米国のラテンアメリカ・中東政策と新自由主義の深層アメリカ帝国のワークショップ
グレッグ・グランディン:著, 松下 冽:監訳, 山根 健至:訳, 小林 操史:訳, 水野 賢二:訳
シリーズ・叢書「明石ライブラリー121」の本一覧
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 396ページ 上製
定価:3,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2805-8 C0336
在庫僅少
奥付の初版発行年月:2008年06月 書店発売日:2008年06月25日
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紹介

ラテンアメリカは、合衆国が現在のグローバルな超大国の地位に登りつめるために不可欠な軍事的・経済的・外交政的な実験場となってきた。中東やアジア、その他の地域における合衆国の行動モデルとして、対ラテンアメリカ政策がいかに役立ってきたかを論じる。

目次

 日本語版への序文

序論 コーランにラクダはいない

第1章 ラテンアメリカはいかにして米国を米国自身から救い出したか
 イスラエルの夢想家たち
 ヤマアラシ問題
 あなた方のアメリカニズムと私のアメリカニズム
 米国を米国自身から救い出す
 情事の終わり
 感情や心にではなく、胃や肝臓に
 アメリカ大陸の(反)革命を完遂する

第2章 世界で最も重要な場所——新しい帝国主義に向かって
 彼らのやり方で
 チリ、ニクソン・ドクトリンの終焉
 ベトナム、デタント、ニュー・ライト
 世界で最も重要な場所
 復活したリアリズム
 中米におけるホッブズとカントの邂逅

第3章 原始的(プリミティブ)になる——新しい帝国主義の暴力
 原始的になる
 脅威の顕示
 街で唯一の戦争
 ジェノサイド・オプション
 革命家の手から革命を取り上げる

第4章 すべてを自国へ持ち帰る(ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム)——新しい帝国主義の政治
 メディア教育
 服従への回帰
 攻撃計画
 (恒常的に)現存する危機に関する委員会
 悪魔(サタン)の経済
 攻撃的な道へ

第5章 第三のラテンアメリカ征服——新しい帝国主義の経済
 隷従への道
 前進するアメリカ
 変わるゲームのルール
 カンクンでのレーガン、あるいはラテンアメリカの第三の征服
 自由市場と自由な社会

第6章 グローバル化の展示物——新しい帝国主義の失敗
 アメリカの基準に合った
 ラテンアメリカ左翼の回帰
 五つの戦争が一つに
 アンデス諸国におけるハード・パワー

結論 イラクとラテンアメリカ——大異小同な関係

 謝辞
 アメリカ帝国プロジェクト
 原注
 訳者あとがき
 索引

前書きなど

訳者あとがき(一部抜粋)


(…前略…)

 本書では、グランディンは、合衆国の対ラテンアメリカ政策が中東やその他の地域における合衆国の行動のモデルとして如何に役立ってきたのかを検討している。彼は次のように主張する。
 「第二次世界大戦後、合衆国は共産主義の封じ込めの名のもとに、多くの場合、地域的同盟者の行動を通じて、とりわけグアテマラやブラジル、チリ、ウルグアイ、そしてアルゼンチンでクーデターを実行あるいは奨励し、ニカラグアでは残忍な傭兵戦争を支援した」
 彼がとくに強調する点は、一九八〇年代の中米の「低水準」戦争である。「中米において、共和党は初めて、今日の帝国主義にその道義的力を与えている三つの要素を結びつけた。すなわち、懲罰的理想主義、自由市場絶対主義、そして右派キリスト教徒の動員である」。
 彼は次のようにも言う。
 「実際、レーガンの中米政策は、今中東で行われていることの予行練習として的確に理解されうる。ネオコンやキリスト教福音派、自由市場主義者、そして今日、ジョージ・W・ブッシュの拡張的外交政策を支持しているナショナリストからなる同盟が最初に結びついたのがこれらの戦争であった」
 ブッシュ政権とネオコン知識人から発するリアリズムと軍事優先主義と「理想主義」のある種奇妙な融合、この問題は著者が焦点を当てていることの一つである。共和党が、一方で、「世界に民主主義をもたらす」といったような理想主義的なスローガンを使い、他方で、それにより軍事優先主義を正当化するのは、ブッシュ政権のオリジナリティではない。レーガン政権のコントラに対する支援と賞賛を思い起こせばいいのである。それゆえ、レーガン政権の中米政策は、今日、世界の他の地域で展開されている外交政策の最初の予行演習であった。中米は、ブッシュ政権の先制的戦争ドクトリンを現在支持している様々な集団が結び合わさった場所であった。この政権の顧問や取り巻き連中の大部分は、イラン・コントラ事件からリサイクルされたのである。エリオット・エイブラムズ、ジョン・ネグロポンテ、オットー・ライヒ、ジョン・ポインデクスターなど。
 以上の主題と関連して、グランディンは様々な論点を提示している。そのうち興味深い点に若干触れておく。
 第一に、「帝国」や「新しい帝国主義」について。グランディンは、最近の「帝国」議論における「ラテンアメリカの不在」を批判している。「帝国」と「帝国主義」についての概念上の区分は必ずしも明確でないが、Democracy Now!(May 11, 2006)でグランディンは次のように発言している。
 9・11からイラク侵攻までに、多くの書物や記事が合衆国を他の諸帝国と比較しているが、それらは歴史的アナロジーを探求していた。しかし、それらはすべて、合衆国が最も大規模に帝国的経験をした一つの地域、ラテンアメリカを無視していた、と。
 現実の直接的な植民地主義ではなく、域外の諸国を統治する例外的帝国、超領域的帝国が如何にあるべきかを合衆国が学んだ地域は、ラテンアメリカであった。ブッシュの9・11後の先制的で攻撃的な軍事主義型外交政策とレーガンの中米政策との関連は、現実には人員のリサイクル以上のずっと深いものがあった。
(…中略…)
 第二に、チリについての分析も、本書の注目すべき考察である。アジェンデ政権をクーデターで倒し、ファシズム型の軍事独裁をしいたピノチェトとシカゴ学派や合衆国政府との関係などは、ある程度は専門家には知られていることだが、本書では歴史的データを使い、いきいきと分析されている。
(…中略…)
 第三に、キリスト教ニュー・ライトの役割についての分析も本書の特徴の一つである。とくに、ラテンアメリカで広範囲に浸透した解放の神学に対するその対応に注意を向けている点である。(…略…)

(…後略…)

著者プロフィール

グレッグ・グランディン(グランディン,グレッグ)

現在ニューヨーク大学(NYU)歴史学部教授(中米史、ラテンアメリカ史担当)。Harper's, The Nation, The New York Times等に多くの時評を寄稿している。
主著:The Last Colonial Massacre: The Latin American Cold War and its Consequence (University of Chicago Press, 2004), The Blood of Guatemala: A History of Race and Nation (Duke University Press, 2000)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。

松下 冽(マツシタ キヨシ)

立命館大学国際関係学部教授、1947年生まれ。
主著:『現代ラテンアメリカの政治と社会』(日本経済評論社、1993年)、『途上国社会の現在:国家・開発・市民社会』(編著、法律文化社、2006年)、『途上国の試練と挑戦:新自由主義を超えて』(ミネルヴァ書房、2007年)、アントニー・マッグルー編『変容する民主主義:グローバル化のなかで』(監訳、日本経済評論社、2003年)ほか。

上記内容は本書刊行時のものです。

山根 健至(ヤマネ タケシ)

立命館大学非常勤講師(国際関係学博士)、1977年生まれ。
立命館大学大学院国際関係研究科博士後期課程修了。
主要業績:『途上国社会の現在:国家・開発・市民社会』(共著、法律文化社、2006年)、「民主主義定着期のフィリピンにおける政軍関係:議会政治における国軍の影響力の減少」(『立命館国際地域研究』第25号、2007年)。

上記内容は本書刊行時のものです。

小林 操史(コバヤシ ソウシ)

立命館大学大学院国際関係研究科博士後期課程、1974年生まれ。
主要業績:「メキシコにおける先住民族の権利と自治をめぐる一考察:サン・アンドレス合意と先住民法案の検討を通して」(『立命館国際関係論集』第6号、2006年)。

上記内容は本書刊行時のものです。

水野 賢二(ミズノ ケンジ)

立命館アジア太平洋大学非常勤講師、1978年生まれ。
立命館大学大学院国際関係研究科博士後期課程修了。
主要業績:「国連グローバル・コンパクト発足までの道程と現代的位相:グローバル世界における『企業の社会的責任』」(『立命館国際関係論集』第6号、2006年)。

上記内容は本書刊行時のものです。
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