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一時保護所の子どもと支援 安部 計彦(編著) - 明石書店
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一時保護所の子どもと支援 (イチジホゴショノコドモトシエン)

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発行:明石書店
A5判
240ページ
上製
定価 3,300円+税
ISBN
978-4-7503-2981-9   COPY
ISBN 13
9784750329819   COPY
ISBN 10h
4-7503-2981-9   COPY
ISBN 10
4750329819   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2009年5月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2015年8月22日
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紹介

児童相談所に附設された一時保護所について、3年にわたる調査によりその現状と課題を明らかにし、今後のあり方についても提言。子ども虐待急増のなかで入所児童が増え続けているにもかかわらず、あまり注目されてこなかった一時保護所の全貌を明らかにする。

目次


 はじめに

第1章 一時保護所の機能と抱える課題
 第1節 いま一時保護所で何が起こっているか
 第2節 一時保護所の法的位置づけと全国の状況
 第3節 設備と職員体制

第2章 一時保護所での対応とケア
 第1節 対応困難場面発生の構造からみた規模と職員配置
 第2節 暴言・暴力問題への対処
 第3節 アセスメントとケア
 第4節 性的虐待を受けた子どもへの配慮
 第5節 身柄付通告の非行児童への対応

第3章 子どもたちの権利は守られているか
 第1節 児童相談所一時保護所における学習の実態
 第2節 入所児童の権利保障と安全の確保
 第3節 一時保護中の子どもたち

第4章 これからの一時保護所のあり方をめぐって
 第1節 あるべき一時保護所像――一時保護所の運営全般ガイドラインの提案
 第2節 一時保護開始時のオリエンテーション・マニュアル
 第3節 個別暴力場面での対応
 第4節 集団での暴力・反抗場面への対応と集団からの分離マニュアル
 第5節 学習の時間のガイドライン
 第6節 一時保護所に関する心理的業務への提言
 第7節 一時保護と委託一時保護

 資料
 編著者・執筆者紹介

前書きなど


   はじめに

 厚生労働省の公表資料によると、全国の児童相談所の一時保護所で保護された子どもは、1日あたり2004年度で1158人、2006年度で1320人にのぼった。あなたがこの本を読まれているこの瞬間にも、全国の児童相談所には、最低でも1300人以上の子どもたちが生活していることに思いをはせていただきたい。
 また児童相談所にあった虐待相談のうち、その3割の子どもたちは一時保護されているが、施設に入所するのは虐待相談の約1割であり、虐待相談の約2割は一時的に保護者から分離されて一時保護されたあと、自宅などに帰っている。さらに一時保護された子どものうち虐待相談は、件数としては全体の約37%であるが、のべ日数では約44%であり、児童虐待の問題は一時保護の中心的な課題となっている。
 児童虐待件数が増加し、虐待により子どもが死亡する事件はいまだに続いている。そのため子どもの安全確保についての社会の関心も高いが、一般には虐待されている子どもが児童相談所に保護されると、「一件落着。めでたし、めでたし」と安心し、急速に関心が薄れていく傾向があるように感じる。
 一方、親から分離された子どもが暮らす児童養護施設や里親についての理解は徐々に広がっている。
 しかし一時保護された子どもたちについてはどうだろうか。今まで住み慣れた家族や友人と別れ、知らない子どもたちとの集団生活を始めるため、不安な気持ちが高まる。一時保護所に入所している子どもは年齢や性別がさまざまであり、また毎日入所や退所があるため常にメンバーが入れ替わり、集団としてのまとまりは作りにくい。また職権によって強制的に一時保護した子どもを親が取り返すのを防ぐためや子ども同士のいじめを防ぐような安全確保のため、一定の自由の制限が必要となる。また職員の側から見ると、さまざまな困難を抱えた子どもが急に入所し、ほとんど情報がないまま対応せざるを得ない状況である。これらは一時保護という機能が持つ構造的な課題である。そのためどのように設備や人員を配置しても課題として残る困難さである。
 また、一時保護所は救急病院のようなものである。一定程度の将来の見通しが立ち、長期的な取り組みを前提として支援を展開し、集団としてのまとまりのある児童福祉施設とは違った困難さがある。それに対して児童養護施設の児童福祉施設最低基準(各種児童福祉施設の運営や職員体制、職員の資格などについて最低限の基準を定めたもの)で対応すること自体に2つめの課題がある。
 つまり、今まで一時保護は「短い間の緊急避難」的な場所であり、常に子どもが入れ替わるため、ほとんど注目されることもなく放置されてきた。しかし最近は児童養護施設の満杯状況の影響で、一時保護所の入所児童の増加や長期化が問題になっている。全国平均でも1カ所の一時保護所には約10人の子どもが24日間生活し、特に大都市周辺の一時保護所では、平均で約25人の子どもたちが35日間、一部屋に4人で生活している。
 このような状況は、児童福祉政策のマイナス面が集中的に一時保護された子どもたちに負わされている結果と考えられる。だが、これは施設整備や職員配置などの整備によって改善が可能な機能的課題である。
 以上の全国の一時保護所が持つ課題に加えて、3つめの課題として、個々の一時保護所が抱える問題がある。たとえば居室の数や教員と心理士などの配置、職員の勤務体制、非常勤職員の活用の仕方、個室の数など、全国それぞれの一時保護所ごとに違う課題である。
 本書ではこれら3つの課題を含め、総合的に児童相談所がおこなう一時保護について考えていく。
 戦後の戦災孤児や浮浪児対策から始まった一時保護の制度は、根本的な変革もなく60年以上経過している。子ども家庭福祉が他の多くの制度と同様、制度疲労を起こし、新たなシステムや改革が求められている。何度かの児童福祉法の改正で、社会的養護の体制整備に注目が集まっているが、今後は、一時保護についても十分な配慮が必要である。

(…後略…)

著者プロフィール

安部 計彦  (アベ カズヒコ)  (編著

西南学院大学人間科学部社会福祉学科准教授
甲南大学文学部社会学科卒業後、北九州市児童相談所に入職。児童相談所心理判定員、判定係長、北九州市立障害福祉センター障害者福祉係長などを経て、2005年より現職。日本子ども虐待防止学会理事、全国児童相談研究会評議委員、福岡市児童福祉審議会委員、福岡県志免町子どもの権利救済委員、日本学校ソーシャルワーク学会理事。主な著書に、『ストップ・ザ・児童虐待』(編著、ぎょうせい、2001年)、『子ども虐待法律問題 Q&A』(第一法規、2005年)、『子どもを守る地域ネットワーク実践ハンドブック』(共著、中央法規、2008年)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。