発行:明石書店
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四六判 288ページ 並製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2623-8 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年09月
書店発売日:2007年09月20日
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紹介
日本ではじめて同一価値労働同一賃金原則(ペイ・エクイティ)を掲げて闘い、勝利判決を得た裁判の軌跡。男女の賃金格差、男性中心の企業社会のあり方に真正面から異議を唱える。人間としての労働とは何かをフェミニストの視点からわかりやすく伝える。
目次
はじめに
第1章 男女賃金差別裁判の提訴まで
1 入社から地方労働委員会闘争までの14年間
2 「女の労働」を徹底してなめた会社
3 地方労働委員会で闘った3年間
第2章 ペイ・エクイティを求めて
1 ペイ・エクイティとの出会い
2 京都地裁における3年間
3 京ガスでのペイ・エクイティ実践——森ます美教授「意見書」の提出
4 ペイ・エクイティで勝ち取った京都地裁判決
第3章 長かった控訴審
1 厚顔無恥にも控訴した会社
2 裁判官を選べない私たち——裁判官の当たり外れで人生が決まる?
3 弁護団と原告の奮闘
4 突然の和解勧告——京ガス事件「勝利和解」へ
第4章 ペイ・エクイティを女たちの手に
1 京ガス裁判闘争の意義
2 ペイ・エクイティと女性運動——日本の労働運動の課題
3 ひとりの女として
第5章 京ガス倒産争議
1 男女賃金差別是正の交渉から新たな争議へ
2 ついに職場占拠へ
3 男女賃金差別を含め、全面的に勝利解決
〈『きり通信』より〉
管理職のレベルは私と「同等」!/存在しない賃金体系/改正均等法・労働法で本当に男女が平等になるのか?/原告・被告双方から申請されている会社側証人のプロフィール/文書提出命令に対する抗告事件に高裁の決定が出る!/反対尋問当日/倒産の危機での職場の近況/証言に立つ直属管理者のKさん、大丈夫ですか?/邪悪さだけが処世術?/男の「沽券」とは?/増え続けるサルの群/「卓越」した能力とは何か/「ここだけの話」/「負けるかも」と思ったことは一度もない/原告、ネコになる/「切られた首」を取り戻し、「奪われた仕事」を奪い返す/差別を解消するための大きな活路/スローガンで終わらせないために/豊かさとは程遠い人生/リストラの嵐/裁判官の「公正」とは何か/「なまったナタ」/「ひとつの生き方」として/悪夢のような/もしも屋嘉比が男だったら……/確信犯の裁判官/人権獲得は世界中の人々の要求/仮にも私は原告です/「泥」は誰が被った?/理不尽さに慣れる力/ロサンゼルスのサマーセミナーに参加して/倒産街道/私を避けてきた人たち/スウェーデンの男女平等/裁判官任官拒否事件について思うこと/ようやく結審/何に勝利し、何に敗北したのか
〈コラム〉
映画の話1/映画の話2/映画の話3/イラク攻撃に思う/テロは誰にとって「脅威」なのか
おわりに
資 料
1 訴 状
2 陳述書
3 京ガス男女賃金差別事件に関する意見書——同一価値労働同一賃金原則の観点から(森ます美)
4 京都地裁判決
参考文献
前書きなど
はじめに
男女平等の実現を求める運動は、近年世界中で巻き起こり、日本でも90年代以降男女賃金差別事件として全国各地で提訴が相次いだ。女性たちの仕事に対する余りにも不当な評価と処遇差別に対する改善要求の闘いである。ほとんどの事件は原告に勝利をもたらし、男女の均等待遇は当然という認識が社会的に広がりつつある。
しかしその経過を見ると、対企業だけではなく、男性中心に組織された労働組合の妨害をも乗り越えなければならないという女性たちの困難な道のりがあった。京ガス男女賃金差別裁判を闘った私もまた、入社以来企業内労働組合の非情ともいえる組織的な妨害を受けながら、長い道程をたどり、ようやく勝利に至った。合わせて法曹界のジェンダーバイアスに満ちた時代錯誤的な実態の中で、裁判闘争は企業との闘いだけではなく、裁判所とも対峙しなければならないという大きな試練もあった。
この本は男女賃金差別裁判闘争の報告ではなく、ひとつの物語である。職場での苦闘や組合活動あるいは裁判闘争や他の運動を通じての経験、また子育てを含む生活者としての生き様を伝えることによって、様々な人たちとの関係性の中で社会のあり方を問い、より人間らしい生活を追求するための道筋について、読者のみなさまと共に考えていければという「希望」を綴ったものである。
京ガス事件は、「同一価値労働同一賃金原則」(ペイ・エクイティ)を真っ向から掲げて闘った裁判であり、京都地裁では日本で初めて「同一価値労働同一賃金原則」を実質的に認めた勝利判決が出された。控訴審では残念ながら勝利的和解という形で解決したが、一審の勝利判決はそのまま残った。
同一価値労働同一賃金原則(Equal Pay for Comparable Worth)は略してコンパラブル・ワースとも呼ばれるが、本書では、京ガス裁判において、カナダ・オンタリオ州のペイ・エクイティ(Pay Equity)法の手法を活用したことからペイ・エクイティとしている。
ペイ・エクイティを定めるものとして、ILO100号条約(51年採択、日本は67年批准)「同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約」があるが、2条1で「各加盟国は、報酬率を決定するために行われている方法に適した手段によって、同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬の原則の全ての労働者への適用を促進しなければならない」、90号勧告−5では、「労働者の性別にかかわらない職務分類を行うため、職務分析またはその他の手続きによって仕上げるべき仕事の客観的評価の方法を確立すべきである」と規定されている。
また、国連の女性差別撤廃条約11条1項(d)は「同一価値の労働についての同一報酬(手当てを含む)及び同一待遇についての権利並びに労働の質の評価に関する取り扱いの平等についての権利」を男女同一の権利として保障している(79年採択、日本は85年批准)。
EU諸国では、「ローマ条約119条(男女同一賃金の原則)は、同一労働または同一価値労働に対し、性別によるいかなる差別も存在してはならないことを意味する」とのEC指令(75年)に基づき各国で国内法が整備された。
第4章でも述べるが、ペイ・エクイティは差別是正のための運動の手法であり、ベースは、典型的な女性職の職務と、典型的な男性職の職務双方の分析と評価により、公平で公正な賃金に是正すること、つまり、性別職務分離による性差別賃金を是正するために、異なる職務(職種)における職務評価を目的とした。しかし、同じ職務でも、雇用形態(正社員の男女別コース別制度や、パート、非常勤、派遣などの非正規雇用)が異なることで賃金格差が合法化されるかのような今日、ペイ・エクイティ運動は性別を問わず、非正規労働者の均等待遇に貢献できる手法として重要である。とりわけ、最低賃金を基準に外部労働市場によって決定される非正規労働者の賃金是正に効果的な手法といえる。
職務賃金を基準とする欧米では、職務・仕事に関連する客観的評価項目が重視されているのに対し、日本の評価要素は「能力・態度・意欲・性格」、また「忠誠度、協調性」などの“情意考課”が優先し、主観的である。企業が格差の根拠として使う、いわゆる職務遂行能力とは、人に対する主観的評価を基準とする。
職務評価制度では、1技能、2精神的・肉体的負担、3責任、4労働環境という4大ファクター(要因)により、あくまで性に中立に分析し、客観的に評価する。アメリカやカナダでは80年代から均等処遇の法律を整備し、公共部門を中心にペイ・エクイティ運動を広げて職務賃金を確立した。またEU諸国ではすでに均等待遇の実践に成功している。
京ガス事件をはじめ全国の男女賃金差別裁判の大半は原告が勝利したが、日本では男女賃金格差は解消されないばかりか拡大している。男性の平均賃金水準を100とした時の女性の平均賃金水準は、一般労働者では65・7%であるが、パートを含む全雇用者でみると51・3%で(04年)、ジェンダー格差はより広がっている。
07年現在1200万人以上がパート労働者として働き、53%の女性が非正規雇用である。95年に日本経営者団体連盟が出した『新時代の「日本的経営」』による、数%の正規労働者とわずかの専門職以外の圧倒的多数の労働者を非正規雇用として不安定な立場に固定化しようとする財界の計画は着々と実践され、もはや新卒でも定職に就ける人が少ないという由々しき実態がある。一握りのリッチな人の陰に、ワーキング・プアの増大や非正規雇用における様々な処遇差別が、社会現象として蔓延している。
ペイ・エクイティ運動は、「現在の賃金制度を抜本的に問う」という視点から、男女賃金差別の是正だけではなく、非正規雇用が拡大する日本の企業社会、また世界中の労働者の労働実態を改革できる重要な切り口であり、有効な手段のひとつだと思う。読者のみなさまには、巻末278ページの森ます美教授の「意見書」を参考に、是非この原則や手法に精通され、労働現場で活用して頂きたいと心から願うところである。
欧米諸国の実践から見ても、格差拡大に歯止めをかけ、若い人たちが希望を持てる社会に近づけることは決して夢ではない。ペイ・エクイティ運動は、フェミニズムの視点から既存の労働運動総体に風穴を開ける運動であり、人が人として生きるための「均等社会の実現」は世界の潮流であることを確認し、今後の運動につなげていきたい。
京ガスは、06年8月、突然「事業閉鎖」を通知し、その後私は半年間の倒産争議に明け暮れた。この争議は20代から60代までのそれぞれの歴史を持つ労働者が、労働組合員として連帯し、団結すれば必ず勝てるという原則に則った極めて優れた闘いだった。半年間の倒産争議の全容を詳細に語ることは紙面の都合上できかねるが、エキスの部分だけでも最後にご紹介したい。京ガスは、06年11月17日に会社解散し、11月30日には従業員全員が解雇された。今や存在しない会社ではあるが、私自身の男女賃金差別事件をはじめ貴重な活動が、ごく小さな職場で闘われ、全国の運動にリンクしていったことをお知らせしたいと思う。
労働者が自らをエンパワメントさせる必須条件は、何よりも労働者ひとりひとりが自分自身の力を信じて行動することである。生活の厳しさから、個人の小さな思いやわずかの行動も、相互に信頼、尊重し合い、手を携え合うことで想像以上の大きな力になることを私たちは忘れがちだが、本書によって少しでも思い出し、何らかの糧にして頂ければ幸いである。
本書の発刊は当初予定より半年以上も遅れたが、前述したように、06年8月から07年3月までの倒産争議の中心メンバーとして全力投球していたことによる。
この本の第1章は、『働く女たちの記録 21世紀へ——次代を紡ぐ(公募編)』(00・11・23)「編纂・関西女の労働問題研究会」に応募し、入賞した文章を、また第5章は、『労働情報 718・9』(07・5・1)に寄稿した文章をそれぞれ大幅に加筆したものである。
また、第2章、第3章で多くの頁にわたって挿入した『きり通信』は、全46号発行されたもので、この中の「原告のひとりごと」から一部抜粋して掲載した。
裁判を提訴した直後の98年5月、「京ガス男女賃金差別裁判を支援する会 きりの会」が結成された。私が所属するおんな労組を中心とする仲間がこの裁判を支援し、社会的な運動にするために8年間活動してきたものである。事務局は8〜10名ほどで、『きり通信』の編集、発行を続けた。月1回会議を開き、裁判の度毎に弁護士を含めた交流集会で裁判の内容と方針などを共有してきた。また例年の総会では、全国の研究者や弁護士を講師にお招きし、講演会を開催した。全国に点在した260名の会員の会費(3600円/年)とカンパは裁判活動費用に充てた。また一審勝利判決後は『ペイ・エクイティの実践』(01年)というパンフ(「森意見書」と「判決文」)を出版し、広報活動に役立てた。
裁判闘争は、原告ひとりでは闘いきれない。全国の組織、NGO、個人など多数の仲間との共闘によって勝利を手にすることができる。「きりの会」の活動は、ペイ・エクイティ運動を推進するために貢献し、その尽力の大きさは計り知れない。事務局メンバーや会員のみなさんに、改めてお礼を申し上げたい。
「きりの会」という名前の由来は、私が提訴当時同居していた愛猫「きり」と、「男女差別はこれっきり」という思いを込めた「きり」との掛け合わせである。愛猫「きり」は、提訴から半年後の98年10月5日、満月の夜に出かけたまま行方不明になった。『きり通信』の表紙を飾ってきた「魔女っこきりちゃん」は、この本では裏表紙に登場している。
8年間発行された『きり通信』の内容は濃く、様々な分野の人たちが、傍聴の感想をはじめ京ガス闘争への思いや温かい激励を寄せてくださった。紙面の都合で紹介できないことが残念である。
本書に収録されている『きり通信』の「原告のひとりごと」は、ほぼ毎号書いてきた。いつも時間に追われ、編集ギリギリに間に合わせたもので、本当に拙い「つぶやき」にすぎない。しかし、原告が裁判闘争の中でその都度何を感じ、考えながら苦闘してきたかの軌跡を少しは理解して頂けるのではないかと思う。裁判闘争の8年間に、何度も繰り返した思い、あるいは政治状況への意見や映画評など思い付くままに書き記したもので、原告としての率直な心の内や、裁判闘争に直結した職場の状況報告としてお読み頂きたい。
2007年9月
関連リンク
働く女性の人権センター いこ☆る
均等待遇アクション21京都
働く女性の全国センターACW2
著者プロフィール
屋嘉比 ふみ子(ヤカビ フミコ)
1981年(株)京ガスに入社。1998年4月、京都地裁に同一価値労働同一賃金原則(ぺイ・エクイティ)を求めて提訴。2001年9月、日本で初めて同一価値労働同一賃金原則を実質的に認めた勝利判決を勝ち取る。2005年12月、大阪高裁での控訴審は勝利的和解で解決した。2006年8月から京ガスの倒産争議に関わる。2007年2月、倒産争議は全面的に解決。
現在、働く女性の人権センター いこ☆る、均等待遇アクション21(大阪・京都)、コミュニティ・ユニオン関西ネット、全国ネット、働く女性の全国センターACW2などの運営委員として活動中。
※版元より営業日2~5日でお届けします
※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカード(VISA、MasterCard、DC、JCB、AMEX、Diners、Nicos、UFJ)がご利用になれます
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