個人・家族・性の「やさしい地平」へ多様なセクシュアリティとジェンダーの公正
田中 弘子:編著
発行:明石書店
この版元の本一覧
A5判 128ページ 並製
定価:1,200円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2572-9 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年06月
書店発売日:2007年06月28日
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紹介

人間と人間関係の根本に関わり,様々な側面と可能性を持つセクシュアリティとジェンダーの問題を,性や家族,個人といった様々な角度から解説し,そこに起こる暴力や虐待について,回復と前進に向けて再考する。性をめぐる概念をやさしい地平へと開く一冊。

目次

まえがき
序 まず知っておきたいこと
 1 個人・家族の選択と多様化
 2 人間の「性」と「生」が生かされる
 3 体の性と性自認
 4 ジェンダーの公正へ
1 「家族」は変化する
 1 家族生活の歴史─二つの節目
 2 「近代家族」と子どもたち
 3 「主婦」の誕生
2 多様な個人・家族と諸課題
 1 1960〜70年代以降の多様化
 2 家族の概念は拡大する
 3 事実婚と通い合う結婚、継家族
 4 単身、非婚シングルマザー
 5 近代家族後の諸問題に向き合う
3 多様な性と生
 1 同性愛
 2 トランスジェンダー
 3 トランスセクシュアル
 4 トランスベスタイト
 5 インターセックス
 6 性と生の多様性
4 多様な性と危機への対応
 1 性と暴力
 2 セクシュアリティの危機を避ける
 3 買売春
 4 どのような支援、資源が有効か
5 ジェンダーの公正へ
 1 近代社会と性役割について
 2 女性運動と女性差別撤廃の軌跡
 3 男性学と男性運動
 4 ジェンダーの公正のための学びと方法
6 共生とコミュニティをつくる試み
 1 共同保育
 2 自助という考え方
 3 エイジングと共生
Column コラム
 1 モソ族・ナシ族の母権的社会と通い婚
 2 子ども組のしくみ
 3 小説と映画にみる異性愛主義の抑圧
 4 「性同一性障害」と学校
 5 性別の決定について
 6 レインボーカラー、レインボーフラッグ
 7 ジェンダー・エンパワメント測定
 8 共同保育からグループ保育へ
あとがき
資料 多様な性とジェンダーに関わる法

前書きなど

まえがき
 経済・政治のグローバリズムに深く関連して、侵略や戦争、悲しい事件が続いています。人間たちは、何故このように、強い者から弱い者へ武力や暴力を行使するのでしょうか。歴史や習慣のなかで培われた力の構造があり、日常生活のなかでも、いじめや虐待、差別など、暴力的な行為が際限なく起きています。これを食い止めていくには何が必要でしょうか?
 隣接する大学では「女性学」講座があり、3年前に講師の依頼を受け行ってみると、総勢400人余の学生が廊下にあふれて待っていました。男子学生も多く、これは単に女性学ではなく「『女性学・男性学』講座になるかな」と思いました。それに、シラバスの副題は「多様なセクシュアリティとジェンダーの公正」としていましたから、今、私が若ものたちに伝えたいことと、若ものたちが授業でちゃんと学びたいことが一致していたという驚きと歓びがありました。受講生は年々少しずつ増え、そのことにもまして、毎時間何処か何か楽しく、質問・応答がくり返されるという出会いはそうしばしば起こることではありません。この種の授業の状況は、埼玉県においても、中国でも米国でも、満員、座りきれない学生もいるということを伝え聞きました。
 日本では、1960年代後半から数十年の間に、理論・実践両面で女性たちのめざましいとり組みがありました。90年代には、ジェンダー公正に向けた法制度は少しずつ整い、高校家庭科の共修もやっと実現しました。みんなが本音で言葉を交わし合える「やさしい地平」が築かれつつあるんだなあ、という実感をもってきています。
 この本の趣旨は次のようなことです。
 人間は年齢や立場、学歴にかかわらず、挫折、失敗、未知、あるいは暴力や差別との遭遇を経験します。人間の性と生に関わること、それに伴って起こること、そのなかにも予知できない、あるいは未知の出来事がたくさんあります。人間の生に直結する性との関わりにおいて、人間関係や家族、ジェンダーの視点、そこに起こる暴力や虐待について、人間の回復と前進に向けて、ともにしっかり考えを深めようとするものです。問題を少しでも鮮明に、また自分に合う解決や回復の方法は何か、手を携えて模索するものです。
 この本は、多くの人びとと読者たちに、次のことを呼びかけます。
 第1に、人間と人間関係の根っこに関わる、ヒューマン・セクシュアリティとジェンダーの問題と現実を、さまざまの角度からできるだけ正確に把握する努力をしていきましょう。
 第2に、柔らかで自由な「人間のセクシュアリティ」は、個々の人間の生き方の全体と関わり、さまざまな側面と可能性をもっています。
 もし、あなたが心の奥底で「人生でこんなに大変な困難に出遭ったことはない」と感じた時、その瞬間にこそ「一つの出口」を見出すきっかけと道すじがあり、必ず手を結び合える人が見つけ出せることを忘れないで!
 第3に、ジェンダーの不公正によって起きる性的な暴力や虐待、また、妊娠中絶、買売春、HIV感染などの問題に注目し、今こそじっくりとわがことと同じように、それぞれの重要な課題に向き合いましょう。

著者プロフィール

田中 弘子(タナカ ヒロコ)

家族研究、家政教育専攻。愛媛大学教育学部教授。
早稲田大学第一文学部(西洋哲学)卒業、江戸川区立小松川第二夜間中学校、東京都立井草高等学校定時制・同府中東高等学校などの教員。並行してお茶の水女子大学大学院家政学研究科(家族関係)修士を経て、岩手県立盛岡短期大学などの教員、現職。
主な著書に、「社会によって育てられた子ども」ほか(『新しい子ども学』第1・2巻 海鳴社、1982〜84年)、「シングルライフ」(山本直英編集代表 兼松左知子編集『さまざまな性──多彩な個の性愛』人間の生涯と性──ひとびとの生、いろいろな性 5大月書店、1994年)、「母子世帯・父子世帯の生活問題」ほか(湯沢雍彦『図説 家族問題の現在』日本放送出版協会、1995年)、「教科書に見る妊娠・出産・育児」(共著、『性と生の教育──human sexuality』No. 9あゆみ出版、1997年)、「多彩な生き方は子への財産」『子育て未来視点Book 下巻』(〈ちいさい・おおきい・よわい・つよい〉臨時増刊号ジャパンマシニスト、2004年)ほか。

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