発行:明石書店
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四六判 312ページ 並製
定価:2,200円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2444-9(4-7503-2444-2) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年11月
書店発売日:2006年11月10日
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紹介
危機に瀕している家族の情況を,哲学,心理学,社会学,文学などの多様な視座から,否定的にではなくうまくトラブル化することで,現にいまある問題を捉える知的な家族論。ジェンダー・フェミニズムに関心のある人必読。
目次
まえがき
序 「家族問題」から「ファミリー・トラブル」の間(金井淑子)
——暴力性を帯びてしまった家族の暗部へ
1 近代家族の物語
——幻想だとしても、イデオロギーだとしても、家族への問いは残る
1 「家族なんてないと想像してごらん」と歌わなかったジョン・レノン(榑沼範久)
2 精神分析から捉えるジェンダーの闇(井上果子)
——『夕鶴』からみる女—男の関わり方
3 家族の運命(志田基与師)
——『東京物語』と「ディズニーランド」
4 母の日をめぐる近代家族のポリティクス(小玉亮子)
——二つの理想のはざまで
5 「安達ヶ原一つ家(や)伝説」の語り直しと山姥の変容(橋本順光)
〈コラム〉セックスの歴史政治学(松原宏之)
——『愛についてのキンゼイ・レポート』の読み方
2 近代家族のポリティクス
——バックラッシュとグローバル化の中で
6 近代日本の「オールド・ミス」(加藤千香子)
7 ジェンダー意識・家族観の変容と社会(白水紀子)
——改革開放下の中国女性
8 バックラッシュの中の家庭科教育(堀内かおる)
——家族をめぐるポリティクスの過去・現在・未来
9 障害者自立生活運動と「脱家族」(土屋 葉)
——「愛情」による「囲い込み」を問う
10 「障害者の性」が語られる時(松波めぐみ)
——埋没するジェンダー、そして家族
11 女性の国際移動と越境する「家族」(小ヶ谷千穂)
——グローバル化の文脈において
〈コラム〉「男根期的」オタク夫婦のユートピア(清田友則)
——真の譲り合い精神を育むために
前書きなど
まえがき
本書のタイトル「ファミリー・トラブル」は、ジュディス・バトラーの『ジェンダー・トラブル』(竹村和子訳、青土社)に倣ったものだ。トラブルにあることを否定的にではなく、むしろトラブルを起こす、うまくトラブル化することで、現にある問題状況(規範や秩序のゆらぎ)を超えていく含意、ジェンダーについて言えば、ゆらぎの中にあるジェンダーにあえて亀裂を持ち込み、ジェンダーカテゴリーそのものを書き換えていくことのバトラーの趣意を汲んだものだ。
マクロ的にもミクロ的にも家族をめぐる状況は危機の様相を深めている。グローバル化の波に洗われた「近代家族」はもはや愛情規範集団としてその空間を聖域化しておくべき術もない。いまや先進国「北」側の家族の危機の救済のために「南」の家族の愛情が搾取される現実が進んでいる。さらに私たちの足元の家族をみれば、これも家族が家族であることにおいて危険であるほどに暴力性を帯びてしまっている。家族が抑圧性と権力性を内包した場であることを露呈してしまっている。そしてジェンダー・バックラッシュである。ジェンダーフリー教育や男女共同参画社会へのバッシングの中で、またぞろ「家族の復権」論が横行する状況にもある。
しかし本書は、この「家族のポリティクス」状況にイデオロギー的に対抗する言説をだそうというものではない。むしろ主眼は、人はなぜ「〈家族という物語〉を欲望するのか」を問うことのほうにある。「近代家族」が死を運命付けられ二度と再生しないものであるとしても、トラブルに満ち満ちた空間だとしても、人は「家族」をそう簡単には「葬送」できない。ジョン・レノンは、「家族なんてないと想像してごらん」とは歌わなかった……。家族のイデオロギー的批判だけでは届かない課題がそこには存在する。それを「ファミリー・トラブル」というコンセプトに仮託し、「家族に最後に残るもの/残すもの」は何かという問いとして立てた。
本書企画の背景には、二〇〇四〜〇五年にわたる横浜国立大学発公開講座「ジェンダーと家族」、学長裁量経費による公開シンポジウム「ジェンダー論の新地平——構築される身体/構築する身体」の二つの事業がベースになっている。とはいえ、哲学・心理学・社会学・教育学・歴史学・文学さらに障害学……まで含む多様な専門分野にわたる執筆者間に、そこにあらかじめフェミニズムやジェンダー研究の分析視座がリジッドな形で共有されているわけではない。ただ、研究領域を異にするものがそれぞれのバックグラウンドから発言するにしても、「家族」という主題がそれぞれにとって「生きられている現実そのもの」である以上、そこには現在を生きる各人の家族観や人間観が投影されざるをえない。それぞれにとってのこの「のっぴきならない対象」「論ずる対象とはなりにくい」家族という主題への、多様な研究分野からの知的格闘こそが、まさに本書のファミリー・トラブルの含意に照らしても、「家族への問いとまなざし」を深いところに拓いていく契機になるのではないか。
家族をめぐる混迷する状況に、本書がささやかながら、「家族論」への一つの意味ある問題提起となることを祈ってやまない。
二〇〇六年一〇月五日
編著者
著者プロフィール
金井 淑子(カナイ ヨシコ)
横浜国立大学教育人間科学部教授(倫理学、女性学/ジェンダー研究)
[主な著書]
『転機に立つフェミニズム』毎日新聞社、1985年。
『ポストモダン・フェミニズム——差異と女性』勁草書房、1989年。
『女性学の練習問題——“Hanako”と“婦人”のはざまで』明石書店、1991年。
『フェミニズム問題の転換』勁草書房、1992年。
『女性学の挑戦——家父長制・ジェンダー・身体性へ』明石書店、1997年。
[主な編著書]
『家族』新曜社、1988年。
『フェミニズム』新曜社、1997年(江原由美子と共編)。
『身体のエシックス/ポリティクス』ナカニシヤ出版、2002年(細谷実と共編)。
『フェミニズムの名著50』平凡社、2002年(江原由美子と共編)。
『親密圏のポリティクス』ナカニシヤ出版、2003年(共著、斉藤純一編)。
『性/愛』(岩波・応用倫理学講義5)岩波書店、2004年。
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