発行:明石書店
この版元の本一覧
四六判 244ページ 上製
定価:1,600円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2720-4 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2008年02月
書店発売日:2008年02月06日
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紹介
出生率1.3レベルで低迷する日本に対して、1.98とEUトップクラスを誇るフランス。なぜ「子どもも仕事も」が可能なのか。日仏で出産・子育てを経験したジャーナリストが、ママたちや識者への取材、アンケート調査を通じてその秘密を探る。
目次
はじめに
序 フランスの出生率はなぜ高いのか
ヨーロッパでトップ水準
出生率低下はフランスから始まった
人口不足の危機感と家族政策
スウェーデンとの違い
子だくさんは移民のおかげか
専門家はこうみる
第1章 働くママの24時間
火〜水曜は4人の子を両実家へ…ミュリエル
半在宅勤務で月・火曜は子どもと昼食…ナタリー
ヌヌが2家族4人の子をみる…ジュリー
フランスの両立生活を見て
●補足 フランスの学校制度
低学年は送り迎え
学食に延長保育・指導学習
学校がお休みの水曜日
第2章 カップルが変わった
新しいカップルの登場
対等な二人
女も働く
仕事は自己実現のため
揺れる男性像
分担の理想と現実
家事はアウトソーシング
〈コラム〉 仕事とは「自由」——移民2世ナイマの言葉
第3章 ゆとり労働と家族政策
年5週のバカンス
週35時間労働
週4日はごく普通、短縮勤務
産後3カ月で職場復帰
保育ママ、自宅でヌヌ、シェア…託児法はアラカルト
女性はやはり景気の調整弁?
日仏子育て支援比較
●補足 産むほど安くなる? フランスの税制N分N乗方式
〈コラム〉 世界の縮図、公園のヌヌたち
第4章 自立を重んじる子育て
赤ちゃんも個室でひとり寝
保育園で社会性をはぐくむ
保育のプロ集団
子どもにかかわる理論と実践
保育の現場はこう違う
子どもの発達に一番いい保育とは
三歳児神話の不在
おばあちゃん、おじいちゃんとのバカンス
バカンス合宿
ここでも子どもは王様?
第5章 フランス社会の母親観
カップル中心主義
女性解放運動で得たもの
中絶宣言
母性の脱神聖化
おっぱいは誰のもの
子どもとの時間、大切なのは「量より質」
第6章 彼女たちの生き方
4回の産休、書き続けた記事…新聞記者、アリアーヌ
仕事と学業両立のシングルマザー…博士学生、マチルド
「愛」つらぬき離婚、シングルで出産…元大臣官房長、アンヌ
第7章 女性と仕事——2人の識者に聞く
〈エリザベート・バダンテール〉両立のカギは、女性を母性に閉じ込めないこと
子どもと「良い距離」が必要
女性も経済力を
〈エドヴィージュ・アンティエ〉理想は産後6カ月で短縮勤務の復帰
フランス、日本とも歩み寄りを
日本の男性も父親の役割を果たすべき
〈コラム〉 筆者の経験から……母性愛は日々、はぐくむもの
第8章 「フランス流」のジレンマ
二重負担の毎日
評価されない「育児に専念」
離婚の増加
変わる家族の姿
残る男女格差
ゆとり労働と国際競争
第9章 日本社会の現状
「フランス流」は日本で可能か
三歳児神話
母子密着の育児
父親の不在
企業中心社会
男女雇用機会均等法の功罪
「男は仕事、女は家庭」は日本の古き良き伝統か
すれ違う夫婦
埋めがたい親世代との溝
産み育てやすい社会へ
おわりに
付録 インタビュー調査でみるフランスのママたち
調査対象
調査地点
インタビュー方法
年齢と子どもの数
業・その他
調査結果
インタビュー調査協力者リスト
前書きなど
はじめに
「人口減少社会に突入」「少子高齢化が加速」。国が人口や出生率を発表するたび、そんなニュースを目にするようになった。ひのえうまの年の出生率を下回り、「1・57ショック」と騒がれた1990年以降、様々な対策はとられているものの、日本の出生率は1・3レベルと依然として低いまま。今や「少子化対策」は時代のキーワードですらある。
でも、今まさに子育て世代にあたる筆者にとって、出生率は「低くて当然」のようにも感じる。
20代で結婚した友だちの多くは、家庭に入り専業主婦になった。今では幼稚園児や小学生のお母さんだ。かつてなら絵に描いたような幸せな家庭そのもの。でも、子どもが小さかったころ、彼女たちからもれた言葉は、「家で子どもとばかりいて、きゅうくつ」「自分の時間がまったくないのがつらい」。子どもが嫌いというわけではなく、世間から取り残されているような疎外感と、母親一人に任される孤独な育児がつらいのだという。
仕事を辞めて数年も経つと「もう社会復帰できない」「私なんてもうだめよ」と彼女たちは言う。そして、そのまま主婦でいる人、内職やパートを始めた人。かつてほどの輝きを失ってしまったように見えるのは、私だけだろうか。
同僚や友だちの中には、少数派ではあるけれど、働きながら子どもを育てる人もいる。でもよく見ると、私の周りで子どもがいても仕事を続けているのは、公務員(教員や保育士を含む)かマスコミ関係くらい。あとは、親と同居か近居で、子どもをみてもらえる恵まれた人だろう。看護師の友だちは、一度は職場に復帰したものの、家事と育児をほとんど一人でこなそうとしてストレスで過呼吸症候群を起こし、結局、仕事を辞めた。ニッポンは転勤大国。2人の子を育てながら航空会社の事務職を続けていた友だちは、「夫の転勤で泣く泣く」辞めた。夫が単身赴任して、一人で子どもを育てながら仕事を続けるスーパーウーマンも中にはいる。でも、相当の無理をしいられている。
出生率の低下はこれまで、晩婚化や結婚しない人の増加が主な原因といわれてきた。ところが、国立社会保障・人口問題研究所によると、1990年代からは結婚後の出生ペースの低下もみられるようになったという。結婚しているカップルの、子どもの数も減っているのだ。子どもを持つことにためらいをおぼえた一人として、それも当然だと思う。
(…中略…)
第1章では、フランスのママも工夫をしながら、仕事と家庭の両立に奔走している様子を知ってもらいたいと思い、調査に答えてくれた人のうち、3人の24時間の過ごし方を紹介した。第2〜5章では、私自身がフランス社会を見て感じた、子どもを産み育てやすい四つの大きな理由を分析し、それぞれの章で示した。具体的には、第2章で女性も働き、男性も育児・家事をするようになったことなどカップルの変化、第3章ではゆとりの労働環境と家族政策、第4章では子どもの自立を重視する子育て文化を、第5章では、母親であると同時に一人の女性であると考えるフランス社会の母親観について取り上げた。日本ではフランスの育児休暇制度や家族給付が注目されている。でも、政策的な支援だけでなく、子育てをする上での意識的、文化的な違いも大きいのではないかというのが、私や、現地に暮らす日本人女性たちの実感だ。
第6章では、各方面で活躍する3人の女性の生き方を紹介。第7章は、「母性愛は本能ではない」と主張して大論争を起こしたフランスの女性オピニオンリーダー、エリザベート・バダンテール氏と、彼女と正反対の立場をとる女性小児科医エドヴィージュ・アンティエ氏の2人に、女性と仕事について見解をたずねた。第8章は、「フランス式」で生じる問題点とフランスの家族の変貌について触れ、最後に第9章で日本の現状を見つめ直し、どうすれば日本が産み育てやすい社会になるかを考えたい。
フランスの出生率の動向について知ってもらうため、本題に入る前に、序で専門家の意見を交えながら最近の傾向や歴史を紹介した。少しかた苦しいテーマなので、興味がない人は読み飛ばしてもらってかまわない。インタビュー調査の詳細は、巻末に掲載した。
インタビュー調査については、サンプル数30余りでは、もちろん、統計的にどうこう言えるものではない。でも、彼女たちが何をどう感じているのか、何を求めているのか、問題は何かあるのかをより深くさぐるため、Oui/Nonで答える質問はなるべくしなかった。一人ひとりのケースをよりよく理解するため、人数も34人が精一杯だった。それでも、フランスの女性の生き方を、おぼろげながらも描くことができたらと思っている。
著者プロフィール
牧 陽子(マキ ヨウコ)
1994年、東京外国語大学卒業後、NHKに入局、国際局ディレクター。NHKを退職後、パリに留学し、パリ第一大学修士(政治学)を取得。留学中だった1998〜99年、NHKラジオフランス語講座テキストにエッセイを連載。その後、東京大学大学院修士(国際政治)を取得後、朝日新聞社に入社、記者。
2005年にパリで、2006年末に東京でそれぞれ男の子を出産。産休・育休の間、当時フランスに赴任していた夫のもとで生活し、現地で出産と子育てを経験する。2007年、朝日新聞社に復職。フランスには留学生時代と今回の育児体験で計4年間の滞在。
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