「地域史」とアイデンティティの再構築バルカン史と歴史教育
柴 宜弘:編
発行:明石書店
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A5判 404ページ 並製
定価:4,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2752-5 C0022
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年03月
書店発売日:2008年04月02日
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紹介

「バルカン」という地域・アイデンティティは存在するのか? その仮構性に言及しつつ、旧ユーゴスラヴィア諸国や周辺諸国のナショナルヒストリー・歴史教育が互いにどう影響を及ぼし現在に至るのか、中国・韓国など東アジアの事例も交えながら分析する。

目次

 はじめに(柴宜弘)

第1部 2003年国際シンポジウム「バルカン——ヨーロッパを考える一つの視座」

 第1章 近代化プロセスにおけるバルカンの家族、文化、アイデンティティ(カール・カーザー)
 第2章 バルカンにおける分析カテゴリーとしての記憶、アイデンティティ、歴史遺産(マリア・トドロヴァ)
 第3章 バルカンの歴史は「暴力の歴史」か?(ヴォルフガング・ヘプケン)
 第4章 20世紀にスロヴェニア人がいだいたバルカンの西部境界とバルカン諸国認識—バルカンの歴史的メタ地理学の提案—(ペテル・ヴォドピヴェツ)
 第5章 バルカンに歴史はあるか(マーク・マゾワー)
 第6章 イギリスとバルカン—20世紀の歴史から—(木畑洋一)

第2部 2005年国際シンポジウム「地域史の可能性を求めて—バルカンと東アジアの歴史教科書から」

 第7章 分断された地域の共通の過去—バルカンの歴史を教えること—(クリスティナ・クルリ)
 第8章 教科書の中の地域史—クロアチアの事例—(スニェジャナ・コレン)
 第9章 セルビアの教科書における地域史—隣人たちの沈黙—(プレドラグ・マルコヴィチ)
 第10章 教科書の中の地域史—アルバニアの事例—(ヴァレンティナ・ドゥカ)
 第11章 ボスニア・ヘルツェゴヴィナにおける歴史教育(ソーニャ・ドゥイモヴィチ)
 第12章 歴史と究極の真実の再発見—モルドヴァにおける歴史、教科書、アイデンティティと政治—(シュテファン・イーリヒ)
 第13章 1990年以降のスロヴェニアの歴史教科書(ペテル・ヴォドピヴェツ)
 第14章 ギリシア歴史教科書における地域史(アウグスタ・ディモウ)
 第15章 バルカン諸国の歴史教科書における近代マケドニア叙述の比較(木村真)
  コメント 日中関係における歴史問題(王新生)
  コメント 日本と韓国での歴史共通教材の作成(君島和彦)
  コメント 東アジアの歴史認識へのヒントとして(三谷博)

第3部 バルカン現代史の諸相—2005年のワークショップから
 第16章 ヨーロッパ的文脈における1896年アテネでの最初の近代オリンピック大会(クリスティナ・クルリ)
 第17章 中欧とバルカンにおける政治の伝統—第一のユーゴスラヴィアの経験の見地より—(ペテル・ヴォドピヴェツ)
 第18章 ボスニア・ヘルツェゴヴィナのセルビア系市民 1918〜1941年(ソーニャ・ドゥイモヴィチ)
 第19章 ナショナリズムの達成vs. ナショナリズムの維持—モルドヴァの事例とナショナリズム理論—(シュテファン・イーリヒ)

 付録
 バルカン各国の歴史教育の現状

前書きなど

はじめに(柴宜弘)

 本書は東京大学駒場キャンパスで、2003年3月と2005年11月に開催された二つの国際シンポジウムとワークショップでの報告集である。
 二つの国際シンポジウムが開催された経緯を簡単に紹介しておく。(…略…)
 ティラナでの国際南東欧研究学会の前年、2003年3月に、東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究センター(DESK)の援助を得て、駒場キャンパスで国際シンポジウム「バルカン——ヨーロッパを考える一つの視座」を開催した。シンポジウムの目的は統合過程の進むヨーロッパを考える一つの視座として、バルカンという地域を検討してみることであった。バルカン史研究の第一線で活躍している国際的に知られた研究者を招聘し、刺激的な報告を聴き議論を重ねる中で、我が国のバルカン史研究を深めることは当然だが、その成果を国外に向けて発信する必要性を痛感していた。ティラナでの国際南東欧学会への参加はその第一歩であったといえる。このシンポジウムの報告は一部を除き、本書の第1部に収録されている。
  (…中略…)
 こうした試みを紹介するため、2005年11月には国際交流基金の援助を得て、国際シンポジウム「地域史の可能性を求めて─バルカンと東アジアの歴史教科書から」を駒場キャンパスで開催した。英語版の共通歴史副教材(Teaching Modern Southeast European History, Alternative Educational Materials: Workbooks 1-4, Thessaloniki: CDRSEE, 2005)の総括編集者であるクルリ教授が、包括的ながら極めて示唆に富む基調報告を行った。このシンポジウムにはスロヴェニア、クロアチア、ボスニア、セルビア、アルバニアからの研究者に加えて、ドイツのゲオルク・エッカート国際教科書研究所からも研究者を招き、北京大学の王新生教授および日本側の君島和彦教授と三谷博教授がコメンテーターとして参加し、実りある議論を行うことができた。これらの報告は、すべて本書に収められている。このシンポジウムの報告者の英文原稿は、Nobuhiro SHIBA (ed.), In Search of a Common Regional History: the Balkans and East Asia in History Textbooks, Tokyo, 2006 として公表した。
  (…中略…)
 二度の国際シンポジウムを通じて、「バルカン諸国歴史教科書の比較研究」を進めてきた私たちは、バルカン諸国の歴史教科書を単に比較・分析することから、私たち自身の問題である東アジアの歴史教科書や歴史教育の問題にまで視座を拡大して研究することができるようになった。地域史という視点から、日本のバルカン史と東アジア史の歴史研究者が歴史教科書や歴史教育を比較・検討する意義や重要性についての共通認識もつくられつつある。日本のバルカン史研究が地に足をしっかりとつけたうえで、今後、その成果を国外に発信するという課題を実現していく必要があるだろう。いずれにせよ、本書がバルカン史に関心を持つ人たちだけではなく、東アジアの歴史教科書や歴史教育に関心をいだく人たちにも広く読まれることを願っている。
  (…後略…)

著者プロフィール

柴 宜弘(シバ ノブヒロ)

1946年東京生まれ。早稲田大学大学院文学研究科西洋史学博士課程修了。
1975〜77年、ベオグラード大学哲学部歴史学科留学。敬愛大学経済学部、東京大学教養学部を経て、現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。専攻は東欧地域研究、バルカン近現代史。

【主な著書】
 『バルカンの民族主義』山川出版社、1996年
 『ユーゴスラヴィア現代史』岩波新書、1996年
 『図説 バルカンの歴史(改訂新版)』河出書房新社、2006年
【共著】
 『世界大戦と現代文化の開幕』(世界の歴史26)中央公論社、1997年
 『連邦解体の比較研究——ソ連・ユーゴ・チェコ』多賀出版、1998年
【編著】
 『バルカン史』山川出版社、1998年
 『東欧を知る事典』(新訂増補版)平凡社、2001年
 『バルカンを知るための65章』明石書店、2005年
 『バルカン学のフロンティア』彩流社、2006年

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