発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 676ページ 上製
定価:9,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2858-4 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年11月 書店発売日:2008年11月22日
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高齢者虐待は大きな社会問題であるといわれるが、その実態は明らかでない。本書は全米評議会(NRC)がこの問題を理解し対応するために組んだ研究プロジェクトの報告書である。理論モデル、リスク要因、介入評価等、包括的に論じた最高水準の研究指南書である。
目次
日本の読書のみなさまへ
謝辞
解題
用語解説
序
要旨
第1部 パネル報告書:高齢者虐待およびネグレクトの発生のリスクと普及率の検討
第1章 導入
第2章 概念、定義および測定の指標
第3章 高齢者虐待の理論的モデル
第4章 高齢者虐待の発生
第5章 高齢者虐待のリスク要因
第6章 臨床現場におけるスクリーニングとケース確認
第7章 介入の評価
第8章 研究の倫理
第9章 今後に向けて
参考文献
補遺
A 高齢者虐待の測定基準と研究
B アメリカ合衆国各州法規における「高齢者虐待およびネグレクト」の定義の分析(ローラ・フラッタム・ハン)
C 高齢者虐待およびネグレクト:歴史と概念(ロザリー・ウルフ)
D 略歴
第2部 研究資料
第10章 高齢者虐待:疫学的評価方法について(ロナルド・アシアーノ)
第11章 高齢者虐待およびネグレクトに関する研究における倫理的および政策的課題(レベッカ・ドレッサー)
第12章 高齢者虐待とネグレクトについての臨床的および医学的法医学(カーメル・ビトンド・ダイア/マリ−=テレース・コノリー/パトリシア・マックフィーリー�)
第13章 在宅における高齢者の経済的虐待(トーマス・L・ヘイフメイスター)
第14章 居住型長期介護施設での高齢者虐待:わかっていることと必要とされる情報(キャサリン・ハウズ)
第15章 高齢者虐待への介入:子ども虐待と夫婦間暴力に対する試みからの教訓(デービッド・A・ウルフ)
監訳者あとがき
略語一覧
索引�
コラム 研究用語集
コラム 高齢者虐待研究で作業上の定義が必要な変数
コラム 疫学的研究設計の概要
前書きなど
日本の読者のみなさまへ
この度、Elder Mistreatment: Abuse, Neglect, and Exploitation in an Aging Americaが、日本語訳として出版されることを大変うれしく思います。さらに、こうして日本の読者の方々やこれから日本語版を読まれるであろうみなさまに、ご挨拶する機会を得たことに感謝いたします。
アメリカにおいて高齢者虐待は、人の目につかない所で発生しがちなため、その発見や予防が難しいと言われます。問題の深刻さは、まだ十分に把握されていないし、虐待の予防や軽減を図るさまざまな介入の効果に関してもわずかな情報しかありません。私は、高齢者虐待に関する学際的研究や介入プログラムについての日本の文献に精通しているわけではありませんが、虐待問題の特性や範囲についての優れた知識の必要性は、日本においても、アメリカと同様に切実であろうと思います。
高齢者虐待に関するよりよいデータや研究の必要性を痛感した国立高齢化問題研究所(National Institute on Aging: NIA)は、全米研究評議会(National Research Counci: lNRC)に対して、虐待問題の現在の知識を評価して、この問題を理解し取り組むために必要な知識をどのように開発するのが最善であるのか、アドバイスを求めました。私は、NIAの求めに応じて行われたこの研究のパネルの議長を務めました。われわれのパネルの結論と勧告(パネルのために執筆された重要な論文も含む)が、日本の研究者の役に立つことを期待しております。
本書は、高齢者虐待の領域において確固とした研究の体系を確立するために必要とされる主要な概念、方法論、そして後方支援に関する課題を詳しく論じております。さらに、高齢者に関わる際、考慮しなくてはならない倫理的な問題へも光をあてています。さらに、医師、救急サービス専門職、および虐待の状況を最初に認識するさまざまな職業の人たちの役割を検討しています。したがって、Elder Mistreatment: Abuse, Neglect, and Exploitation in an Aging Americaは、実践者のみならず、研究者、研究活動のスポンサー、そして、高齢者家族のメンバー、ケア提供者や人権擁護の活動家などを含む高齢者に関心のあるすべての人たちに役に立つと思います。
本書のいくつかの部分は、日本の環境には完全には適合しないかもしれません。例えば、高齢の親や障害のある家族のメンバーに対する家族の責任に関して、日本とアメリカでは、文化的な大きな違いがあることを私は知っています。日本においては、家族の中での責任感というものが比較的広い範囲で徹底しているため、見知らぬ他人または親族関係にないケア提供者の手による虐待から高齢化した親を守ることができるかもしれません。しかし、それは一方で、高齢者を家族のメンバーによる虐待の危険にさらすことになるかもしれないということが言えます。これらの重要な文化的違いを考慮しても、原著で探究した科学的な課題は、高齢者虐待について関心をもつ日本の研究者および高齢者虐待の予防と縮小に責任をもつサービス機関のために有用な「洞察力」を提供するであろうことを、私は信じてやみません。
著者プロフィール
リチャード・J・ボニー(ボニー,リチャード・J)
「高齢者虐待およびネグレクトの発生のリスクと普及率の検討パネル」議長。
バージニア大学ロースクール、ジョン・S・バトル特任教授および同大学「法律・精神医学・公共政策」研究所所長。研究専門分野は刑法、刑事訴訟法、精神医学法、生命倫理学、公衆衛生法で、多くの著書を出版。近年精神医学と人権に関する問題に意欲的に取り組んでいる。1991年、医学研究所(IOM)のメンバーに選ばれ、米国アカデミーの活動に積極的に参加。神経科学および健康行動に関するIOM委員会、同じくIOMの喫煙被害減少のための科学的調査委員会、違法薬物に対する政策決定のためのデータおよび研究に関する全米研究評議会(NRC)および臨床研究被験者保護システムのためのIOM調査委員会に参加。損傷・傷害の予防とそのコントロールに関するIOM委員会および薬物濫用動機に関する研究のためのIOM委員会の議長、また児童青少年ニコチン依存症予防のためのIOM委員会副議長を歴任。バージニア法律基金の評議員および薬物依存問題研究所の特別評議員であり、同研究所の理事会メンバーでもある。1998年に司法精神医学および法体系の精神医学分野における貢献が認められ、全米精神医学会アイザック・レイ賞を受賞。1966年ジョンズ・ホプキンズ大学理学士号、1969年バージニア大学JD学位を取得。
ロバート・B・ウォレス(ウォレス,ロバート・B)
アイオワ大学公衆衛生医学部疫学および内科教授、同大学高齢者センター暫定所長。現在全米疾病予防特別専門委員会(USPSTF)のメンバーであり、同委員会上級アドバイザー。また国立衛生研究所(NIH)高齢化問題諮問委員会のメンバーでもある。予防医学教授会実行委員会メンバーであり、全米公衆衛生学会疫学部門議長を務める。多数の著書を執筆または共同執筆し、4冊の書物の編集者。Public Health and Preventive Medicineの最新版を編集。主要な研究分野は高齢者障害の原因と予防で、骨粗鬆症骨折および冠状動脈疾患への予防的介入などの高齢者観察コホート研究および臨床試験の指導では豊富な実績を有する。乳がん、結腸がんおよび冠状動脈疾患予防のための国家的介入研究であるウィミンズ・ヘルス・イニシアティブ(WHI)では中心的研究者として現場を指導。同時に高齢者慢性疾患予防に関するいくつかの国際的研究の共同実施者となっている。ノースウェスタン大学にて1964年に学士号、1967年にMD学位を取得。1972年ニューヨーク州立大学バッファロー校にて疫学で博士号を取得。
上記内容は本書刊行時のものです。多々良 紀夫(タタラ トシオ)
淑徳大学総合福祉学部・大学院総合福祉研究科教授(1998年〜)
関西学院大学文学部(1960年)、米国ワシントン大学修士(MSW)(1969年)
ブリン・マーカレッジ大学博士(Ph.D.)(1975年)
ブリン・マーカレッジ大学院講師(1972〜1976)を経て、アメリカ公的福祉協会(APWA)の上級研究者(1976〜1977)および研究調査部長(1977〜1998)を務める。その間、アメリカ連邦議会と連邦高齢者行政局(AoA)が創立した全米高齢者虐待問題研究所(NCEA)の初代所長(1988〜1998)、国際社会福祉協議会・米国委員会(ICSW/U.S. National Committee)の会長(1992〜1997)等を歴任、連邦政府、州政府や研究機関のアドバイザーを務める。1998年4月より現職につく。2004年から2007年まで淑徳大学社会福祉研究所の所長を務め、現在は同研究所の運営委員および福祉研究室長。
[著書]
Characteristics of Children in Substitute and Adoptive Care A :Statistical Summary of the VCIS Data (1984, 1985, 1987, 1988, 1989,1990, 1991, 1992, 1993), An Analysis of State Laws Addressing Elder Abuse (1995), Understanding Elder Abuse in Minority Populations (1998).
『老人虐待——アメリカは老人の虐待にどう取り組んでいるか』(編著)(筒井書房、1994)、『占領期の福祉改革——福祉行政の再編成と福祉専門職の誕生』原文英文(単著)(筒井書房、1997)、『救済物資は太平洋を越えて——戦後日本とララの活動』(単著)(保健福祉広報協会、1999)、『ドイツの介護保険——仕組みと課題を探る』(共編著)(保健福祉広報協会、2002)、『高齢者虐待——日本の現状と課題』(編著)(2001および2002)(中央法規出版)および『世界の高齢者虐待防止プログラム——アメリカ、オーストラリア、カナダ、ノルウェー、ラテン・アメリカ諸国における取り組みの現状』(監訳)(明石書店、2004)、『イギリス・ドイツ・オランダの医療・介護分野の外国人労働者の実態』(共編著)(ICSW日本国委員会、2006)など。
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