オルタナティブを求めて等身大のグローバリゼーション
中村 則弘:編著, 栗田 英幸:編著
シリーズ・叢書「国際比較研究叢書1」の本一覧
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 288ページ 上製
定価:5,000円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2738-9 C0336
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年03月 書店発売日:2008年04月02日
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紹介

経済学、政治学、国際関係学、歴史学、文学、言語学、社会学を専門とする執筆者陣が学際的にアプローチ。グローバリズムがもたらす画一化と多様性のせめぎあいを明らかにし、これまで自明とされてきた分析枠組みの問い直しを求める。

目次

はじめに(中村則弘)

第1部 グローバリゼーションをめぐる政治—経済—文化
 第1章 EU統合過程の新展開(松浦一悦)
  はじめに——世界経済のグローバル化
  地域統合・地域主義
  欧州市場統合の進化と拡大
  単一通貨導入下の単一市場の強化とEU拡大結びに代えて
 第2章 等身大の「文民保護を目的とする軍事介入」——コンゴ民主共和国における一事例をてがかりとして(楢林建司)
  はじめに
  暫定緊急多国籍軍派遣決議
  暫定緊急多国籍軍派遣の活動
  おわりに
 第3章 アメリカ占領軍「女性問題担当官」(Women's Affairs Officers)——鹿児島・四国・新潟を事例としたアメリカ人女性による「日本女性解放」の夢と現実(土屋由香)
  はじめに
  アメリカ占領軍「女性問題担当官」の役割
  日本人との協力——“Going Native”&“Lost in Translation”
  占領軍中央(GHQ/SCAP)との温度差
  結び

第2部 せめぎあう画一化と多様性
 第4章 二〇世紀イギリスの国民的アイデンティティとイングランド教会——信仰復興運動から福祉国家へ(吉田正広)
  はじめに
  第一次世界大戦とイングランド教会の信仰復興運動
  第一次世界大戦後の経済問題と教会
  一九三〇年代以降における教会と経済問題
  テンプルの「福祉国家」論——政府の六つの目標
  おわりに
 第5章 多民族国家アメリカのグローバリゼーション——文学からのアプローチ(藤江啓子)
  はじめに
  クレヴクール
  エマ・ラザラス
  ウォルト・ホイットマン
  ハーマン・メルヴィル
  おわりに
 第6章 韓国・済州島チャムスの移動と生活文化——生活実践のダイナミズム(伊地知紀子)
  はじめに——済州島の海から
  チャムスへのまなざし
  裸潜水漁と賃労働
  継続する日本での裸潜水漁
  おわりに
 第7章 グローバルハウスホールディング——グローバル化する家庭・世帯と子ども(M・R・P・バレスカス/訳:下窪日登美)
  はじめに
  グローバリゼーションと不平等
  グローバリゼーションと子ども
  グローバリゼーションとグローバルハウスホールディング
  グローバルハウスホールディングと子ども
  結論
第3部 オルタナティブを求めて
 第8章 「資源の呪い」のオルタナティブ——グローカルなネットワークとエンパワーメント(栗田英幸)
  はじめに
  「資源の呪い」理論
  グローカルエンパワーメントと資源開発の矛盾
  二つのグローカルネットワーク
  おわりに
 第9章 「苦界浄土」としてみるオルタナティブ——中国の底辺階級と社会意識の検討から(中村則弘)
  はじめに
  反システム運動の終焉と底辺階級
  階級状況の変化と拡大する格差
  腐蝕的変動のもとで表出する社会矛盾
  「苦界浄土」からみるオルタナティブ
  おわりに

 結章 等身大のグローバリゼーション(栗田英幸)
  補論 世界と愛媛のケースから

 補論1 オルタナティブへのさまざまな試み(栗田英幸)
 補論2 世界と愛媛を結ぶ——文学からの問いかけと事例——大江健三郎の『あいまいな日本の私』(藤江啓子)
 補論3 グローバリゼーションと中国語(秋谷裕幸)

 索引
 編著者・執筆者紹介

前書きなど

はじめに:2 本書の構成と概要(中村則弘:一部抜粋)

 これまでの議論をふまえつつ本書の構成について概括しておこう。本書は三部構成とし,グローバリゼーションによる全般的な問題状況にかかわる内容を,まず第1部「グローバリゼーションをめぐる政治—経済—文化」として示すことにした。そして,グローバリズムがもたらす画一化と多様性のせめぎあいを、第2部「せめぎあう画一化と多様性」において論じた。これは本書の核心をなす部分である。第3部は,これまでの検討内容を受けつつ新たな展望を考えようとする部分であり,「オルナタティブを求めて」とした。
 第1部は三つの論文から構成されている。第一論文の松浦一悦「EU統合過程の新展開」では,英米によるグローバリズムに対抗し,いま一つのグローバリズム形成の一つの極の形成をめざし新たな動きをみせつつあるEUの状況が示される。第二論文の楢林健司「等身大の『文民保護を目的とする軍事介入』——コンゴ民主共和国における一事例をてがかりとして」では,コンゴ紛争への多国籍軍事介入の事例からあるべき国際貢献のあり方を模索する。そして第三論文の土屋由香「アメリカ占領軍『女性問題担当官』(Women's Affairs Officers)——鹿児島・四国・新潟を事例としたアメリカ人女性による『日本女性解放』の夢と現実」は,イラクとの状況の対比を念頭に,アメリカの情報戦略と現地文化とのかかわりを日本占領軍の現地エージェントのあり方から考察する。
(…中略…)

 続いて第2部は,四つの論文から成り立っている。この部では,グローバリズムが何らかの世界標準を求めるような動きも見せる一方で,多様性を浮かび上がらせていることを正面から論じる。ここではまず,西欧を事例とした歴史的な内容を捉え,その上でアジアの現実状況に踏み込むこととしている。
 第四論文と第五論文では,いわゆる近代世界システムの中心として,画一化の推進する側となったイギリスとアメリカについての内容が示される。吉田正広「二〇世紀イギリスの国民的アイデンティティとイングランド教会——信仰復興運動から福祉国家へ」では,第一次大戦後に崩壊しつつあったイギリスの国民アイデンティティの復活に決定的な意味をもったのはイングランド教会であり,それは福祉国家の形成と結びついていたことが明らかにされる。そして,藤江啓子「多民族国家アメリカのグローバリゼーション——文学からのアプローチ」は,移住者の受け入れなどから理解できるアメリカという開かれた空間において,画一性と多様性がせめぎあっていたのであり,このせめぎあいのなかでグローバリゼーションは機能してきたことを文学作品の解釈から指摘する。これらの論考から,イギリスとアメリカにおいては,画一化と多様化が内部的に起こっていたことがわかる。また,興味深いことにアメリカでは,多様性が画一化の動きを支えていたことを理解できる。
(…中略…)

 新たな展望を考えようとする第3部は,異なる側面を捉えた二つの論文から構成されている。一つは制度的・政策的な面から,いま一つは主体的・意識的な面からアプローチしたものとなっている。
 第八論文である栗田英幸「『資源の呪い』のオルタナティブ——グローカルなネットワークとエンパワーメント」は,グローバリズムのなかでの根源的課題といえる資源開発のあり方を大胆に捉えたものである。地域住民の富であるはずの資源が,大規模開発によりいかに人々からみて呪われた存在へと変化したのかを,画一化と多様化のせめぎあいから論じている。(…略…)続けて,第九論文の中村則弘「『苦界浄土』としてみるオルタナティブ——中国の底辺階級と社会意識の検討から」である。この論考は、底辺階級の現況を位置づけつつ、その苦しみもがく生き方のなかに新たな社会の展望を見出そうとする試みとなっている。
(…後略…)

著者プロフィール

中村 則弘(ナカムラ ノリヒロ)

愛媛大学法文学部・教授
主要業績
『台頭する私営企業主と変動する中国社会』ミネルヴァ書房、2005年。
『脱オリエンタリズムと日本における内発的発展——東アジアの視点から』東京経済情報出版、2005年。

上記内容は本書刊行時のものです。

栗田 英幸(クリタ ヒデユキ)

愛媛大学法文学部・准教授
主要業績
『グローカル・ネットワーク——資源開発のディレンマと開発暴力からの脱却を目指して』晃洋書房、2005年。
「開発のディレンマを越えて——大規模資源開発とグローカルネットワーク」(郭洋春他編『開発平和学——サブシステンスの危機にどう立ち向かうか』法律文化社、2005年)。

上記内容は本書刊行時のものです。
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