戦争の惨禍から見えてきたもの20世紀 世界の「負の遺産」を旅して
根津 茂:著
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 328ページ 並製
定価:2,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2852-2 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年09月 書店発売日:2008年10月06日
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紹介

20世紀に起きた戦争と暴政による悲劇の場、韓国、中国、台湾、ベトナム、カンボジア、ロシア、バルト3国、ハンガリー、チェコ、ドイツ、イスラエル等への旅を通して、仏教者であり平和教育者でもある著者が、今後の目指すべき国や社会のあり方を問いかける。

目次

 はじめに

第一部 アジアの大地に立つ

1 植民地の傷跡と分断の朝鮮半島
 朝鮮半島への関心
 近代日本と朝鮮半島
 植民地支配下の朝鮮
 南北分断と朝鮮戦争の場へ
 日韓の今を考える

2 日中の戦争と苦難の中国近現代史を歩く
 天安門の朝
 孫文のロマンティシズム
 中国東北地方の旅
 盧溝橋そして南京への道
 南京を訪ねて
 抗戦の都・重慶
 新中国を考える
 日中関係を思う

3 「フォルモサの島」台湾の過去と現在
 戒厳令下の台湾
 民主化と中国のミサイル
 日本と台湾そして現在

4 あらためてアジア・太平洋戦争を思う—戦後五十年のシンガポールとマレー半島の南端にて
 悲劇の現場で
 ここから見た日本

5 ベトナム戦争を考える旅—統一から二十周年のベトナムにて
 かつてのサイゴンにて
 北爆の現場で

6 大量虐殺と内戦そして地雷のカンボジア—キリングフィールドに佇んで
 アンコール文明の地にて
 プノンペン周辺の地獄の地

7 アジアの大地を旅して思うこと
 チベット難民とビルマの人々の苦難
 戦後の日本とアジア
 強く危惧する動き


第二部 ヨーロッパとその他の地域で思うこと

1 「過去の克服」とは
 ドイツへの関心
 ヴァイツゼッカー大統領との出会い

2 アウシュビッツへの道—チェコとポーランドにおける戦争とホロコーストの現場を訪ねて
 テレジンシュタットとリディツェ
 アウシュビッツの恐怖
 ワルシャワで思う
 ルブリンそしてマイダネク収容所へ向かう
 ホロコーストから問われること

3 過去を記憶し続ける国・ドイツを訪ねて—かつての加害者は、どう向き合っているのか
 私のドイツ旅行
 首都ベルリンの過去と現在
 ワイマール憲法の地にて
 ニュルンベルク、ミュンヘンなどバイエルン地方
 ライン川流域と北部ドイツ
 ドイツを旅して思うこと

4 旧ソ連・東欧を訪ねて—社会主義の理想と現実そして現在
 激動期のロシアを旅して
 バルト三国の旅
 東欧革命十周年のハンガリーとチェコ
 壁崩壊十周年の旧東ドイツ
 社会主義を考える

5 聖書の地にてパレスチナ問題を考える
 イスラエルに
 イエス伝道の地
 死海とアカバ湾の畔で
 ヨルダン川西岸地区
 聖都エルサレム
 ホロコーストとパレスチナ分離壁
 エルサレムでパレスチナ問題を思う

第三部 旅を通して考えたこと

・いま伝えたいこと・歴史・戦争そして憲法
 歴史を見つめるということ
 日本国憲法を思う
 仏教徒として念仏者として、そして一人の人間として

 あとがき
 主な参考文献

前書きなど

はじめに

 二十世紀という時代をテーマに、旅を通して感じたことを書くことになったが、はじめからそうした旅行を考えたのではなかった。仕事の合間に、まとまった休みが取れる時期に旅をしたに過ぎない。それも異国の文化や歴史を訪ねる気ままな旅行だった。しかし旅の中で、二十世紀を形成した歴史の舞台は必ず訪ねることにした。旅を重ねるうちに、そうした舞台の多くを回っていた。
 アジアでは、十九世紀末の日清戦争、そして日露戦争、韓国併合、中国革命の進展と挫折、「満州事変」、日中戦争、アジア・太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争、カンボジア内戦などの場に立った。ヨーロッパでは、ロシア革命、ファシズムの台頭、ホロコースト、第二次世界大戦、東西両陣営の対立による冷戦、ベルリンの壁の建設と崩壊、東欧革命、ソ連の解体などの場を歩き、中東ではパレスチナ問題の現場に足を踏み入れた。
 こうした歴史の現場で、色々なことを考えた。なぜ戦争が起きたのか。そして誰が、誰に対して、何をしたのか。それが後の世代にどんな影響を与えたのか。世界中で「負の遺産」からまったく自由だといえる国はないであろう。それでは、戦った相手や傷つけた人々と、どうしたら和解と相互理解が可能なのか。そのために、私たちは、何をしなければならないのか。何をしてはならないのか。いったい二十世紀という世紀、現代とよばれる時代は、何だったのだろうか。私たちは、二十世紀の遺産と負債を背負って、二十一世紀を歩んでいる。どこに向かって? その問いに正確な答えはない。けれども過去をふり返る中で、歴史から、かなり近い答えが見出されるのではないだろうか。それは同時に、私たちがどのような国や社会をめざして生きていくのか? という課題でもある。
 それとともに、人間とは何だろうか? というとてつもない大きな問いにぶつかった。人間が人間に対し、考えられないほどの残酷な行為を犯してしまう。そうした悲しさに何度も出会った。なぜ過ちを犯してしまうのか? これも、答えのないような問いである。
 私は、旅行から多くの課題を与えられ、考え、また旅に出た。海外へ行くと、その土地からの日本が見える。国内では見られない自国の姿である。そこから、かぎりなく日本の国と社会が問われる。ここで、これまでの旅を整理し、過去を見つめ、未来に目を向けながら、私たちの生き方や、国や社会のあり方を、考えてみたいと思う。本書は、歴史学者やジャーナリストなど、その分野の専門家が書いたものではなく、「仏教」を生きるよりどころにする一人の人間が自らの目で見て、考えたことである。日本の「戦争責任」を明らかにするため、アジアの戦跡を紹介した書物は数多い。私もそうした課題をもって旅をしたのであるが、本書は、ドイツをはじめ、ヨーロッパの人々の「過去への取組み」と「共生に向けた営み」にもスペースを多くとり、読者の皆様とともに、考えていくものである。また戦前と戦後は不連続なものではない。そこで戦後世界についても、「冷戦」などに焦点をあてて考えてみたい。
 私は、もともと出版など考えたこともなかったが、いつのまにか現代史の舞台の多くを見る結果となり、戦争と殺戮の場を訪ねた以上、そこで見たもの聞いたことを無駄にしてはならないと思った。特に、平和憲法を変えて、海外での武力行使も可能になろうとしている今、歴史の教訓を忘れてはならず、過去の死者たちの声なき声に耳を傾けなければならない。そんな思いで筆をとった。写真や、旅行の記録、メモなどなどで、旅をふり返りながら書くため、記憶が定かでないこともあるが、できるかぎり正確に思い起こし書いてみたい。
 本書の分量が多いので、全部読まれることを躊躇される方は、興味のあるところだけを読んでいただいてもかまわない。全体を通して、旅を語る中で、世界の現代史の流れがわかるように、私なりに記していきたい。ご一読いただければ幸いである。

著者プロフィール

根津 茂(ネヅ シゲル)

1959年、神戸市に生まれる。
1982年、甲南大学法学部卒業。
以後12年間にわたって企業に勤務。主として、総務、人事、経理を担当する。この時期、『歎異抄』により親鸞の教えに出会い仏教を学ぶ。
1994年より真宗大谷派僧侶(大阪教区南溟寺所属)、現在に至る。
1996年より甲南高等学校・中学校非常勤講師を兼ねる。

上記内容は本書刊行時のものです。
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