国際比較からみた日本の理科教育世界の科学教育
松田 良一:編著
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 208ページ 並製
定価:2,200円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2481-4 (4-7503-2481-7) C0037
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年12月 書店発売日:2006年12月26日
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紹介

グローバリゼーションの中で生き残りをかけて次世代の教育に力を注ぐ世界各国。一方,日本の教育現場は理数系教科の大幅な内容削減など,世界の基準から遠く離れつつある。将来の豊かな国民生活の保障のためには教育の充実こそ必要と訴える警世の書。

目次

はじめに(星 元紀)
第1部 世界の科学教育
 1 21世紀の理科学力を目指した教育改革を(小倉 康)
 2 世界の医学教育(香川靖雄)
 3 化学教育の国際比較(渡辺 正)
 4 アメリカの教育政策(西村和雄)
 5 高校「生物」教育の国際比較(松田良一)
 6 教科書の変遷から見た理数教科内容削減の歴史(筒井勝美)
 7 「2006年問題」とは何か——高校理科の教育課程の現状と問題(左巻健男)
 8 中国の科学教育(林 万雅)
 9 シカゴの公立高校におけるAP教育体験(酒井由紀子)
 10 ダラスの公立高校におけるAP教育体験(古谷美央)
第2部 「世界の科学教育」公開シンポジウムより
 11 2003年PISA調査の概要について(小泉英明)
 12 〈パネルディスカッション〉日本の科学教育を考える(下村博文・立花 隆・黒田玲子 他)
あとがき——諸外国との比較から日本の教育の問題点が見えてくる(松田良一)

前書きなど

はじめに
 21世紀はゲノムの時代といわれています。ヒトのDNAに書かれた全塩基配列の解読は1990年代に始まり、ついに2003年4月14日に全塩基配列の完成版が公開されました。そこにはヒトの全遺伝子の99%の配列が99.99%の正確さで含まれるそうです。しかし、DNAに書かれたゲノム情報が分かれば人間の本質まで分かるということはありません。人間の形成においては後天的に入ってくる情報が非常に重要であるのは明白な事実で、決してDNAを調べればどんな教育を受けるべきか分かるというような簡単なものではありません。
 教育とは世代から世代へある種の期待をもって行う行動であります。現在、日本では財政難を反映して科学研究や教育についても3年とか5年間の成果をすぐ求められることが多いのですが、本来、教育とはそういうものではなく、大変長く時間がかかるものであります。子供に投入した資本が自分の生きている間に戻ってくることを期待している親はいないと思います。そういう意味で財務当局者がよくいわれるように3年間で成果はどうだと問うことは本来、教育になじまないものであります。
 もう一つ指摘しておきたいことなのですが、科学技術創造立国を叫んでいる日本ではありますが、政府が支出している高等教育予算のGDPに占める割合は0.5%に留まり、米国の1.1%、英国の1.0%、OECD平均の1.2%に比べ大きく下回っていて先進国の中で最低位に属している事実です(「教育指標の国際比較」平成16年度版より)。そのため、わが国では高等教育における家計の自己負担率が世界的にもきわめて高く、家計の経済格差によって教育を受ける権利が阻害されている状況にあります。

 本書は2005年1月8日に東京大学教養学部で開かれた日本学術会議動物科学研究連絡委員会・日本動物学会・高等教育フォーラム共催シンポジウム「世界の理数教育」で議論された内容をもとにまとめたものです。本書の刊行にご協力いただきました講演者の皆さん、新たにご寄稿いただいた女子栄養大学の香川靖雄先生、同志社女子大学の左巻健男先生、国立教育政策研究所の小倉康先生に深く感謝いたします。本書を通じて国際比較の中から見えてくる日本の教育システムの現状と未来を考えていただければ幸いです。

2006年10月5日
放送大学教授
日本学術会議(第19期)動物科学研究連絡委員長
(社)日本動物学会前会長
星 元紀

著者プロフィール

松田 良一(マツダ リョウイチ)

1952年生まれ。現在、東京大学大学院総合文化研究科・教育学部助教授(広域科学専攻)。主な著書・編著に、『危機に立つ日本の理数教育』(共編、高等教育フォーラム監修、明石書店、2005年)、『百億の星と千億の生命』(共訳、カール・セーガン著、新潮社、2004年)、『どうする「理数力」崩壊——子どもたちを「バカ」にし国を滅ぼす教育を許すな』(共著、PHP研究所、2004年)、『分子生物学への招待』(鈴木範男・矢沢洋一・田中勲編、三共出版、2002年)、『日本の理科教育があぶない』(共編、学会センター関西/学会出版センター、1998年)、『英語論文セミナー——現代の発生生物学』(講談社サイエンティフィク、1996年)、ほか多数。

上記内容は本書刊行時のものです。
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