いっしょに考える子ども虐待
小林 登:監修, 川崎 二三彦:編著, 増沢 高:編著
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 288ページ 並製
定価:2,000円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2899-7 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年12月 書店発売日:2008年12月16日
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紹介

近年、国家的な社会問題となっている子ども虐待。その本質から、子ども虐待の歴史と実態、虐待対応の現状と課題、さらに子ども虐待に近接する諸問題まで、子ども虐待問題を総合的にとらえる道しるべとなる本。すべての人が真摯にこの問題に取り組むために。

目次

 はじめに

第1部 子ども虐待の理解と援助

第1章 子ども虐待とは
 はじめに
 4つの子ども虐待
 児童虐待防止法による子ども虐待の定義
 イギリスにおける児童虐待の定義
 問題として注目されている虐待行為
  コラム 1933年(昭和8年)に制定・施行された児童虐待防止法
第2章 子ども虐待対応の歴史
 1 戦後から1950年代——戦後、戦災孤児や身売りが増加した時代
 2 1960年代から70年代初頭——高度経済成長下で子ども虐待が社会問題化した時代
 3 70年後半から80年代——「子ども虐待」問題が潜在化した時期
 4 1990年代——子ども虐待が社会問題化、国家的問題化した時代
 5 2000年代から現在——現場の混乱期
第3章 虐待がもたらす影響
 はじめに
 心の発達の阻害
 身体的発達の阻害
 過酷な環境を生き抜く過程で身につけてしまったもの
 PTSD
第4章 子ども虐待の発生を防ぐ取り組み
 はじめに
 「発生予防」のための支援
 おわりに
第5章 早期発見と対応システム
 通告をめぐって
 国民の義務なのか
 密室の出来事
 通告は行われているか
 通告を受ける機関は?
 通告者の保護
 まずは安全確認
 一時保護のしくみ
 立入調査
 臨検・捜索
 親子の分離
 親子の再統合
 子どもを守る地域ネットワーク
第6章 虐待を受けた子どもへの治療的援助
 治療的援助における基本
 治療的援助の実際
 治療的援助における重要な視点と課題
第7章 性的虐待への対応と課題
 性的虐待をとらえる視点
 性的虐待の実態
 事実確認の難しさ
 性的虐待がもたらすもの
 治療的援助

第2部 子ども虐待防止とそれに関連する諸問題

第8章 子どもの虐待死を考える
 子どもの死が問うもの
 死亡事例検証の歴史
 被害を受けた子ども
 虐待の態様
 心中事例
 出産後致死
 暴行
 ネグレクト
 援助機関の役割
  コラム 棄児グラフ
第9章 援助者のとまどいと悩み
 はじめに
 事例1——子ども虐待に介入するとき
 事例2——親子分離へのとまどい
第10章 多分野協働における課題
 多分野による協働の必要性
 連携・協働の難しさ
 協働は苦手?
 子ども虐待対応は多分野協働への挑戦である
  コラム ビクトリア・クリンビエ事件
第11章 児童養護施設と里親
 虐待を受けた子どもの援助
 児童養護施設
 里親制度
  コラム イギリスの里親制度
第12章 インターネットと子どもたち
 インターネット、携帯電話の利用率
 インターネットや携帯電話の特徴と危惧されること
 インターネットの負の側面
 インターネット犯罪や事件を防ぐ取り組み
第13章 子どもを取り巻く環境
 子どもの居場所の喪失(「間」の喪失)
 子どもの存在を無視した構造物
 「食」に関する問題
終章 子どもにやさしい社会を築こう
 私にとっての「子ども虐待」
 「子ども虐待」は先進社会の陰の部分としてとらえるべきではないか
 人間関係を作るもの——やさしさを科学する
 やさしい社会をどう作るか——社会のすべてをチャイルドケアリング・デザインで

前書きなど

はじめに

 児童虐待防止法が施行されてから8年の歳月が流れました。この間、密室に閉ざされ、虐待によって生命の危機さえあった子どもが多数保護され、虐待の網の目に絡み取られ苦しんでいた親たちに援助の手が届くことで、多くの家族が救われました。一方、援助する側も、困難な虐待問題に対してさまざまな実践を積むことで貴重な知見を蓄え、援助者としての成長をはかってきました。では日本の社会は、果たして子ども虐待を克服したと言い得るでしょうか。残念ながら、私たちは今、それにノーと言わざるをえません。児童相談所が対応した虐待の件数は、この8年間も一貫して増え続け、2007年度には、ついにその数が4万件を超えてしまいました。子ども虐待は深刻な社会的、国家的問題となっているのです。
 しかも子どもの貧困や格差は拡大し、インターネットによる犯罪に子どもが巻き込まれ、子どもの性的搾取に関する事件も繰り返し報道されています。私たちの社会はけっして子どもにやさしい、子どもの権利が守られる社会だとは言い切れません。
 本書は、こうした社会状況まで視野を広げ、子ども虐待を改めて考え直そうと企画したものです。子ども虐待への対応には、福祉、医療、保健、司法、教育など極めて多くの分野が関わっています。またその対応も、子ども虐待の発生を未然に防止する取り組みから、早期発見と介入のための取り組み、虐待を受けた子どものその後の治療的援助、家族の再生への援助など、多角的なアプローチを必要とします。一口に子ども虐待といっても、非常にすそ野の広い、層の厚い問題ということができるでしょう。したがって、子ども虐待を考えることは、実は、すべての子どもたちの未来を考えることでもあるのです。とはいえ、虐待を受け、児童相談所等の専門機関が関わる子どもの数は、全体からすればごく一部です。そのため子ども虐待問題の深刻さに比して、一般社会ではその認識が必ずしも高いとはいえません。
 そこで、本書は二つの意図をもって作成されました。一つは、子ども虐待とは何かといった基本的な内容から、日本における子ども虐待の歴史や実態、子ども虐待対応の現状と課題、さらに子ども虐待に近接する近年の諸問題に至るまで、この問題を総合的に取り上げようとしたことです。福祉領域における子ども虐待への対応、あるいは医療分野でのそれなど、特定分野の専門書といった色彩を捨て、グローバルプラスアルファの書をめざしました。二つ目は、誰でも理解可能なように平易な文章を心がけ、同時により専門的な知識にも触れられるよう、欄外にコラムや図表、用語解説等をふんだんに盛り込みました。これによって、一般の方々も子ども虐待の全体像を理解できるだけでなく、この問題に専門的に関わっている方々も、改めてグローバルな視点を得て、これまでの対応を振り返り、今後を考える契機となるはずです。
 (…後略…)

著者プロフィール

小林 登(コバヤシ ノボル)

子どもの虹情報研修センターセンター長
東京大学名誉教授、国立小児病院名誉院長、甲南女子大学国際子ども学研究センター名誉所長、ベネッセ次世代育成研究所所長&チャイルド・リサーチ・ネット《CRN》所長(インターネットによる子ども学研究所http://www.crn.or.jp/)。
東京大学医学部医学科卒業。医学博士。東京大学医学部(小児科学)教授を経て、国立小児病院小児医療研究センター初代センター長。87-96年国立小児病院院長。その間臨時教育審議会、中央薬事審議会、人口問題審議会等委員、また日本小児科学会理事、国際小児科学会会長など多くの政府委員、学会役員を務めた。
著書に『子ども学のまなざし』(明石書店)、『こどもは未来である(正・続)』(メディサイエンス社)など多数。

上記内容は本書刊行時のものです。

川崎 二三彦(カワサキ フミヒコ)

子どもの虹情報研修センター研究部長
京都大学文学部哲学科卒。京都府宇治児童相談所相談判定課長を経て、平成19年度より現職。著書に、『子どものためのソーシャルワーク(全4巻)〔1 虐待、2 非行、3 家族危機、4 障害〕』(明石書店)、『児童虐待』(岩波新書)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。

増沢 高(マスザワ タカシ)

子どもの虹情報研修センター研修課長兼研究課長
千葉大学大学院教育学研究科教育心理修士課程修了。社会福祉法人横浜いずみ学園副園長を経て、平成14年度より研修課長として勤務。平成19年度より現職。共著に『日本の子ども虐待』(福村出版)など。他に論文多数。

上記内容は本書刊行時のものです。
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