沖縄における同化と交流のゆらぎ沖縄の平和学習とオルタナティブ教育
柳下 換
発行:明石書店
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A5判 368ページ 上製
定価:3,600円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2461-6(4-7503-2461-2) C0037
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年11月
書店発売日:2006年12月06日
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紹介

国家主導による「教育」から離脱して,自由で自発的な「学び」の場を創造するにはどうすればいいのか。長年にわたって自由・自立・平和を柱とするオルタナティブ教育に携わってきた著者による,「沖縄の歴史」をリソースとした新しい学習試論。

目次

序 章 教育という違和感
 1 違和感というゆらぎ
 2「自由」から「平和」への方法序説
 3 平和のまなざしを「学び」として伝える系譜的なもの
 4「同化」と「交流」の振幅を拾い出し学習しリソース化する試み
 5「教育」から「学ぶ」ことへ
第1章 脱・国家教育の試み
 1 もう1つの学びの場系譜(オルタナティブ教育)
 2 オルタナティブ教育
 3 オルタナティブ教育としての「鎌倉・風の学園」
 4「鎌倉・風の学園」の試みを通じて考察したオルタナティブ教育観
 5 小結「真のオルタナティブ教育とは、日本のオルタナティブ教育の可能性」
第2章 平和学習リソース
 [1]琉球王国成立の過程において、仏教はどのような役割を果たしたのか
 [2]琉球王家(尚家)はいつごろから三つ巴の紋章を使うようになったのか
 [3]薩摩侵入後(近世琉球)の琉球において石高制は機能したのか
 [4]古琉球時代の琉球民衆は何を主食としていたか
 [5]近世琉球王府において、なぜトキ・ユタ制は禁圧されたのか
 [6]琉球処分は日本による植民地化政策だったのか
第3章 波乗りの仕方
 1 琉球の陶器
 2 鉄人28号・鉄腕アトム、そして暴力批判
 3 喜瀬武原(キセンバル)原景
 4 ゆらぎの中の日本国憲法第9条
 5 結論「波乗りの仕方」
あとがき

前書きなど

あとがき
 本書は、教育のオルタナティブとしての「学び」という営みを、本来の学習活動であると捉え、その方法論を述べた上で、その手法を用い、「沖縄」という学習フィールドを対象として、「平和」の破壊構造を学ぶための学習リソースを提案したものである。
 今回提案した「平和」の構造を学ぶための学習リソースは、その理論と視点の理解を促す目的もあったため、問題集という形ではなく、授業書という体裁にした。また、学習リソースの提案の後には、それらの学習リソース群を通じて、みえてきた「沖縄」という場所が、「平和」という意識に対して「意味するもの」という点についても、入口的な見解ではあるが、付加することにした。

 序章では、本論の出発地点を筆者の意識とともに明らかにした。その中心となるのは、筆者自身が日本社会で生活してきて、感じ取ってきた様々な違和感、具体的な言い方をすれば、目の前で起きているあらゆる事象の持つ「ゆらぎ」、すなわち、両義性は自分自身にとって、社会にとって、人間にとって、一体どのような意味を持つものであるのかという疑問であった。
 そうした意識のもとで筆者は、約20年間にわたり「人間にとって本当の学びとは」という命題を追求するための制作的実践を行ってきた。

 第1章では、世界の中にある教育のオルタナティブとしての学びの系譜と、自ら行ってきた学びの実践とを比較検証し、日本の学びの中にある可能性について論じた。

 第2章では、筆者が行ってきた学びの手法(学習方法論)を活用した、平和の構造を学ぶための学習リソース群を提供している。今回の平和学習のためのリソース群は、筆者自身がエクスポージャーとして、長年にわたり、対象フィールドとしてきた「沖縄」という地を材料にし、はじめての試みであるため、時間的な幅を日本でいうところの中世から近世、および近代初めまでと区切って、学習リソース化した。どの学習テーマも、沖縄と日本の「同化と交流」の歴史に着目したものである。その視点は、こうしたゆらぎの中にこそ、平和を破壊する潜在的仕組みが隠蔽されているはずだという考えのもと拾い出されたものばかりである。各テーマは以下の通りである。

1 「琉球王国成立の過程において、仏教はどのような役割を果たしたのか」
 第1編では、日本と琉球の中央集権化の過程のなかで、その共通要素であった「宗教」、特に「仏教」、なかでも「真言密教」と「禅宗臨済宗」が担った役割について、国家という視点から比較検討した。

2 「琉球王家はいつごろから三つ巴の紋章を使うようになったのか」
 第2編では、本来、家紋を使う慣習のなかった琉球王府が、ある時期から、日本神道を代表する宇佐八幡宮や石清水八幡宮の神紋である「左三つ巴紋」を王家の紋章として使いはじめる。今までそうした習慣がなかった琉球王家が、なぜ急にそうしたヤマトの慣習である紋章、それも神紋を使いはじめたのか、当時の琉日間における交易事業との関連からその謎について検討した。

3 「薩摩侵入後の琉球において石高制は機能したのか」
 第3編は、太閤秀吉が、日本で天下をとるため実施した様々な政策の中で、兵粮米の確保や、知行制の確立などが目的だった石高制が、ヤマトで機能したように、薩摩侵入後、琉球に課せられたとき、同じように機能したのかを、ヤマト・薩摩・琉球という3地点において、より民衆に近い立場から、実施税率などを中心に比較検討したものである。

4 「古琉球時代の琉球民衆は何を主食としていたか」
 第4編では、薩摩が侵入した後の琉球における民衆たちの主食がサツマイモ(甘藷)だったことを検証した上で、サツマイモが伝わってくる以前の琉球における民衆の主食は何だったのかを推察した。この考察は、琉球王国が繁栄と衰退を経験した、沖縄でいう古琉球時代の琉球社会の様子を再現するものである。このことは、琉球民衆の潜在意識の中に形成された、海洋民族としてのアイデンティティーの系譜を繙くことにつながる。

5 「近世琉球王府において、なぜトキ・ユタ制は禁圧されたのか」
 第5編は、古琉球時代においては国家宗教の一翼を担い、集権化の装置の1つとして機能していた琉球神道系の民族宗教が、薩摩侵入後の近世琉球において、禁圧される。その背景を社会構造の変化にともなう構造改革だったと着目し、琉球文化とヤマト文化との受容し合う両義的ゆらぎの中に、両国の国家的為政者の欲望をあぶり出す試みをした。

6 「琉球処分は日本による植民地化政策だったのか」
 最終編では、明治維新後の日本の近代化政策が、どのような性格を持っていたのか、その意味を指し示した例として、明治維新直後より沖縄に対して実施された明治政府の政策を示準に、その他地域において実施された植民地政策(教育)・同化政策(同化教育)・皇民化政策(皇民化教育)を材料に比較検討した。

 第2章では、こうした沖縄と日本を巡る「同化と交流」のゆらぎ、すなわち両義性を持つ歴史的要素を学習リソースとして拾い上げ、その潜在構造として存在する「平和」の維持と破壊という両義的なエネルギーの振幅の再現を目的とした。なお、重ねての記述になるが、第2章の主張は、歴史的・経済的な事実の正偽ではなく、沖縄と日本の間で起きた史実の意味を考えたときに、どのような方法によって、どのような学びができるのかを指し示したものにすぎない。ただし、学習者が、学習機械として提示したものに興味が湧き、その正偽を確かめたくて、さらに学習を深めることを希望したとすれば、それを否定するものではない。むしろ、学習を深めてもらえるのであれば、それは、第2章の学習リソース群が意図した平和学習機械の投入稼働を意味するので、たいへんうれしいことである。

 そして、第3章では、第1章・第2章を通じて意味したものを、沖縄における実際と照らし合わせ、より具体的に説明した。特に、本論の主テーマである、沖縄地域の土台構造に存在する「平和」を希望するエネルギーと、その他の地域、特に、近代日本をはじめとする資本主義社会が欲望する「貨幣」というエネルギーとの関係、そして、両者のせめぎ合いのなかで発生する「暴力」の仕組み、つまり「平和」でない状態を発生させる仕組みについて、「同化と交流のゆらぎが、沖縄と日本との関係をつくってきた。その関係性が沖縄(琉球)と日本(国家・民族)を結びつけている。そこに共同態(沖縄)を破壊する様々な暴力が発生する」と沖縄が意味する平和破壊の構造を解説した。
 結果として、本論は、まだ、平和機械開発の入口的な意味しか持ってないが、「暴力」が発生する仕組みと、それを廃絶する仕組みの両方を意味する場所としての「沖縄」の重要性を明らかにすることができたと思う。

 「沖縄」という場所が持つ、平和機械としての可能性を嗅ぎとれたことで、本論の研究の継続発展や、今後の平和学習としての、構造平和学的領域の確立、すなわちポスト構造主義的な視野をも入れた、構造的暴力からの逃走の可能性も十分に予感できた。

 最後に、本論をまとめるにあたり、多くのご助言、ご指導をいただいた方々に心より感謝を申し上げる。

柳下 換

著者プロフィール

柳下 換(ヤギシタ カン)

1957年、横浜市生まれ、鎌倉育ち。大学卒業後、2年間ほどの高校・小学校教員経験を経て、1984年、鎌倉地域教育センター代表。1996年より、鎌倉・風の学園学園長。
専門領域:オルタナティブ教育論・学習方法論・平和学習論・フィールドワーク学習論
【著書・論文】
 『インターネットハイスクール風』(ダイヤモンド社)
 『脱国家教育』(蕗薹書房)
 『21世紀コンピュータ教育辞典(事例集)』(旬報社)
 「風の学園の学校づくり」(雑誌『教育』国土社)
 「『教育』のオルタナティブとしての『学び』の可能性についての一考察」修士論文 等
所属:地域教育連絡会・日本平和学会・教育思想史学会・関東社会学会

連絡先:鎌倉・風の学園高等部
 〒248−0016 神奈川県鎌倉市長谷2−11−21
 TEL:0467−24−9425 FAX:0467−22−5477
 E-mail:annai@kaze.gr.jp URL:http://www.kaze.gr.jp

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