
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 224ページ 並製
定価:2,000円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2468-5 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年01月 書店発売日:2007年01月29日
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21世紀は平和と人権の世紀である。グローバル化で人権は国境を越えつつあるが,一方で憲法改正をめぐる危険な動きもある。社会権では若者,高齢者の生活困窮者増大問題がある。錯綜する問題状況を整理し,平和と人権の深化と発展のために何が必要かを考える。
目次
序 章 グローバリゼーションの権利論——民主主義とナショナリズムと人権
第1部 国民国家・ナショナリズム・人権
——人権をナショナリズムの呪縛からいかに解放するか
第1章 国民国家と人権
第2章 人権は普遍的か?
第3章 民主主義とナショナリズムと人権
第2部 権利概念の新展開
第4章 権利をめぐる論争——リベラリズムと共同体論
第5章 責任と人権——責任は権利に優先するか?
第6章 自己決定と人権(1)——人間の本質としての自己決定
第7章 自己決定と人権(2)——自己責任論の陥穽
第8章 教育権と発達概念の再検討
第3部 正義論の新展開
第9章 評価と配分の哲学——大学評価を誤らないために
第10章 地球環境問題は人類共通の課題か——持続可能な地球のための正義論
第11章 環境倫理学と環境的正義
——「動物の権利」「未来世代への責任」の批判的分析を中心に
あとがき
付録 「日本国憲法」
前書きなど
あとがき
二一世紀が人権の世紀であるという基本的な認識に間違いはないとしても、歴史一般がそうであるように、人権の発展にも紆余曲折や一時的な退行がつきものである。本書の第一の課題は、人権の置かれた複雑な状況を整理し、その上で人権の発展のために何が求められているのかを明らかにすることである。
その点で特に問題となるのは、第一部の各論文で論じたように、グローバル化によって、人権の国民国家的制約が鋭く問われているということ、一方でそれにもかかわらず、日本では、国民の諸権利を制限する体制が有事法制の整備などと並行して進んでいるという事実である。この傾向はやがて、憲法「改正」という形でより明確になるであろう。しかし、この傾向は歴史の過程における一時的な退行現象であり、この矛盾はEU統合が示すように、最終的にはリージョナルな経済的共同体の形成によって解決されるであろう(もちろん、それは簡単な過程ではないが)。しかし、それに先行して、権利拡大の具体的な取り組み、たとえば外国人への市民権の段階的拡大など、個別の闘いが求められるところでもある。
第二に、人権はただそれだけを強調することによって、定着し浸透していくものではない。むしろ、人権と一見対立するような概念や考え方(たとえば義務や責任、共同体論など)を受け止め、その論点に応える形で人権の重要性を展開しなければ、人権に対する支持を拡大することはできないであろう。たとえば労働者の権利は、グローバル・コンペティションの激化によって切り下げられ、またしばしば蹂躙されているが、むしろ経営体の存続にとって人権保障が重要な条件であることを説得的に示すことができれば、人権はより強固な基盤を得ることになるのである(この点は第5章で論じた)。人権の発展にとって現在求められているのは、さまざまな考え方と切り結ぶ柔軟な思考なのである。特に権利主張が、社会秩序や道徳の混乱をもたらしたというような権利を貶める議論が横行し、他方で愛国心や公共心が権威的に押し付けられようとしている日本的政治状況では、この点は特に強調されねばならない。
また、以上のような文脈とはまったく異なった角度から、人権は新しいチャレンジを受けている。それは、「動物の権利」や「未来世代への責任」など、近代的、個人主義的権利概念に対する懐疑である。これは環境問題の深刻化の中から生まれてきた問題意識であるが、仮にこのような課題に有効に応えることができなければ、権利概念の威信の低下は免れないであろう(この点は第11章で論じた)。
ところで、第3部は権利論から少し離れて、正義や公正の問題を論じている。権利と正義や公正の関係は簡単ではないが、権利は正義や公正概念に優先し、それを規定する概念であるというのが私の見解である。しかし一方で、社会的公正や正義と整合する形で権利が主張されるときに、権利の権威が増すということも事実である。そのような問題意識で書かれているのが第3部の各論文である。
権利をめぐる以上のような問題意識から、主に二〇〇五年の一年間に各誌に発表された論文をまとめ、それに書き下ろしの序章をつけ加えたのが本書である。以下に、各論文の初出の雑誌を示しておく。タイトルを少し変えたり、一部分手直しをした論文もあるが、大筋においては変更はない。
序 章 権利論の新展開——改憲とナショナリズムを超えて[書き下ろし]
第1章 国民国家と人権[日本哲学会『哲学』五六号(法政大学出版局、二〇〇五年)]
第2章 人権は普遍的か?[岡山人権問題研究所『人権21』一七四号(二〇〇五年)]
第3章 民主主義とナショナリズムと人権[同一七六号(二〇〇五年)]
第4章 権利をめぐる論争——リベラリズムと共同体論[同一七五号(二〇〇五年)]
第5章 責任と人権[同一七七号(二〇〇五年)]
第6章 自己決定と人権(1)——人間の本質としての自己決定[同一七八号(二〇〇五年)]
第7章 自己決定と人権(2)——自己責任論の陥穽[同一七九号(二〇〇五年)]
第8章 教育権と発達概念の再検討[全国障害者問題研究会『障害者問題研究』通巻一一九号(二〇〇四年)]
第9章 評価と配分の哲学——大学評価を誤らないために[大学評価学会『「大学評価」を評価する』創刊号(晃洋書房、二〇〇五年)]
第10章 地球環境問題は人類共通の課題か?——持続可能な地球のための正義論[日本科学者会議『日本の科学者』通巻四五四号(二〇〇五年)]
第11章 環境倫理と環境的正義——「動物の権利」、「未来世代への責任」の批判的分析[関西唯物論研究会『唯物論と現代』三五号(二〇〇五年)]
本書が、人権の発展にささやかな寄与をすることを願って筆を擱くことにする。
二〇〇六年一二月
碓井 敏正
著者プロフィール
碓井 敏正(ウスイ トシマサ)
1946年 東京都生まれ
1969年 京都大学文学部哲学科卒業
1974年 京都大学大学院博士課程哲学専攻修了
現 在 京都橘大学文化政策学部教授
専攻 規範哲学(正義論、権利論など)
E-mail:usui@tachibana-u.ac.jp
主著
〈単著〉
『自由・平等・社会主義』(文理閣、1994年)
『戦後民主主義と人権の現在』(部落問題研究所、1996年、増補改訂版 2001年)
『日本的平等主義と能力主義、競争原理』(京都法政出版、1997年)
『現代正義論』(青木書店、1998年)
『国境を超える人権』(三学出版、2000年)
『グローバル・ガバナンスの時代へ』(大月書店、2004年)
〈編著・共編著〉
『グローバリゼーションと市民社会』(望田幸男氏との共編、文理閣、2000年)
『ポスト戦後体制への政治経済学』(大西広氏との共編、大月書店、2001年)
『教育基本法「改正」批判』(文理閣、2003年)など
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