女性と子どもを支援するソーシャルワーク実践母子寮と母子生活支援施設のあいだ
須藤 八千代
発行:明石書店
この版元の本一覧
四六判 200ページ 並製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2475-3 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年02月
書店発売日:2007年02月06日
※送料は無料です
※版元より営業日2~5日でお届けします
※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカード(VISA、MasterCard、DC、JCB、AMEX、Diners、Nicos、UFJ)がご利用になれます
タグ: まだタグがありません

紹介

ソーシャルワーカーとして働いてきた著者の「母子寮」(現在の母子生活支援施設)に対する問題意識を手がかりに,職員や元入所者へのインタビュー,調査資料や文献などにより,母子寮を多面的にとらえ,ソーシャルワークとフェミニズムの視点から新たな母子寮像を浮かび上がらせた意欲作。

目次

序 章 「母子寮」という空間を問い直す作業
第一章 母子寮とソーシャルワーク実践
第二章 女性たちと母子寮——フェイクな生き方
第三章 母子寮という施設——その言説の歴史
第四章 母子寮のフィールドノート——中部地域を中心に
終 章 縦軸と横軸——フェミニズムとソーシャルワークの交点
あとがき

前書きなど

あとがき
 大学に籍を置くようになって、私は母子寮をこれまでとは違った目で見るようになった。福祉事務所の机を挟んで向かい合う、どこにも居場所がない女性と子どものために手続きを進める場所ではなく、学生の社会福祉実習を依頼する教員として訪ねることになったからだろう。本文にも書いたようにホームヘルパーと間違われたのはそのときのエピソードである。
 私はできれば“ホームヘルパー”と同じぐらい充分な時間をかけ、生活の細部に立ち会うような大切な役目を果たしながら、母子寮のフィールドワークをしてみたいと思う。そのような関わりの量と質がないと、ひとつのフィールドを書いたり解釈したりすることはできないのだというのが現場主義に惹かれる私の立場だ。
 しかし本書はそこまで踏み込んだものではない。私は「知ってはいる」が「知らない」中途半端な立場で、ともかくこれまでとは違った手法で迷いながらこの本を書き上げた。したがって各章は同じ母子寮を取り上げながら、さまざまに色が異なる。そのちぐはぐさは、私のなかの混乱を反映している。
 二〇〇一年に横浜を離れる頃、七〇年代に私が見て落胆したような母子寮の建物は大方、建て替えられた。また時に新しい母子寮が作られ、ソーシャルワーカーの仕事を支えてくれた。そこで働く知人は施設に新しい空気を持ち込み、生き生きと仕事について語った。ところが愛知県に来て学生と実習先である母子寮を訪ねたとき、私は過去に引き戻されたような印象をもった。それが「中部地域の地域特性」という言葉になって大学の研究費申請につながった。
 本書を見ればわかるように、中部地域の母子寮に関する部分は全体のごく一部である。それには私の時間的制約に加え、母子寮に関する研究方法の未熟さも関係している。また現場主義の私は中部地域だけではなく、北から南まで母子寮という施設を残らず見て歩き、そこで働く人、そこに住む人との出会いを経験してみたいというような“壮大な”欲望ももつようになった。そうしないと「地域特性」など語れないと思ったからである。
 そんな自問自答のなかから、今回は多くを見るのではなく多元的に見るという方法を選んだ。母子寮に関する決して多くはないが大切な本。地味に重ねられた提言や報告書。戦前、戦後の資料などは母子寮を卒論研究に取り上げた学生が私に分けてくれた。その資料のなかに、自費出版された福島三恵子さんの本や佛教大学の通信課程で書いた手書きの卒論がある。母子寮史研究のこのような学徒と出会い、古い資料をもとに過去に遡る視点の楽しさも知った。過去の資料を読むと本質的に現在に通底するものがあり、自分の無知を恥じた。
 その一方、シェルターという女性の新たな社会的資源や、女性運動の世界的なうねりに関心を寄せると、母子寮が囚われてきた「修辞学的枠組み」に気づく。実習に行った学生は、母子寮の集会室の本棚に並ぶ古い本や漂う空気に違和感をもった。外の風が流れない福祉の現場に溜まる臭いを感じたようだ。
 私は母子寮関係者の書いた報告書の「修辞学的枠組み」から解放されることが、新しい実践を生み出す第一歩だと感じた。そしてこれまで書かれなかった表現や言葉を探し出そうとした。その結果、母子寮で働く人びとや母子寮を利用した女性から「生きられた言葉」を受け取った。また社会地理学のジェンダー・アプローチや、建築家の思想も知ることができた。
 私が敢えて「母子寮」と誤りとも取れる名称に固執したのも、「母子生活支援施設」という「修辞学的枠組み」を避けるためである。こんなことを言っていいのかわからないが、私は「社会福祉援助技術」という言葉が好きではない。「援助」と「技術」という二つの言葉が重なって、その感情が一層、膨らんでしまう。「支援」という言葉を核とする「母子生活支援施設」という「修辞学的枠組み」に入らないでいたいのだ。
 そういう感性に立たなければ、利用している女性たちが書いた「自由記述」の言葉と対峙できない。私たちは厳しい批判を背後に浴びている。

二〇〇七年 元旦
須藤 八千代

著者プロフィール

須藤 八千代(スドウ ヤチヨ)

愛知県立大学文学部社会福祉学科教授
著書に『歩く日——私のフィールドノート』(ゆみる出版)、『ソーシャルワークの作業場——寿という街』『「ゆらぐ」ことのできる力』『「現場」の力』(以上誠信書房)、『社会福祉のなかのジェンダー』『ジェンダー・エシックスと社会福祉』『フェミニスト福祉政策原論』(以上ミネルヴァ書房)、『私はソーシャルワーカー』(学陽書房)、『相談の理論化と実践』(新水社)などがある。

※送料は無料です
※版元より営業日2~5日でお届けします
※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカード(VISA、MasterCard、DC、JCB、AMEX、Diners、Nicos、UFJ)がご利用になれます


タグで関連している本:

  • まだ見つかりません

コメントとトラックバック »

まだコメントとトラックバックはありません

TrackBack URI : http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-7503-2475-3.html/trackback/

コメントをどうぞ

お寄せいただいたコメントは、当サイトに掲載されますが、内容によっては削除させていただく場合がございます。なお、コメントへの回答は原則としていたしておりません。当サイト・著者・各版元へのお問い合わせの際は、お問い合わせフォームをご利用下さい。

▲ページの上端へ