けていかなければならない。
 批判的教育学は、こうした支配的な改革とその背後にあるイデオロギー的傾向に対抗するうえで大きな役割を持っている。それゆえ、過度に抽象的で発展性のない分野にとどまっている余裕などない。今日の危機的状況においては、斬新でより精微化された批判的分析の道具を創造しつつ、社会正義を志向する教育研究の長年の蓄積から生まれた従来の分析の道具も駆使する必要がある。批判的教育学は日々変化する今日の状況を真摯に検証し、新自由主義と新保守主義による政策と実践が、子どもと教師に与える直接的、間接的な影響を明らかにしなければならない。
 しかしながら、これだけでは十分ではない。批判的教育学は、学校のような公的機関に押しつけられた特定の社会ビジョンや社会正義に関する仮説をも根底から問い直さなければならない。さまざまなレベルで現れる具体的な諸問題、そして改革の帰結として生じる政策や実践などの具体的事例を真摯に検証して初めて、この分野の理論的・概念的発展が可能となる。だが、私たちの課題は、理論的な道具や実証研究の道具をより洗練させることだけにあるのではない。究極的には、民主的な市民性の概念とは相容れない類の改革を押し戻すことこそが、私たちの使命なのである。
 幸いにも、今日多くの日本の研究者が新自由主義と新保守主義の教育改革に異議を唱えている。本書『批判的教育学と公教育の再生』は日本内外の研究者の論文を収録しているが、執筆者全員が今日支配的な教育改革に批判的な声を上げることの大切さを共有している。日本のみならずイギリスやアメリカにおいても進行中であるラディカルな公教育の再編成に抵抗する人々に、本書が理論的・実践的な知のベースを提供できればと切に願っている。

著者プロフィール

マイケル・W・アップル(アップル,マイケル・W)

1942年、アメリカ生まれ。
ウィスコンシン大学マディソン校教育学部教授。
主な著書:Educating the“Right”Way: Markets, Standards, God, and Inequality (2nd ed.), Routledge, 2006〔『右派の/正しい教育——市場、水準、神、そして不平等』世織書房、2008年〕。Official Knowledge, Routledge, 2000〔『オフィシャル・ノレッジ批判——保守復権の時代における民主主義教育』東信堂、2007年〕。

上記内容は本書刊行時のものです。

ジェフ・ウィッティ(ウィッティ,ジェフ)

1946年、イングランド生まれ。
ロンドン大学教育学部教授・学部長。
主な著書:Teacher Education in Transition, Open University Press, 2000. Making Sense of Education Policy, Sage, 2002〔『教育改革の社会学——市場、公教育、シティズンシップ』東京大学出版会、2004年〕。

上記内容は本書刊行時のものです。

長尾 彰夫(ナガオ アキオ)

1946年、大阪生まれ。
大阪教育大学学長。
主な著書:『学力保障と人権教育の再構築』明治図書、2005年。『カリキュラムづくりと学力・評価』明治図書、2002年。

上記内容は本書刊行時のものです。

高山 敬太(タカヤマ ケイタ)

1973年生まれ。
ニューイングランド大学教育学部(オーストラリア)講師(Lecturer)。
主要論文:A Nation at Risk Crosses the Pacific: Transnational Borrowing of the U.S. Crisis Discourse in the Debate on Education Reform in Japan. Comparative Education Review, 51 (4).The Cultural Politics of Borrowing: Japan, Britain, and the Narrative of Educational Crisis. British Journal of Sociology of Education, 29 (3) (Michael W. Appleと共著).

上記内容は本書刊行時のものです。


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