発行:明石書店
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A5判 464ページ 上製
定価:6,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2466-1 C0037
在庫あり
奥付の初版発行年月:2007年02月
書店発売日:2007年02月20日
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紹介
本書は社会史の成果を取り入れ,アメリカの成人教育史を社会的,経済的,政治的側面から綿密に考察し,女性,マイノリティ,移民,産業労働者,農民に光をあてることにより,マジョリティとマイノリティのせめぎあいの中に成人教育の歴史的役割を検証する。
目次
日本語版によせて
序
第1章 アメリカにおける成人教育の形成要因
第1部 植民地時代の成人教育
第2章 インフォーマルな学習や読書活動
第3章 組織的な教育機会の進展
第2部 建国から南北戦争までの成人教育
第4章 新国家における教育の役割
第5章 読み書き能力の広がり
第6章 成人教育の「実験」
第7章 教育と労働者
第8章 「真の女性」の発達
第9章 教育とマイノリティ
第3部 産業社会の成立と成人教育
第10章 市民生活と職業生活のための準備
第11章 地位向上と社会移動をめぐる限界と挑戦
第12章 工業化と都市化に見合う新秩序の構築
第4部 国家の危機と復興期の成人教育
第13章 アメリカ市民への知識の普及
第14章 戦間期の諸課題と教育の役割
第15章 国家非常時の教育
第5部 大国化するアメリカと成人教育
第16章 成人教育の時代
第17章 成人教育の2つの機能——体制の護持と変革
第18章 成人教育のための基盤整備
結 章 すべての成人の学習ニーズに応えるために
解 説 アメリカ成人教育史像の再構成
監訳者あとがき
参考文献
人名索引
事項索引
前書きなど
序
今日、アメリカ社会は、情報や知識を広めたり、技術を開発したり、そして判断を下すために、成人教育をこれまで以上に重視するようになってきた。第二次世界大戦後の知の爆発、知識社会と情報社会の到来、電子によるコミュニケーションの普及が、成人のための教育について新しい考え方を必要とするようになった。今や、多様な形態の成人教育がアメリカ人の生活に浸透し、教育は成人期を通じておこなわれるべきものという考え方が定着している。しかし、それ以前の時代にも、成人教育は、成人が学習を通して、変化する社会状況に対処したり、生産力を高めたり、生活を楽しんだり、自己や世界を理解できるように援助していたのである。
この歴史をどのように書き表すかは、成人教育研究者の間で大いに議論すべき問題である。この数十年の間、歴史研究は、歴史の再構成を主眼にして進展してきた。名だたる指導者たちや主要な機関の活動に対してこれまで捧げられてきた賛辞の言葉は、平等主義と多文化主義を重視する社会では、居心地の悪いものとなりつつある。これに伴って、公立学校における歴史教育のあり方も問い直されている。歴史的な考察から長いこと排除されてきたグループは、自分たちのルーツを探しだそうとし、それにまつわる過去の出来事や論争を取り上げることで、テレビは視聴率を稼いでいる。非識字、失業、差別といった現実に目を向けるようになると、必然的に、現世代は、過去についても批判的な解釈を試みるようになった。そうして、成人教育の歴史研究も活性化してきた。
ところが、アメリカ史のなかでの成人教育の発展やそれが果たした役割——一般にいわれてきたよりももっと重要で、長期にわたる役割——を描き出したり、解釈した書物は、これまで1冊もなかった。そこで、本書『アメリカ成人教育史』では、成人の広範な学習活動を取り上げ、それが、社会や経済、政治の動向とどのように関連してきたかを考察しようとした。その際、今日の脱工業化社会の生涯学習概念からだけでなく、植民地時代のさまざまな努力も視野におさめて、成人教育の潜在能力について考えようとした。近年の研究成果をふまえながら、成人教育の主要な形態の発展についてとりまとめることに努めた。
本書は多様な読者を想定しているが、とりわけ念頭に置いているのは、成人教育の実践と研究に携わる人びとである。彼らが、自分の仕事を広範な成人教育という領域や、一国の歴史に関連づけて理解しようとすれば、成人教育の包括的な歴史がどうしても必要となる。制度や実践の展開、参加者の変化を記述することで、成人教育の全体像が明らかになるし、民衆の成人教育への参加をどのような要因が規定してきたかを分析することによって、成人教育に対する批判的な見識を養うことができるだろう。本書が、成人教育の思想と実践について広範な知見を提供するとともに、研究のいっそうの進展に資することができれば幸いである。
さらに、本書が読者に想定している人びとには、教育行政関係者、初等・中等学校の教師、市民活動家の養成にかかわっている教育者たちもいる。生涯学習の概念はこのところ広く普及してきたが、生涯にわたる教育や学習は、とりたてて目新しいものではない。そうした実践は、いにしえより存在した。その歴史を精緻に記述したものは、立法者や教育者、そして市民が、教育について包括的な見解をもったり、あるいは教育観が政策立案や、教育実践とか人びとの行動とどのように関係するかということについて考えるのに役立つだろう。
「成人教育」という用語は多義的で、それゆえに、利用者をしばしば戸惑わせる。基礎教育を欠いた人びとのための識字教育から、専門職のための継続教育までの多様な活動が、成人教育と呼ばれる。しかも、どこまでが成人教育なのか、境界も定かでない。すると、極端な場合、成人教育は、成人にとって学習の手だてとなる生活上の経験すべてを包摂することになる。そうかと思えば、組織的な学習経験だけを成人教育とみなす場合もある。定義はさておき、成人教育の体系的な研究は1920年代にはじまった。本書は、そうした研究の伝統を引き継いでいる。
まず、導入部にあたる第1章では、成人教育の多様な定義を概観したうえで、これまでの成人教育史研究の成果と限界、修正主義の立場に立つ教育史家の貢献について検討し、それ以降の章で取り上げる主題の大要を示した。この章では、アメリカ先住民と13植民地にヨーロッパから入植した人びととの間での文化の伝達過程の一部として、成人教育が、いかに生起したかを提示しつつ、成人教育の形成要因についても考察している。成人教育の歴史を考察するにあたっては、(1)植民地時代、(2)新国家の建設と南北戦争までの発展、(3)南北戦争後から第一次世界大戦期までの新しい社会的、経済的諸要因への適合、(4)繁栄と恐慌の時代と第二次世界大戦、(5)第二次世界大戦後の脱工業化社会への移行、の5つに時期区分した。
次に第1部では、植民地および独立戦争後の時期に、いかにして成人教育が発展をみたかを考察する。第2章では、植民地での個人学習と研究の推進に貢献した大西洋情報ネットワークと、読み書き文化の出現と限界、ピューリタンの影響について検討する。第3章では、次第に組織化される徒弟教育とイブニング・スクールを取り上げ、さらに学習機会に関する言説とそれに反して階層化する現実との間の葛藤に注目している。
第2部で取り上げるのは、建国から南北戦争までの時期における成人教育の発展である。独立という目標に向けての教育——それは、矛盾を内包し、限界をもってはいたが——については、第4章であつかう。次いで、社会改革をめざす成人教育の形態を、当時広まっていた個人の向上というイデオロギーと比較対照させる。南北戦争前に昂揚する「向上」という思潮については第5章で論じる。そこでは、文字の読み書き、出版、図書館、イブニング・スクール、理想主義的な共同体がいかにして普及をみたかを検討する。第6章では、メカニクス・インスティチュート、ライシャム、専門職化の初期段階という3つの重要な、しかも相互に関連しあった新しい動きについて分析し、また、中産階級の関与と指導が、この時期の教育的な思潮にどのような影響をおよぼしたかを明らかにする。第7章では、成人教育に対する組合労働者の反応について論ずる。労働者たちは、自らの抱負を実現するうえで教育が果たす役割に大きな期待をかけていた。だからこそ彼らは教育に情熱を燃やしたのであるが、それは、社会的、経済的条件の変貌に伴い、潰えていったことを論じる。第8章では、(白人)女性の成人教育について考察し、個人学習や、職場とか地域社会での学習が彼女たちの能力を高める一方で、フォーマルな教育機会の提供が増加することによって、女性に割り当てられた役割が補強されていくことを明らかにする。第9章では、アメリカ先住民の教育に付託された「文明化するという使命」や、セコイアやチョクトー族の貢献について論じる。また、アフリカ系アメリカ人による教育へのかかわりについて、「ハッシュ・ハーバー」から教会、奴隷所有者が提供した読み書きの教育を概観する。
第3部は、南北戦争後から第一次世界大戦終結までの時期をあつかい、近代アメリカが形成されるなかでの成人教育の発展について考察する。そのうち第10章では、知識や教養の普及を推進するための制度的発達、農業のための教育システムの創造、産業労働者のための訓練と教育の出現に注目する。第11章では、女性、農民、産業労働者、アフリカ系アメリカ人、アメリカ先住民による社会改革への取り組みと、それらのグループに割り当てられた社会的役割に見合った教育を整えようとする、支配的文化側の取り組みについて論じる。第12章は、都市化、工業化、流入する移民などの新たな社会情勢に対処するための方策、たとえば、ソーシャル・セツルメントや「アメリカナイゼーション」といった取り組みを分析し、第一次世界大戦が成人教育に与えた影響について検討する。
第4部の題目は、第一次世界大戦の終結から第二次世界大戦までの時期における成人教育の発展を示している。いかにして成人教育が教育の一分野として認知されるようになったかをはじめ、学習活動を育み、教育を実施するための諸機関の発達、次第に重要性を増す職場教育などを第13章であつかう。第14章では、より良き社会というビジョンによって導かれたいくつかの教育的な取り組み、すなわち葛藤を解決するための教育、市民としての女性、アフリカ系アメリカ人の教育、労働者教育などを分析する。国家的な緊急事態に成人教育を大いに活用したニューディールと第二次世界大戦期の成人教育については、第15章で論じる。
第5部は、第二次世界大戦後から1980年代にかけての成人教育の影響とその変貌ぶりについて考察する。高等教育と職場で、成人教育の制度化の進展と、成人教育の重要性の増大に関しては、第16章で明らかにする。第17章では、いかにしてアメリカ人が、インフォーマルな学習と行動でもって社会的な問題や市民としての重大事に立ち向かったかを説明する。第18章は、脱工業化社会への過渡期において概念的にも組織的にも成人教育に首尾一貫性をもたせようと、さまざまな機関によってなされた努力を明らかにする。最後に結章では、成人教育が大衆の営みとなるにつれ顕在化したいくつかのパターン、繰り返される主題、変化し続け、そしてせめぎあうイデオロギーを確認する。
著者プロフィール
ハロルド・W・スタブルフィールド(スタブルフィールド,ハロルド・W)
ヴァージニア・ポリテクニック・インスティチュート・アンド・ステイト・ユニバーシティの成人教育学名誉教授。1955年、マレー・ステイト・カレッジにおいて社会科学の学士号を取得。1958年に神学士、1960年に神学修士の学位をサザン・バプティスト・セオロジカル・セミナリーで取得。さらに、1973年、インディアナ大学において成人教育で教育学博士の学位を取得。博士号取得後、インディアナ大学で1年間教鞭をとった後、ヴァージニア・ポリテクニック・インスティチュート・アンド・ステイト・ユニバーシティに着任し、1998年に退職した。
主たる研究分野は、合衆国の成人教育史、学問分野としての成人教育の発達と組織化。Continuing Education for Community Leadership(1981)の監修。1988年には、イモジーン・オークス成人教育研究賞を受賞。同年、Toward a History of Adult Education in America(1988)を執筆。雑誌への寄稿論文も多数。成人教育大学教授委員会の議長、およびAdult Education Quarterlyの顧問編集者、また、アメリカ成人継続教育協会、 ボランタリー・アクション・スカラーズ協会、ヴァージニア成人継続教育協会の理事を歴任。
パトリック・キーン(キーン,パトリック)
1970年から引退する1992年まで、ダルハウジー大学(Halifax, Nova Scotia)で継続教育の教授をつとめる。1958年にマンチェスター大学で学士号を取得後、ブリストル大学で教育学を専攻し、1959年に大学院修了証書、1964年に修士号を取得。1970年にバース大学で博士号を取得。ダルハウジー大学に赴任するまで、ディリントン・ハウス成人教育レジデンシャル・カレッジのチューターをつとめたほか、デヴァイズィズ継続教育カレッジの学長、コーンウォール成人教育合同委員会の構外教育チューターと成人教育アドバイザーを歴任。
専門領域は、19世紀におけるイギリス、カナダ、合衆国の成人教育。これまで執筆した論文には、初期の成人教育における国際主義、教育方法上の問題、メカニクス・インスティチュート、労働者教育、図書館、博物館、成人教育における州の役割等をあつかったものがある。それらは、Studies in Adult Education、International Journal of Lifelong Education、Convergence、Adult Education Quarterly等に掲載されている。
小池 源吾(コイケ ゲンゴ)
1948年、岡山県生まれ。広島大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学。今治明徳短期大学、福岡大学で教鞭を執った後、現在広島大学大学院教育学研究科教授。専門は社会教育学、成人教育学、生涯学習論。
主な著訳書:『生涯学習概論』(共著、福村出版、1992年)、『生涯学習の創造』(共著、ミネルヴァ書房、1994年)『生涯学習の基礎と展開』(共著、コレール社、1998年)、『現代公民館の創造』(共著、東洋館出版社、1999年)、『21世紀の生涯学習』(共著、福村出版、2000年)、『新しい時代の生涯学習』(共著、有斐閣、2002年)、『社会教育と学校教育』(共著、学文社、2003年)、『メディア・リテラシーへの招待』(共著、東洋館出版社、2004年)、『成人の学習と生涯学習の組織化』(共著、東洋館出版社、2004年)、『公民館・コミュニティ施設ハンドブック』(共著、エイデル研究所、2005年)、『アメリカの社会教育』(共訳、全日本社会教育連合会、1975年)、その他。
藤村 好美(フジムラ ヨシミ)
1955年、東京都生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学。埼玉大学、群馬大学、上智大学等の非常勤講師を経て、現在広島大学大学院教育学研究科助教授。専門は社会教育学、成人教育学、生涯学習論。
主な著訳書:『世界の教育改革の思想と現状』(共著、理想社、2000年)、『世界の社会教育施設と公民館──草の根の参加と学び』(共著、エイデル研究所、2001年)、『生涯学習の展開』(共著、ミネルヴァ書房、2002年)、『生涯学習がつくる公共空間』(共著、柏書房、2003年)、『公民館・コミュニティ施設ハンドブック』(共著、エイデル研究所、2005年)、『国際生涯学習キーワード事典』(共訳、東洋館出版社、2001年)、その他。
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