発行:明石書店
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A5判 320ページ 上製
定価:4,200円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2660-3 C0336
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年11月
書店発売日:2007年11月06日
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日本、台湾、韓国、タイ、カンボジア5か国について、民主化をもたらす社会運動の内実と、その市民社会との関連、それぞれの国において市民社会がいかなる新しい国家ガバナンスを形成しつつあるかを分析する、国際共同研究に基づく台湾研究叢書の第二巻。
目次
序 説 東アジアの社会運動と民主化——市民社会の持つ可能性
第1部 台湾と韓国
第一章 台湾の社会運動、市民社会、民主的ガバナンス
第二章 新仏教集団のダイナミクス
第三章 原住民族運動と多文化社会の形成
第四章 韓国社会運動の動員戦略と社会政治的特徴
第2部 東アジア三国の外国人労働者問題
第五章 外国人労働政策に関する韓国世論——NGO、労働組合、雇用主団体
第六章 台湾にみる外国人労働者・配偶者とNGO
第七章 日本における外国人研修生とNGOの提言・支援運動
第3部 東・東南アジア
第八章 民主化動因としての東アジア中間層の実態——アジア・バロメーターからの知見
第九章 タイにおける市民社会と急進的環境保護運動の将来
第一〇章 カンボジアにおける民衆主体のコミュニティ発展とガバナンス
あとがき
索 引
執筆者・訳者紹介
前書きなど
あとがき
近年の東アジアでは経済成長と同時に大きな社会変動が起こっている。それは、市民社会の成長と発言権の増大、そこから起こる政治の民主化である。
本書は、本年三月「台湾研究叢書」の第一巻として刊行された『東アジアの市民社会と民主化——日本、台湾、韓国にみる』の姉妹編であり、早稲田大学台湾研究所と台湾中央研究院アジア太平洋地域研究センターが最近三年間に行った国際共同研究の成果である。
前書が、主として日本、台湾、韓国の民主化と市民社会の関係を理解すべく、それぞれの国においてその関係を調べたのに対し、本書は、市民社会を形成する社会運動がどのようなものか、何をめざし、いかなる目的を達成しようとし、それが民主化とどう関わったのかを、前記東アジア三国、及び東南アジアのタイ、カンボジアについて調べている。これらの論考は、二〇〇四〜〇六年間に、台北、ソウル、東京で開かれた数次のワークショップに提出された論文の中から、精選して集められたものである。
本書ではまず第1部で、台湾と韓国での社会運動と市民社会、民主化の関連を検討している。台湾については、環境運動等、市民生活に直接関わる社会運動がどう開発独裁政権に対抗しつつ民主的なガバナンスを導いたか、また、一見政治と関わりのないように見えながら隆盛を誇る新仏教諸流派が、いかに大きな社会変動の一部をなしているか、そして、今日台湾を急速に多文化社会へと導いている原(先)住民の運動がいかなる論理、ダイナミズムを持っているか、をそれぞれ分析した。台湾民主化の諸相を理解していただけるものと思う。韓国については、ここ十数年の急速な民主化を導いた社会運動、市民社会の実体を克明に調べている。前書『東アジアの市民社会と民主化』の第九章・金 仁春「市民社会と民主化」と併せて読めば、韓国市民社会の特徴、ダイナミズムが立体的に浮かび上がってくると思われる。
本書のユニークな点は、第2部で、これら東アジア諸国(韓国、台湾、日本)で現在グローバリゼーション下で急速に増えつつある外国人労働者に対する政策を比べ、市民社会がこれら外国人出稼ぎ労働者にどのような態度をとっているか、を分析して、市民社会のグローバリゼーション下での成熟度を検討していることである。どこでも、外国人導入の主導者は、当然のことながら、労働力不足を抱える雇用主層で、政府はこれら雇用主層の要求に答える形で、おずおずと外国人を受け入れる政策を小出しにしている。また、どこの国でも「危険、きつい、汚い」の3K労働は、これら外国人労働者に委ねられる傾向がある。だが、そこから差別や偏見、不法就労や人権蹂躙等、市民社会も密接に関わっている社会摩擦問題が起こる。しかし、その反面、これら外国人定住者の人権問題に敏感で、連帯の手をさし伸べようとするNGOや住民団体も、幸いなことに少ない数ではない。これらNGO側の課題は、今後国境を越えて連携を強め、移住者の人権を保障するような地域人権機構等を準備することだろう。既に韓国や東南アジアの主要国では、人権委員会が立ち上げられている。日本や台湾で人権委員会が市民参加の下で成立し、NGO活動がこれら人権委員会と連携して、ASEANの人権機構とも連動していくことが、国境を越えた経済グローバル化の進む東アジアで、環境協力とともに、地域公共空間の民主化を強める道程となるだろう。
また、本書第3部では、経済成長が工業化、都市化を導き、それが都市中間層をふくらませ、民主化の原因となっているという通説を再検討している。園田らの調査によれば、都市中間層は大衆、消費者、ナショナリストとして現体制を支える要因ともなれば、より広い価値観に自らを開き、体制批判的な行動をとる場合もある。「中間層増大=民主化」と一概に結論付けることはできない。この点では、第1部の台湾、韓国についても、単なる中間層増大ではなく、意識的な民衆運動の展開が民主化にとって重要であることを示したが、東南アジアについても同様のことが言える。つまり、タイ、カンボジアにおいて、民主化はいわゆる「新中間層」(ホワイトカラー、技術者、知識人、学生等)の参加に負うところが多いが、それは民衆運動と結びつかなければ実体化しないことが示されている。タイの民主化では、農村での住民たちの環境保全、住民立ち退き反対、開発反対運動に、都市のNGOや知識人が参加していったことが、軍政の批判、一九九七年憲法への流れを作り出した。二〇〇六年九月の軍事クーデターも、汚職批判、国民投票、新憲法制定という文民政権復活へのレール作りのコースを歩んで初めて世論に認知されており、一方的な軍事独裁への復帰は難しくなっている。また、カンボジアでは、上からの国際機関、政府の開発独裁型の「貧困削減」「コミュニティ発展」戦略に対して、農村住民たちが伝統的な仏教寺院コミュニティを基盤として、内発的な発展と参加により、自ら貧困をなくしていく積極的な事例が示されている。これは国や地域の公共空間の草の根レベルからの民主化の例である。
このように見ると、今日、東・東南アジアで進行している民主化は、グローバル化、経済成長、工業化、都市化、価値観の変化、民衆の人権保障と強化運動等、いくつかの次元での社会変化の複合的な産物であり、機械的に「経済成長=中間層増大=民主化」という図式では説明できない。つまり、国や地域で公共空間の民主化を意識的に求める人々の運動、そのための主体的な選択、即ち市民社会の出現と展開があって、初めて民主化が具体的に進行したのである。
著者プロフィール
西川 潤(ニシカワ ジュン)
1936年台湾台北生れ。早稲田大学政治経済学部及びパリ大学高等学術研究院卒。早稲田大学名誉教授。早稲田大学台湾研究所顧問。
[主な著書]
『世界経済入門』第3版(岩波新書)、『人間のための経済学』岩波書店、『社会科学を再構築する』『東アジアの市民社会と民主化』『連帯経済』以上明石書店、等。
蕭 新煌(シャオ シンファン)
1948年台湾生れ。国立台湾大学社会学科及び米国ニューヨーク州立Buffalo 大学社会学修士、博士。台湾大学社会学科教授。中央研究院アジア太平洋地域研究センター所長。国家文化芸術基金会理事。
[主な著書]
『台湾社会文化典範的転移:台湾大転型的歴史和宏観記録心』台北:立緒文化、『新台湾人的心』台北:月旦出版、等。The Changing Faces of the Middle Classes in Asia-Pacific (editor), Taipei: CAPAS, Academia Sinica.
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