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児童虐待を認めない親への対応
リゾリューションズ・アプローチによる家族の再統合
原書: Working with‘Denied’Child Abuse: The Resolutions Approach
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2008年4月
- 書店発売日
- 2008年4月2日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年1月7日
紹介
虐待行為を否認したまま家族再統合を求める家族に対して、どのように再統合に向けてのステップを作るかを解説する。被虐待児やきょうだいに虐待の経緯をわかりやすく説明するための「ことばと絵」の使い方や安全計画の作り方等の豊富な事例とともに示す。
目次
日本語版によせて
謝辞
本書中事例の登場人物名について
第1章 「否認」の見方を変えてみる
「否認」をめぐる言い争いの分析
振り返り
問題とその解決(resolution)について違った見方をする
本書について
第2章 「安全づくり(リゾリューションズ)」の概観
第1段階:準備
第2段階:関係作り(エンゲージメント)
第3段階:「ことばと絵」
第4段階:暫定版家族安全ガイドラインと「応援団」の関与
第5段階:「似ているけれども違う話」
第6段階:最終版家族安全プラン
第7段階:フォローアップ
リゾリューションズ・アプローチによる「安全づくり」:概観
結果
第3章 「安全づくり(リゾリューションズ)」の原理と実践
第1原則:相互作用のプロセスとしての「否認」
第2原則:行動の連続体としての「否認」
第3原則:「疑うことなく信じてはならない」
第4原則:虐待者ではなさそうな親と家族を取り巻く人たちを、子どもを保護する資源と見る
第5原則:過去の否認より将来の安全をめぐって実践を体系化する
第6原則:権限と影響力の上手な使い方
第7原則:「醜い」問題に対する「汚い」解決
第4章 開始:準備と関係作り(エンゲージメント)
第1節 準備
第2節 複数のストーリーを受け入れる余地を作りながら両親と関係を作る(契約する)
年長児が申し立てた性的虐待の事例
ドナの事例
第5章 「ことばと絵」によってばらばらの話から分かち合う説明をつくる
「ことばと絵」のプロセスの背景
「ことばと絵」のプロセス
「ことばと絵」のプロセスを親とその重要な助言者に説明する
親に「説明」の最初の案を提示する
親とその助言者と社会福祉局で「ことばと絵」を練り上げ完成させる
子どもに心配なことを説明し、「ことばと絵」の最終版をつくる
乳幼児がケガを負ったACADE事例での「ことばと絵」の例
社会的養護を受けている子どものための「ことばと絵」の例
結論
第6章 事情を知った「安全の応援団(セイフティ・ネットワーク)」を家族の周りにつくる
「家族の安全応援団(ファミリー・セイフティ・ネットワーク)」づくりに援助専門職はどう関わるか
家族応援会議(ネットワーク・セッション)
暫定版安全ガイドラインの例
「応援団」を巻き込むタイミング
脆弱な子どものための「村」としての「応援団」
第7章 家族安全ガイドライン:最終版家族安全プランに向けての旅を始める
明確に定義された将来の安全に関わる実践を組み立てる
安全の定義と例
効果的な安全プランの特性
安全プランづくりのプロセスは、最初の安全ガイドラインから始まる
家族安全ガイドラインの一例
安全プランづくりに関する社会福祉局の実務的な懸念
結論
第8章 仮想の取り組み:「似ているけれども違う」家族
問題提起
「似ているけれども違う話」の準備
仮想の性的虐待で親の視点を話し合うこと
乳幼児がケガをした事例の「似ているけれども違う家族」のロールプレイ
子どもの視点
将来の成り行きについて話し合う
親のコメント
社会福祉局による対応という状況で仮想のシナリオを使う
安全を確実にするために仮想のシナリオを使ったスウェーデンの事例
リスク状態にある赤ちゃんの母親に対しアズ・イフ・アプローチ(‘as if’approach)を使った社会福祉局のワーカー
第9章 家族安全プランをつくり、見守る
最終版の安全プランづくり
乳幼児がケガをしたACADE事例の最終版安全プラン
性的虐待が申し立てられた事例での最終版安全プラン
細かいことを具体的に話し合う
ほかの団体に属する人たちにも関わってもらうこと
年長児を安全プランづくりに巻き込むこと
困難をチャンスとして意味づけること
再統合に向けての最後のステップ
フォローアップ
結論
第10章 複雑なものを抱えて旅する
参考文献
監訳者あとがき
索引
前書きなど
訳者あとがき
本書は、Andrew Turnell and Susie Essex (2006)“Working with‘Denied’Child Abuse: The Resolutions Approach.”Berkshire: Open University Press.の全訳です。
アンドリュー・ターネルは、オーストラリアのウェスタンオーストラリア州パースで、児童保護ソーシャルワーカーのスティーブ・エドワーズと一緒に「サインズ・オブ・セイフティ・アプローチ」を開発したことで知られています。彼らのひとつの到達点は、『安全のサインを求めて』に結実しています。その著作は、「児童虐待に携わる者は、虐待・ネグレクトまたはそれが疑われる状況で、子どもの安全を確保しつつ、どうすれば両親とパートナーシップを築けるのか?」というテーマに焦点を当てました。当事者(子どもとその養育者)の見解、強さ、資源、能力に焦点を当てつつ当事者と専門職が共働することは、生活問題を抱える当事者へのかかわりのモデルとして世界的潮流となっており、著者らは児童虐待対応の領域への適用のひとつの姿を明確に示してくれました。
一方、スージー・エセックスは、ジョン・ガンブルトン、コリン・ルーガーとリゾリューションズ・アプローチを1990年代前半から発展させてきました。彼らは、1996年にChild Abuse Review誌に「リゾリューションズ:虐待の責任を否認する家族への対応(Resolutions: Working with families where responsibility for abuse is denied)」を発表し、1999年にAustralian and New Zealand Journal of Family Therapy 誌に「似ているけれども違う会話:深刻な児童虐待事例における否認への対応(Similar but different conversations: working with denial in cases of severe child abuse)」を発表しています。
(…中略…)
本書を読むと、「ことばと絵」「似ているけれども違う話」「安全プランづくり」などの手法に目を奪われてしまいます。しかし、アンドリューが私たちに要請しているのは、まずは基本に立ち返り、子どもや家族がどう理解しているかを絶えず確かめること、一気にジャンプしないこと、子どもや家族との関係作りを丁寧にすること、というプロセスに留意することでした。一方では、担当ケース数の多さ、書類作成に追われる職場の状況があり、そこをクリアできたとしても家族と会える時間や回数に限度があります。そうした条件の中では、ベストではないもののベターな実践を積み重ねることが出来ればと思います。
本書では「旅」ということばが使われています。私たちは、児童虐待防止という旅を続けるのに、「サインズ・オブ・セイフティとリゾリューションズ」という地図を手にすることが出来ました。その旅では、応援団の随行も求めながら、困難な状況の中で、子どもや家族といっしょに彼らの未来に向かって彼らのペースで一歩ずつ歩むことが重要です。そうした取り組みの中で、子どもが安全で安心して育つことを守り応援する状況が生まれればと思います。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。