発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 160ページ 上製
定価:1,900円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2844-7 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年09月 書店発売日:2008年09月25日
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フランス国立人口問題研究所の所長(08年時点)である著者は、少子化対策に成功したフランスでさえ高齢化を阻止する方法はなく、先進国において移民による社会的貢献は不可欠と説く。人口統計学に基づくデータを駆使し、移民との共存という未来社会を提示する。
目次
日本語版への序
序—はじめに
第1章—移民と人口
人々の往来、移住、入植
人口学者の積極的中立
移民受け入れキャパシティ:政治的ジレンマ
積極介入主義の二つの様相
移民排斥主義と国家主権主義という政策
第2章—移民の選択:外国の事例から学ぶ
カナダ方式
スペインとイタリア:合法化のための割り当て制度
スイス:食い止めるべきは、移民あるいは外国人排斥?
1970年代のスイスのアイデアを修復する?
第3章—不可避となる高齢化現象、移民で補充する
人口増を監視下に置く
移民の純移動について把握できる範囲
住民1000人に対して2人の移民
大量の闖入ではなく、継続的な注入
移民は子沢山か?
将来、フランスの人口は移民によってのみ増加する
出国者と不法移民に関する疑問
移民フローの削減ではフランスの運命は変わらない
第4章——原則に対するタブー
人口の高齢化を葬り去る政策はない
押し付けられた高齢化、あるいは選択された高齢化
家族関係という力
現実離れした精神主義というルール
タブーを破壊するのか、あるいは原則に異議を唱えるか?
結論—移民との和平協定
訳者あとがき
【注】
前書きなど
日本語版への序—出生力、人口高齢化、移民あるいはフランスの「人口学的例外」の終焉(一部抜粋)
(…前略…)
本書執筆の目的の一つには、一般的にはまだ察知されていない不可避となる二つの現実を、フランス世論に認識してもらうことにあった。一つ目は、出生力政策は年金制度の欠陥を補うために長期的に必要不可欠な政策であるが、この政策では20年から30年後に高齢者が急増する影響を、ほんのわずかしか打ち消すことができないという現実である。フランスに新たなベビーブームが訪れたとしても、これが人口の高齢化現象という不可避な激動を葬り去ることはなく、生産年齢人口をわずかに押し上げるに過ぎない。日本は他のどの国よりもこのことを認識している。つまり、今後、我々は世代間の関係を見直し、就労期間を延長し、高齢者を技術的・倫理的に支援し、相互扶助システムの支柱を多様化させながらこれを改革する必要がある。こうした面では、フランスが日本の努力から学ぶべき点は多い。
本書がフランスの世論の関心を集めようとした二つ目の現実とは、フランスのような産業および商業国の将来人口における移民の位置づけに関することである。外国人の不法入国を防ぎ、また国の経済利益となる職業資格のある者だけを優先的に入国させることで移民の入国を管理しようとも、好むにせよ、好まざるにせよ、移民はフランスの人口増加のおもな原動力、いや第一要因にさえなる。このことに関しては本書のなかで、できる限り明瞭に説明したが、自然増加数(訳注:出生数−死亡数)に関する「フランスの例外」が継続することはない。その理由の一つには、フランス人女性が2人近くの子どもをもち続けると仮定しても、出生数は必ず減少することが挙げられる。というのは、将来の母親とは、ベビーブーム後に生まれた世代、つまり1974年以降の世代であることから、いずれにせよ、子どもをもつ女性の数が減少するからである。他方、死亡数は増加し続ける。ベビーブーム世代にとっては悲しいニュースであるが、平均寿命の伸びによって猶予期間を得た彼らとて、死から免れることはできない。今後20年から30年後には、彼らは死亡リストのトップに名を連ねることになり、死亡数は倍増する。フランスは日本よりは遅れて同じような状態に陥る。つまり、死亡数が出生数を上回るのである。フランス国内の人口増加は、ドイツ、イタリア、スペインですでに観察されているようにゼロ近辺にまで落ち込み、移民に関連した外部からの人口増加こそが、フランスの人口を刷新していくことになる。
(…中略…)
当然ながら、ここで日本の現実と非常にかけ離れた議論を展開している可能性があることは承知している。というのは、日本では資格をまったく必要としない職種も含め、すべての雇用を自国民で賄うことが可能な自給自足型の民族的均一性を保った社会が理想であるという考えが、いまだに根強いからである。日本社会の専門家でないフランス人研究者がこうした討論に加わることは差し控えるが、本書においてフランスの事例を紹介することで、こうした討論に有益な材料が提供されることは間違いないであろう。日本の読者が本書から日本のよい点を再確認することになろうとも、あるいは閃きを感じることになろうとも、それは自由である。しかしながら、人口高齢化という圧力が、平均寿命の伸びの影響と、人口置き換え水準を大きく下回る低出生力の影響に加わることで、出生数の不足分を事後に埋め合わせるためだけでなく、就労不能あるいは介護の状態にある人々のお世話をする家族や施設を支援するために、移民に助けを求める傾向が強まることは不可避であると思われる。社会構造に外国人人口を組み入れることで、当然ながら他国と同様に日本においても根源的な問題が生じる。例えば、文化の多様性と合致する認識とは一体、何であろうか。移民を社会にうまく統合していく過程で一致させる必要がある、譲ることのできない共通の価値観とは何であろうか。本書ではこうした非常に重要な問題についてはあまり触れていない。重要なのは、こうした問題に取り組む前に、こうした討論の背景をなす基礎的な人口学上の規定条件を頭に入れることである。
著者プロフィール
フランソワ・エラン(エラン,フランソワ)
1953年生まれ。フランス・エーヌ県ラン出身。仏エリート校であるエコール・ノルマル・シューペリウール(仏高等師範学校)で哲学教授資格を取得。INSEE(仏国立統計経済研究所)やINED(フランス国立人口研究所)の研究職を務め、1999年からINEDの第六代目の所長となり、現在に至る。
おもな著作として『Immigration, marche du travail, integration(移民、労働市場、社会統合)』(Commissariat general du Plan, La Documentation francaise, 2002)等がある。
林 昌宏(ハヤシ マサヒロ)
1965年愛知県生まれ。名古屋市在住。立命館大学経済学部経済学科卒。翻訳家。
訳書に、『コーヒー、カカオ、コメ、綿花、コショウの暗黒物語』(ジャン=ピエール・ボリス、作品社)、『世界エネルギー市場』(ジャン=マリー・シュヴァリエ、作品社)、『世界を壊す金融資本主義』(ジャン・ペイルルヴァッド、NTT出版)、『フランスの学歴インフレと格差社会』(マリー・ドュリュ=ベラ、明石書店)、『環境問題の本質』(クロード・アレグレ、NTT出版)、『21世紀の歴史』(ジャック・アタリ、作品社)がある。
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