イギリスの反DV運動と社会政策ドメスティック・バイオレンス
ジル・ヘイグ:著, エレン・マロス:著, 堤 かなめ:監訳
シリーズ・叢書「明石ライブラリー127」の本一覧
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 380ページ 上製
定価:4,500円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2954-3 C0336
在庫あり
奥付の初版発行年月:2009年03月 書店発売日:2009年04月02日
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紹介

英国のドメスティック・バイオレンス被害女性支援運動を先導してきた著者たちが、英国におけるDV対策の経緯と現状をまとめている。女性への援助をはじめ、警察や司法などの関係機関の対応や加害男性への対処までを扱う、DV対策を知るための一冊。

目次

 謝辞

 二〇〇五年版への序文

第一章 ドメスティック・バイオレンスとは何か
第二章 フェミニズム運動と避難所
第三章 DVはなぜ起こるのか? 見方と解釈
第四章 DVの取り締まり? 起訴、防犯、犯罪の減少
第五章 法的救済と裁判制度
第六章 安心して暮らせる場所をみつける? 住居の選択肢
第七章 保健・医療・福祉専門職? 社会医療サービス
第八章 政府のDV施策と関係機関の連携
第九章 加害者プログラムと社会啓発

 補足と連絡先一覧
 解説
 監訳者あとがき
 参考文献
 索引

前書きなど

二〇〇五年版への序文

 本書は、Domestic Violence: Action for Change第三版である〔注:日本語訳書としては本書が初版である〕。初版本は一九九三年に、DVに関する幅広い領域を網羅した概説書として誕生した。それから十年以上を経た今でも、数少ない概説書の一つとなっている。当初は“読みやすいこと”を目指したが、次第に“やや読みやすいこと”に変更せざるを得なかった。とはいえ本書では、学術書というスタイルをとることを意図的に避けた。学術的な書き方をとらず、本文中には参照文献をほとんどつけずに読みやすさを優先した。参照文献や読者に有用な文献については、巻末の文献一覧に記載するようにした。
 本書は、一九七〇年代の女性運動に始まりウィメンズ・エイド運動に帰結し、それ以降、DVを経験した女性のための事業を変革した活動家の視点から活動家の手によって執筆された。私たちの考えでは、本書は活動家やウィメンズ・エイドの職員にわかりやすく伝えるのに有用である。実際に本書は、初版が出されてから一一年間にわたって英国各地の避難所事業、児童支援、DV事業の職員に読まれてきた。
 本書はまた支援に携わる人々や政策決定者だけでなく、DVについて簡潔に概説したものを読みたいと考える一般市民にも読まれてきた。また、ソーシャルワーク、社会政策、社会学、女性学の学生や研究者にとっても有用なテキストである。
 この新版がこのような読者すべてにとって、今なお魅力的なものであることを願っている。私たちは、活動家でありつづけつつ、DVをはじめ「女性に対する暴力」に対する世界的運動の高まりの中にいつづけることにも努力してきた。このような目的から、筆者である私たち二名が立ち上げたブリストルDV調査班は、ジェンダー暴力という問題への関心の拡大を反映して「女性に対する暴力」調査班へと拡張した。
 行動に重きを置く点は変わっていないが、その背景は変わってきた。一九九三年以来DVの捉えられ方や、DVへの法的政策的慣習的対応も変化してきた。DVの根絶は周辺的課題から中心的課題となった。しかし、いまだにDVへの対応は偏在的であり、財源は不安定で不十分である。それでもやはり、DVへの取り組みは、地方自治体でも中央政府でも初版を執筆していた頃には考えられないほど改善された。そしてウィメンズ・エイドは、全国的なDVに関するボランティア団体として、政府や施策決定などの場で重要な位置を占めるようになった。このようにDV対策は新しい段階に入ったわけだが、この新版では、DV対策がどのように発展してきたかを振り返ったのち最新情報をわかりやすく提供した。その際、活動家としての視点を失わないように努めた。
 また本書は、素材をできるかぎり生かすようにした点で、独特で有用な役割を果たせるのではないか。私たちは、過去三〇年間にわたるDVとの闘いの歴史の詳細を再現することで現在の発展を歴史的に位置づけ、これまでの主要な段階について記録した。このようなことは、新しい概説書ではほとんどされていない。私たちの意図は、読者の皆さんに、何を起源として現在の状況が生まれたのかを思い出していただき、DV反対運動と現在のDV事業や政策との関連を強調することにある。このような関連は、政策決定機関がDVへの取り組みの起源を知ることなくDV対策に着手することもある今日では、忘れ去られようとしている。
 新版には、主流化への動きに関する新しい情報を加えた。「家族法」や「ハラスメントからの保護法」のような主要な法律の内容も盛り込んだ。「DV、犯罪および被害者法」の現状など、DV対策を統合しようとする断片的な政府の取り組みについて概観した。さらに、積極的取り締り、積極的逮捕と起訴、DV裁判、証拠収集の改善などの刑事司法システムにおける進展について言及した。
 また、近年の「住居法」、保健福祉事業における進展、そして子どもの保護という視点からDVに関心が向けられるようになってきたことについて述べた。一九九八年の第二版の出版以降進展がみられた加害者プログラムや学校での教育的取り組み、新生労働党が施策として打ち出した新たな地域犯罪減少プロジェクトについても概説する。
 DVに関する新しい法律が国会を通過し、避難所オンライン検索など新しい各種の取り組みが始まろうとしているこの時期に改訂版を出版できることは大変貴重である。本書が、このような被害女性の支援とエンパワーメント、加害者責任の追及という方向でDVに効果的に対処しようとする複雑な努力に対して情報を提供し、またそのような努力を後押しするものであることを願っている。
 一九九三年に、私たちは「女性に対する暴力」という世界に広がる痛ましい伝統と、そのような負の伝統に挑戦し変革するという大きな課題について、本書初版を執筆した。その後の年月で様々な変化が起こったが、この新版がこのような世界的挑戦に貢献しつづけることを切望する。

著者プロフィール

ジル・ヘイグ(ヘイグ,ジル)

ブリストル大学政策学部教授。同学部内「女性に対する暴力研究班」共同責任者。同研究班は、女性に対する暴力に関する国際比較調査や政策評価を行うと同時に、政策決定者、活動家、実践家に対するコンサルティングや研修を提供している。近年の業績としては、英国初の障害を持つ女性とDVに関する研究、イラク系クルド人における「名誉殺人」、ウガンダにおける持参金とDV、英国においてDVサバイバーの声が政策に反映されているかについて、カナダにおける「女性に対する暴力」対策改革などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。

エレン・マロス(マロス,エレン)

ブリストル大学政策学部上級講師を2003年に退職し現在は同学部名誉研究員。同学部「女性に対する暴力研究班」設立者の一人として、ジル・ヘイグと共に数多くの調査研究を実施してきた。ウィメンズ・エイド運動の萌芽期からその中心的人物であり、ブリストル市初の避難所を設立。DVを経験した女性と子どもへの効果的支援の確立に尽力してきた。長年にわたってDV問題の活動家、研究者、著述家、教員として大学および地域社会に貢献してきた功績により、2006年にブリストル大学より名誉博士号を授与される。

上記内容は本書刊行時のものです。

堤 かなめ(ツツミ カナメ)

スウェーデンカロリンスカ大学客員研究員、九州国際大学教授、英国サリー・ローハンプトン大学客員教授、九州女子大学教授などを経て、現在アジア女性センター理事長、福岡ジェンダー研究所監事。共編著に『はざまに生きる子どもたち——日比国際児問題の解決に向けて』、監訳書に『ジェンダーと暴力——イギリスにおける社会学的研究』、監修書に『虐待とドメスティック・バイオレンスのなかにいる子どもたちへ』など。

上記内容は本書刊行時のものです。
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