グローバル化と新自由主義への対抗運動のススメまんが 反資本主義入門
エセキエル・アダモフスキ:文, イラストレータ連合:絵, 伊香 祝子:訳
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 192ページ 並製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2671-9 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年11月 書店発売日:2007年11月12日
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紹介

貧困、環境破壊、公共空間の壊滅、社会福祉の崩壊など、世界規模で同時に混迷をきわめる問題。これらを生み出す元凶である資本主義の問題点や対抗運動の歴史的総括を行い、「反資本主義」を思想的・実践的にわかりやすく図解。今こそグローバルな直接行動を!

目次

1章 反資本主義者たち
  資本主義とは何か/抑圧的な社会/階級社会
  /資本主義下の社会階級——ブルジョワジー
  /サバルタン階級/(以下略)

2章 抵抗から反資本主義へ
  かんたんな歴史の復習/ヒューマニズム「革命」
  /反乱者たち、ユートピア主義者、啓蒙主義者、ロマン主義者
  / 革命の伝統が生まれる——イングランドの革命/(以下略)

3章 伝統的左翼と新しい反資本主義の10の違い
  1.権力をとる?
  2.アウトノミア(自律空間)
  3.今日が革命の日だ
  4.「水平」な組織と運動
  5.ネットワーク状の構造
  6.多様性
  7.状況にあわせた政策
  8.闘争のグローバル化
  9.直接行動と市民的不服従
  10.創造性と喜び

4章 新しい反資本主義の運動、ネットワーク、活動
  先頭に立ったのは先住民——サパティスタ
  /暮らしを守ろうとする農民たち——土地なき農民運動とビア・カンペシーナ
  /労働者たちは疎外されて生きることを拒絶する——ピケテロスと労働者の支配する工場
  /搾取と家父長制に反対する女性たち——世界女性行進/(以下略)
  
5章 「綱領」なし、でも知恵を出しあって
  グローバルなネットワークをとびかう提案
  /部分的な変革のための提案:所得のグローバルな再分配
  /資本の移動の管理/環境危機への解決策
  /社会的賃金/地球市民権(以下略)

もっと知りたい人のためのブックガイド・ウェブサイト

訳者あとがき
解説 商品化の罠から解き放たれるために 小倉利丸
人名索引/事項索引

前書きなど

訳者あとがき
 本書はEzequiel Adamovsky, Illustradores Unidos. Anticapitalismo para principiantes: La nueva generacon de movimientos emancipatorios, Era Naciente SRL, 2003の全訳です。難しい話をコミックスを思わせるイラストを多用して、わかりやすく初心者(ビギナーズ)に知らせることで定評のある「フォービギナーズ・シリーズ」のアルゼンチン・オリジナル版です。
 著者のエセキエル・アダモフスキは、1971年生まれでブエノスアイレス在住の反資本主義運動の活動家で、ロンドン大学で博士号を取得した歴史学者でもあります。『世界社会フォーラム:帝国への挑戦』(文献リスト参照)によれば、Znet(サイト・リストのzmag参照)やopenDemocracy(http://www.opendemocracy.net/)などに文章を発表。欧米、ラテンアメリカ、南アフリカなど各地の反資本主義運動の活動家とも積極的に交流しています。また、アルゼンチン国内では、2001年末の預金凍結に端を発した経済危機以来、活発になった住民の互助組織のひとつ、アサンブレア・エル・シッドに参加し、そこでの経験についても上記のサイトなどで報告しています。このアサンブレアは、金融機関の空きビルを占拠して住民センターにしたり、炊き出しや社会保障の拡充を求める運動などの活動を行っているそうですが、現在(2007年8月)はアダモフスキは直接かかわってはいないとのことです。このほか1994年に創刊された雑誌「ロダバッリョ(El Rodaballo)」(編集人はブエノスアイレス大学教員で、アルゼンチン左翼文化に関する文献・研究センター所長のオラシオ・タルクスと、精神分析医のブラス・デ・サントスの二人。現在は休刊)にも執筆しています。
 印象的なイラストを担当したイラストレータ連合の母体であるシルクスクリーン工房についてはwww.proyectotrama.org/00/ASOCIADOS/WSF/tps.htmで活動の一端を目にすることができます。
 ここでアルゼンチンおよびラテンアメリカと反資本主義の関わりについて少し説明しておきます。ラテンアメリカでは、日本に比べて、ネオリベラリズムや現在進行中の資本主義のグローバル化に対抗する運動への関心が高いのですが、その理由としては以下のようなことが考えられます。アメリカ合衆国や、イギリス、日本などで1980年代からとられはじめたネオリベラル(新自由主義的)な政策は、アルゼンチンやチリ、ウルグアイでは1970年代からすでに採用されており、もともと大きかった貧富の差を拡大したり、膨大な対外債務の原因となりました。80年代にはこのような政策が他のラテンアメリカ諸国にも広がり、人びとの生活に大きな影響を与えました。その反動か、ほぼ21世紀に入ったあたりから、ベネズエラをはじめとして、反ネオリベラリズムを掲げる政権が次々に誕生し、これらの運動は体制側の政策と共存しうるものになったのです。
 さて、これはお読みいただけばわかることですが、本書はひとつの教義や主張を押し付けるようなところがなく、さまざまな事例(=素材)および考え方(=道具)を提供し、その活用方法については読者に任せているのが大きな特徴です。訳者自身は特定の運動にかかわったことのない、いわば素人なので、初めはややとまどいましたが、むしろ訳者のような既存の運動やことばづかいに違和感を感じてきた人たちにこそ、このようなガイドが必要なのではないかと考え、明石書店編集部の大村智さんのお力を借りながら、難しい思想をなるべくわかりやすく伝えたいと気をつけながら訳しました。しかしながら、訳者の力不足のため誤った解釈をしている部分があるかと思います。もしそのような箇所がありましたら、お知らせいただければ幸いです。
 最後になりますが、本書を訳しながら思い出していたのは、20年前、まだ軍政下にあったチリから来日した街頭音楽家の「貧富の差が拡大した社会に生きていて一番つらいのは、子どもたちに希望を与えられないことだ」という言葉です。当時はピンとこなかったこの言葉が、今では実感をもって迫ってきています。しかし、悲観的なことを並べ立てても仕方がありません。本書には、いまの世界のあり方や、これまで「よし」とされていた生き方に対して、もっと別の世界のあり方や、別の生き方を求めて行動を起こした(起こさざるをえなかった)人たちのことが語られています。原著で紹介されていた書籍やサイト(原著者と相談の上、リンク切れのものは削除、また差し替えたものもあります)に加え、巻末には日本語でのアクセスが可能な書籍、サイトのリストも載せてあります。こちらは、本書の主張とは直接かかわりのないものもありますが、今の日本社会を生きる私たちに、もうひとつの生き方を提示してくれていると訳者および編集部が考えて選定した文献やサイトです。どうぞこれらを参考にして、自分にできることを考えてみてください。「もうひとつの世界」への入り口はどこにでもあるのです。

 2007年10月  伊香祝子

著者プロフィール

エセキエル・アダモフスキ(アダモフスキ,エセキエル)

 1971年、ブエノスアイレス生まれ。反資本主義の活動家・作家。アルゼンチンや諸外国の日刊紙や雑誌に記事やエッセイを執筆。政治、アカデミズムの分野のさまざまなワークショップや集会に講師として参加している。1998年ブエノスアイレス大学卒業(歴史学修士)、2004年ロンドン大学で博士号を取得。

イラストレータ連合(イラストレータレンゴウ)

 本書にイラストを描いたのは、レオ・ロッコ、ディエゴ・ポサダス、パブロ・ロサレス、マグダレナ・ヒリク、オラシオ・アブラム・ルハン、マリエラ・スカファティらのビジュアル・アーティストたちで、いずれも2001年12月の民衆反乱を契機に高まった政治・社会運動のなかで結集したシルクスクリーン工房のメンバー。イラストレータ連合は、あらゆる種類のデモでイメージ制作を担当し、芸術的かつ政治的な支援を行っている。

伊香 祝子(イカ シュクコ)

 1969年生まれ。慶應義塾大学等非常勤講師(スペイン語)。東京外国語大学大学院修士課程修了。専攻はラテンアメリカ民衆文化論。論文に「うたわれる詩——北西アルゼンチンのカーハのうたをめぐって」(『口承文藝研究25号』日本口承文藝学会、2002年)。共著『地球を旅する地理の本7 中南アメリカ』(大月書店、1993年)など。

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