ファミリーグループ・カンファレンスの可能性子ども虐待時代の新たな家族支援
林 浩康:著
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 216ページ 上製
定価:3,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2893-5 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年12月 書店発売日:2008年12月11日
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紹介

子ども虐待問題が深刻化するなか、家族支援がますます重要な課題になりつつある。家族をエンパワメントし、意思決定過程における当事者参画を高度に具体化した「ファミリーグループ・カンファレンス」は、日本でのソーシャルワーク実践に新しい可能性を提供する。

目次


 はじめに

序 問題意識と本書の概要
 1.問題意識
 2.援助モデルの設定とFGCの意義
 3.概要と枠組み

第1章 「参画」実践の意義とソーシャルワーク理論における位置付け
 第1節 当事者参画の意義
 第2節 家族への社会的アプローチ
 (1)現代家族の状況
 (2)「パターナリズム・モデル」と「当事者(家族)参画モデル」の統合
 第3節 参画実践の位置付け
 (1)現代家族における参画実践の位置付け
 (2)ソーシャルワークにおける「参画」実践の位置付け
  1. ソーシャルワーク実践と「参画」
  2. 現代以降のソーシャルワーク実践と「参画」
  3. エンパワメントと「参画」
 第4節 「参画」実践の利点・課題・阻害要因

第2章 ファミリーグループ・カンファレンスの基本的概念と導入背景
 第1節 ニュージーランドにおけるファミリーグループ・カンファレンス
 (1)ファミリーグループ・カンファレンスの意義
 (2)内容
  1.FGCに至る過程
  2.FGC過程
  3.コーディネーターの役割
 第2節 FGC導入の背景
 (1)文化的背景
  1.制度的人種差別とその是正
  2.文化的ストレングスの活用
 (2)実践的背景
 (3)政策・思想的背景
  1.新自由主義による影響
  2.コミュニタリアニズムによる影響
 第3節 参画実践の基本的理念

第3章 諸外国におけるFGCの評価とその意義
 第1節 文化的側面──文化的固有性と文化を超えた普遍性
 第2節 実践的側面
 (1)家族再生への疑問
 (2)家族だけでの話し合いの必要性
 (3)コーディネーターに関して
 (4)活用ケースに関する議論
 (5)子どもの参画に関して
  1.根底にある子ども観
  2.FGCと子ども参画
 第3節 政策的側面とポリティカル・コンテクスト
 第4節 親族里親の評価
 (1)FGCと親族里親の関連性
 (2)欧米・オセアニア先進諸国における親族里親の評価
  1.親族里親とFGC
  2.親族里親の評価
 第5節 FGCの分析枠組みと評価
 (1)意義に基づいた評価
 (2)家族を「ひらく」という視点からの文化的・実践的・政策的側面に関する再検討

第4章 意思決定過程への多様な参画形態とその評価
 第1節 参画のあり方の多様性とFGCの意義
 (1)関与度と家族を「ひらく」との関係
 (2)親参画の意義とFGC
 第2節 加害親への統制的アプローチと共感的アプローチの統合とFGC
 (1)支援の視点と家族を「ひらく」必要性
 (2)我が国における取り組みの可能性

第5章 我が国における当事者参画実践の可能性と家族を「ひらく」ことの課題
 第1節 調査結果の概要
 (1)方法
 (2)有効票本数・基本的属性
 (3)結果
  1.導入の意義と課題
  2.課題への取り組み
 第2節 考察
 (1)FGC参画意欲の形成と適用性
  1.家族を「ひらく」困難性と子どものパーマネンシー保障と専門職の動機付け
  2.参画に向けた関与方法
  3.意義
 (2)理念の共有と柔軟な活用の必要性
 第3節 児童相談所職員の意識と当事者参画型実践の意義の再検討
 (1)当事者参画実践の家族を「ひらく」意義
 (2)考察
 (3)A県における当事者参画実践とFGCとの相違・その背景・FGCの意義
 第4節 我が国における家族を「ひらく」ことの困難と親族里親の課題
 (1)消極的な親族里親の運用規定
 (2)親族ケアにおける階層・ジェンダーの問題
 (3)事例検討──障がいをもつ祖母が年金で孫2人を養育している事例

第6章 意思決定過程における当事者参画に関する実践的・文化的側面と家族を「ひらく」ことの可能性
 第1節 実践的側面における基本認識
 第2節 文化的側面
 (1)文化的差異と普遍性
 (2)文化と家族を「ひらく」ことの可能性
 (3)ケアの分かち合いを基盤とした文化形成の可能性

 索引

前書きなど


序 問題意識と本書の概要(一部抜粋)

(…前略…)

3.概要と枠組み

(…略…)

 本論は参画実践についてさまざまな側面からの評価を中心に論じている。第1章では意思決定過程への当事者参画の意義とこれまでのソーシャルワーク理論における参画実践の位置付けについて論じた。第2章では参画実践を高度に具体化したFGCを中心に、その基本的概念、導入背景、実践過程について論じた。第3章ではFGCの評価について文化的側面、政策的側面、実践的側面から論じ、FGC導入によって急増した親族里親の評価と、FGCとの関連性について論じた。それを踏まえ家族を「ひらく」という概念を提示し、その観点からFGCを再評価した。第4章では意思決定過程への多様な参画形態とその評価を通してFGCの意義を再検討し、第5章では我が国における実証研究を通して、我が国におけるFGCの展開の意義について家族を「ひらく」という観点から論じた。第6章では実践的・文化的側面から我が国におけるFGC導入の可能性について論じている。
 FGCや親族里親は、当事者不在による専門主義・官僚主義強化の反動としての家族主義への回帰と捉えられる一面もある。家族や親族を資源として活用するという考え方に対しては、かつて主張された「日本型福祉社会」を想起させるが、本論で論じるFGCや、親族里親は経済的支援を含む社会サービスを保障するという点においてそれとは異なる。こうした動向は「家族の再発見」と表現でき、家族の潜在的力を再評価し、それを活かせるよう社会が積極的に支援するという考え方に基づいている。子どものパーマネンシーやアイデンティティ保障、親のつながりの再生といったことを核概念として、FGCを通して、それらの保障のあり方について考えてみたい。

(…後略…)

著者プロフィール

林 浩康(ハヤシ ヒロヤス)

東洋大学ライフデザイン学部生活支援学科教授
大阪市立大学大学院博士後期課程生活福祉学専攻単位取得退学。岡山県立大学保健福祉学部助手、北星学園大学社会福祉学部専任講師・助教授を経て現職。
『児童養護施策の動向と自立支援・家族支援』(中央法規出版)、『新児童福祉論』(法律文化社・共著)、『よくわかる養護原理』(ミネルヴァ書房・共著)他。

上記内容は本書刊行時のものです。
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