発行:明石書店
この版元の本一覧
B5判 252ページ 並製
定価:3,200円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2661-0 C0037
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年10月
書店発売日:2007年10月29日
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OECD-PISA2003年調査をもとに、移民生徒の学力と彼らを取り巻く社会的背景、家庭での使用言語のほか、学校に対する態度、学習の動機、学習ストラテジーとの関係について深く分析する。さらには、各国の教育制度をベースにした移民統合の施策について詳しく検討する。
目次
日本語版序文
監訳者解説
序文
要約
読者のために
第1章 OECD諸国における移民統合と移民受け入れの歴史
序
第1節 移民と統合
第2節 移民受け入れの歴史および移民統合の過程
第3節 各国における移民の位置づけと移民カテゴリー
第4節 本報告書における研究課題
第5節 PISA調査における移民の子どもの位置づけ
註
第2章 PISA2003年調査にみる移民の子どもの学力
序
第1節 分析対象国における移民の子どもの学力
第2節 移民の子どもの学力と家庭での使用言語
第3節 男女別にみた移民の子どもの学力
第4節 移民の出身国からみた子どもの学力
第5節 小括
註
第3章 移民の子どもの背景的特徴、数学的リテラシー、学習環境
序
第1節 移民家族の教育的・社会経済的背景
第2節 数学的リテラシーと親の教育的・社会経済的背景
第3節 移民の子どもの数学的リテラシーに影響を与える背景的特徴
第4節 学校内および学校間における得点差とその背景
第5節 移民の子どもとネイティヴの子どもが通う学校の特徴
第6節 小括
註
第4章 移民の子どもの学習特性
序
第1節 数学への関心と意欲
第2節 自分自身に対する見方
第3節 数学にかかわる情意的側面
第4節 学校に対する態度と意識
第5節 移民の子どもとネイティヴの子どもの学習特性にみられる差
第6節 小括
註
第5章 移民の子どもの言語能力獲得のために——補足調査からわかる各国の施策——
序
第1節 移民の子どもの言語能力獲得のために国が行う施策
第2節 成人移民の公用語能力獲得をめざした施策
第3節 就学前教育および初等教育における言語能力調査
第4節 就学前教育における移民の子どものための言語支援
第5節 初等教育および前期中等教育における移民の子どものための言語支援——国際比較——.
第6節 初等教育および前期中等教育における言語支援——各国の施策の概要——
第7節 移民の子どもの母語能力を向上させるための補習授業
第8節 移民の子どもの在籍率が高い学校に対する特別な措置.
第9節 小括
註
参考文献
付録A 調査方法
付録B 第1章〜第4章までの統計資料
付録C PISA調査の貢献者リスト
訳者あとがき
監訳者・訳者紹介
前書きなど
序文
移民の受け入れや統合をいかに円滑に進めるかは、移民受入国が社会としての結びつきを確保するうえで不可欠なテーマである。国が移民に配慮した政策を行えば、移民は貴重な人的資本となり、経済的な幸福や文化的な多様性をもたらすことになる。にもかかわらず、移民の統合は、いまなお政策担当者にとって容易なことではない。今日、移民の子どもたちにはどのような困難が存在するのであろうか。学校は、子どもたちの困難をとり除くことに役立っているのだろうか。また、移民の子どもが移民受入国において成功することを手助けしているのだろうか。
『移民の子どもと学力 社会的背景が学習にどんな影響を与えるのか〈OECD-PISA2003 年調査 移民生徒の国際比較報告書〉』と題するこの報告書は、OECDが実施している生徒の学習到達度調査(Programme for International Students Assessment: PISA)のデータにもとづいている。PISAによれば、移民の子どもは学習に対して意欲が高く、学校に対しても前向きな姿勢を示している。しかし、こうした高い学習特性があるにもかかわらず、移民の子どもの学力は、問題解決能力だけでなく、学校の主要な教科である数学、読解、科学においても、ネイティヴの子どもに比べ著しく低いことが示されている。こうした移民の子どもとネイティヴの子どもの学力差が著しい国は、オーストリア、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、オランダ、スイスであり、逆に学力差がほとんどない国は、マカオおよび伝統的移民国家であったオーストラリア、カナダ、ニュージーランドの4カ国である。とくに注目されるのは、多くの国において少なくとも移民の子どもの4人に1人が、PISA2003年調査が定義した基本的な数学的スキルに到達していないという事実である。基本的な数学的スキルを身につけていない移民の子どもは、将来職についたり、一般的な生活を送るうえで、かなりの困難に直面するだろう。
また、各国の移民の子どもの学力には大きな差があっても、17の分析対象国・地域すべてにおいて、移民の子どもの学習意欲がネイティヴの子どもに比べてとりわけ高くはないが同じくらいの高さを示したことは、注目すべきことである。こうした結果は、政策担当者にとってきわめて重要な事実であるといえよう。なぜなら、そもそも学校は、強い学習への意欲を育て、教育システムにおける移民の子どもの学業の成就を助けるものだからである。
この報告書では、移民の子どもの社会的背景や家庭での使用言語という観点からPISAの調査結果を分析している。これらの調査結果から、移民の子どもとネイティヴの子どもの学力差が単に子どもの特性によるものではないことがわかる。またこの報告書は、移民に至る経緯や各国の移民政策についてもまとめている。これらから、移民の子どもとネイティヴの子どもの学力差が比較的小さい国、もしくは、移民2世の子どもとネイティヴの子どもとの学力差が移民1世の子どもとネイティヴとの学力差よりも小さくなっている国においては、明確な目標と基準を備えた言語支援プログラムが提供されていることが多いことがわかるだろう。
なお、この報告書は、数学、科学、読解の知識・技能に焦点を当てたLearning for Tomorrow’s World—First Results from PISA 2003 と子どもの問題解決能力を分析したProblem Solving for Tomorrow’s World—First Measures of Cross-curricular Competencies from PISA 2003に続くものである。
著者プロフィール
OECD(オーイーシーディー)
経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development)は、民主主義を原則とする30カ国の先進諸国が集まる唯一の国際機関であり、グローバル化の時代にあって経済、社会、環境の諸問題に取り組んでいる。OECDはまた、コーポレート・ガバナンスや情報経済、高齢化等の新しい課題に先頭になって取り組み、各国政府のこれらの新たな状況への対応を支援している。OECDは各国政府がこれまでの政策を相互に比較し、共通の課題に対する解決策を模索し、優れた実績を明らかにし、国内および国際政策の調和を実現する場を提供している。
OECD加盟国は、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本、韓国、ルクセンブルク、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国である。欧州委員会もOECDの活動に参加している。
斎藤 里美(サイトウ サトミ)
1960年静岡県生まれ。1982年お茶の水女子大学文教育学部卒業。1990年一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程満期退学。現在、東洋大学文学部教授。専門は、教育目標・評価論、教育課程の国際比較。主な著書に、『韓国の教科書を読む』(編著・監訳、明石書店、2003年)、『シンガポールの教育と教科書 多民族国家の学力政策』(編著・監訳、明石書店、2002年)、『日本語教育の理論と実際』(共著、大修館書店、1993年)、論文に「学習ストラテジーは学習者を幸福にするか」(『日本語教育と日本語学習』、くろしお出版、1999年)などがある。
木下 江美(キノシタ エミ)
1979年島根県生まれ。2003年一橋大学社会学部卒業。現在、一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程在学中。専門は、教育思想史、ドイツ現代史、社会化研究。主な論文に、「転換期のライフヒストリー研究の枠組みに関する一考察 —フレルマンの社会化概念の検討から—」(『<教育と社会>研究』第15号、2005年)、「転換期の歴史教育と『よりよい社会』の希求—旧東独教育学者のライフヒストリーから—」(『比較教育学研究』第34号、2007年)などがある。
布川 あゆみ(フカワ アユミ)
1983年京都府生まれ。2006年上智大学文学部卒業。現在、一橋大学大学院社会学研究科修士課程在学中。専門は、教育社会学。ドイツの終日学校を事例に、子どもの教育をめぐる学校と家庭との任務分担関係の変容について考察している。
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