発行:明石書店
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四六判 260ページ 上製
定価:2,600円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2531-6 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年05月
書店発売日:2007年05月14日
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紹介
在日外国人は200万人を超えここ15年で倍増。定住傾向も高まっている。だが外国人を住民として迎えているのか? 不就学児童,高齢者無年金等,問題は山積。「国民」ではなく「すべての者」の教育・福祉が保障される社会に向け,今〈国籍〉を考える。
目次
はじめに
1 日本という国──外国籍住民の視点から(田中 宏)
第1章 日本という国
第2章 日本国憲法と在日外国人
2 「帰化」を考える(李 洙任)
第3章 コリア系日本人として生きる
第4章 日本国籍取得後のアイデンティティ
3 「国籍」を考える(田中 宏)
第5章 植民地統治を支えた国籍
第6章 特別永住外国人の国籍取得問題
第7章 台湾人BC級戦犯の国家補償請求について
4 「在日」として生きる(李 洙任)
第8章 日本人と在日コリアン──異文化理解の観点から
第9章 日本社会で活躍する韓商たち──在日韓商の起業家精神
前書きなど
はじめに
戦後六二年を迎えた日本では、公共秩序の乱れや政治、社会、行政への無関心を個人主義の行き過ぎに原因を求め、教育現場における愛国心の強制が行われようとしています。二〇〇六年四月一二日、自民、公明両党は教育基本法改正に関する与党検討会において愛国心に関する条項案を「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」とすることで合意しました。
しかし、「国を愛する心」を法律で規定することは、国家によって愛国心が強要された戦前の国家主義を私たちに彷彿させます。二〇〇四年に、有事法制の一環として、民間防衛を規定する「武力攻撃事態等における国民保護のための措置に関する法律」、略して国民保護法が制定されました。その新法は諸外国の民間防衛システムを参考に制定されたにもかかわらず、「国民」という語が法律名に使われました。
他国では、civiliansやpeopleという言葉で保護される対象者を国籍にこだわらないすべての住民としています。それとは対照的に日本は「国民」という言葉に固執したために、計画概要にはわざわざ「保護される対象に外国人を含む」という記述を加えることになりました。しかし、その法律名を英語で表記するとなると、どうしてもその矛盾が露呈してしまいます。このように、「国民」という言葉に翻弄され、解釈に矛盾を感じる場面が、これからますます増えることが予想されます。「国民」という言葉が共生社会を実現する過程において、時には障壁になることを「国民」は理解しなくてはいけません。
本書では、日本における外国籍住民への処遇に焦点を置きながら、(1)日本人とは誰を指すのか、(2)グローバル時代における国籍のあり方、そして(3)国に対する帰属意識の三つのテーマに取組みました。「外国人」と「日本人」の線引きは国籍法に依拠しますが、国籍は、ややもすると性別と同様「天与のもの」と考えられがちです。しかし、一九八五年の国籍法改正によって、日本国籍取得の対象者の枠が拡大されたり、植民地時代の朝鮮人が「帝国臣民」として一方的に国籍を押し付けられたことからもわかるように、国籍は天与のものではなく、すぐれて人為的なものであることを私たちは理解する必要があります。
「国籍」をめぐるもう一つの誤解は、それが特定の国への全面的帰属を示す包括的な地位だと考えてしまうことです。しかし、これも一連の国際人権条約の批准により、内外人平等が実現し、日本国籍の有無を外国人排除の盾にすることはもはや通用しなくなりました。「国籍」はその地域に在住するすべての人にとって重要なテーマであり、「国籍」をキーワードにして歴史を振り返り、未来を展望することは日本人にとっても怠ってはならないことなのです。
(中略)
本書では、日本アジア関係史、ポスト植民地問題を専門とする田中宏と、教育学、異文化コミュニケーション、移民学を専門とする李洙任(リースーイム)によって学際的なアプローチで上記の三つのテーマに取組みました。前者は、戦後補償運動、指紋押捺廃止運動、在日定住外国人参政権運動などに参加し、三〇年以上にわたり、国家の営為によって個人の人権が軽視され、翻弄されてきた事象を告発し続けました。後者は、就職差別から逃避するために最初の帰化を試みますが、当時の帰化行政に慣行化されていた「家族ぐるみ申請」が障壁となり、失意の思いで移民する覚悟をもって渡米した経験をもつ在日三世です。二〇〇二年に日本国籍を取得していますが、イラン国籍の夫、アメリカ国籍の娘をもつという日本社会の均質化を破った家族独立国籍主義という家族観をもちます。「国籍という枠組みに捕らわれない文化空間」の創出に異文化理解の観点から取組んでいます。
第1部第1章では、今日、在日外国人をめぐるどのような問題があるのか概観していきます。第2章では、日本国憲法制定過程で消えた外国人の人権条項をめぐる経緯から、その原点を明らかにしていきます。昨年(二〇〇六年)の教育基本法改正論議や今日の憲法改正論議で、なぜ在日外国人の人権や教育を受ける権利に関する議論が抜け落ちているのでしょうか。
第2部では〈帰化〉について考えます。「帰化=日本人化」ととかくイメージされがちですが、帰化者のアイデンティティについてこれまであまり論じられてきませんでした。第3章では帰化行政の問題について、筆者(李)の帰化申請の経験から考えていきます。続く第4章では、帰化者の帰化後のアイデンティティの変容について考えます。在外コリアンの例も挙げながら、帰化者、国籍取得者に対する日本社会の処遇にどのような特徴があるのか考えていきます。
第3部第5章では、〈国籍〉について、いかに恣意的に解釈されたかを歴史を追って説明します。日本は戦前、植民地出身者を日本人「皇国臣民」としつつ、戦後(一九五二年)、一方的に日本国籍の喪失を宣告しました。外国人登録証の携帯が義務づけられ指紋押捺が求められる、日本のこのような戦後処理の一方性は戦後ドイツと比較しても際だっていることを指摘します。第6章では、今日議論されている特別永住者(旧植民地出身者)日本国籍取得緩和法案の問題点について考えます。第7章では、台湾人BC級戦犯の国家補償請求訴訟を取り上げ、他の事例とともに戦後補償における国籍差別は未だ解決されていないことを指摘します。
第4部は、日本社会に生きる在日コリアンたちのライフヒストリーを紹介していきます。日本人と同等の就業機会が与えられなかった在日コリアンは、周辺経済に職種を求め、多様なビジネスを展開しました。隙間産業でたゆみない起業精神をもちつづける在日韓商の事例や、日本の伝統産業と言われる西陣織が、在日コリアンの織工らによって支えられてきたことを紹介します。そして日本社会の産業構造の一部は、様々な在日外国人によって成り立っていることを考えていきます。
「国籍」をめぐる問題は、日本が多民族共生社会となる上で避けて通れない問題です。一方的な視点では解決できないこの複雑な問題を、多くの読者に関心をもっていただけるよう、コラムを挿みつつできるだけわかりやすく記述しました。
李洙任
著者プロフィール
李 洙任(リー スーイム)
龍谷大学経営学部教授。英語教育学博士。スタンフォード大学、ハーバード大学客員教授(2003-04年)。
日本のマイノリティに関する著書に、Japan’s Diversity Dilemma, iUniverse(共編著)、Exploring Japaneseness, Ablex(共著)がある。大阪市外国籍住民施策有識者会議委員。大阪市地域福祉推進委員会委員。
田中 宏(タナカ ヒロシ)
龍谷大学経済学部教授。日本アジア関係史、在日外国人問題。
主な著書に『在日外国人 法の壁・心の溝』(岩波新書)、『戦争責任・戦後責任』(共著・朝日選書)、『来日外国人人権白書』(共編・明石書店)、『日韓 新たな始まりのための20章』(共編著・岩波書店)などがある。
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