発行:明石書店
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四六判 256ページ 並製
定価:2,200円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2442-5(4-7503-2442-6) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年11月
書店発売日:2006年11月01日
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紹介
性被害者・加害者になり得る知的障がいのある子どもたちを守るための教育実践「こころとからだの学習」が,東京都教委や一部の都議会議員の手で壊されてしまう。性教育バッシングに立ち上がった元都立七生養護学校の教員・保護者たちの闘いの記録。
目次
まえがき
「こころとからだの学習」という真実と希望
〜希望としての裁判、未来を創る決意、子どもを大切にするための連帯〜
第一章 七生養護学校の子どもたち
一 親たちの手記
〜我が子の育ちを見つめて〜
二 教員たちの語る「七生養護学校の子どもたち」
第二章 七生養護学校の教育実践
第三章 七生養護学校で起こった事件
一 七生養護学校事件の概要
〜何が起こったのか〜
二 あの日の保健室
第四章 そして、私たちは立ち上がった
〜裁判の原告として〜
第五章 支援のメールと声
特別論稿 障がい児性教育と教育の自由
付 録
一 裁判用語基礎知識
二 弁護団によるひとこと解説
あとがき〜本書出版までのいきさつ〜
前書きなど
まえがき
七生養護学校とは
障がいのある子どもたちのための学校として、盲学校やろう学校、そして養護学校といった障がい児学校があります。その中で知的障がい児が通う知的障がい養護学校は都立のものだけで三一校あります。
本書で取り上げる七生(ななお)養護学校は、東京都の真ん中、立川市と八王子市にはさまれた日野市にあり、小学部、中学部、高等部の三つの学部からなる、全児童・生徒数一六〇名、教職員一〇〇名あまりの学校です。七生養護学校は、隣接する東京都七生福祉園の施設提携校としての役割も担っています。
東京都七生福祉園は、最重度を除く知的障がい児・者がさまざまな理由——親から虐待を受けたり親が何らかの理由で養育ができないなど——で家族と離れて暮らすための施設で、三歳から七〇歳まで約三〇〇名が暮らしています。七生養護学校の在校生の約半数がこの七生福祉園から通学しています。
「こころとからだの学習」とは
今の性情報の氾濫のなかで、子どもたちが自分のこころとからだを大切にしながら性の問題を考えるのはとても大変です。まして、知的障がいのある子どもたちは、「いや(という感情)」をうまく表現できなかったり、性衝動とのつきあい方がうまくいかなかったりして、性に関する事件の被害者や加害者になってしまうことも少なくありません。そして、知的障がい児は障がいのない子のようには理解することが難しく、教える側に努力と工夫が必要とされます。
しかし、障がいがあることの大変さはそれだけではありません。障がい児は成功経験が乏しく人から誉められたり認められたりすることが少ないのです。障がい児には自分が自分のままでいいんだ、自分は社会に必要とされているんだという自己肯定感を感じる機会が非常に足りないのです。まして、家族と離れて暮らしている子どもたちが多い七生養護学校では、この自己肯定感が決定的に欠けている子どもたちが多かったのです。
年間教育プログラム「こころとからだの学習」は、この七生養護学校で起こった子どもたちの性の問題行動をきっかけに始まりました。性の問題行動の再発を防ぐためにどうすればいいかを議論した結果、たどり着いたのは、それが子どもたちの自己肯定感の欠如を背景としているということでした。ですから、教員集団が子どもたちを丸ごと受け止め、子どもたちの自己肯定感をはぐくむなかで、「こころとからだ」について学んでいこうということになったのです。このような経緯から、「こころとからだの学習」は、性に関する教育を大事な部分としつつも、家族の再認識や被虐待児の「自己の育て直し」など、多くの要素を持った実践になったのです。
「事件」
このような「こころとからだの学習」は、二〇〇三年夏以降実施できなくなってしまいました。東京都議会議員(以下「都議」)の、都議会本会議質問での「不適切だ」との発言をきっかけに、都議らと東京都教育委員会(以下「都教委」)が突然学校に来校し罵声を浴びせて批判し、産経新聞は「過激な性教育」などと報道し、工夫を重ねて作られた教材は都教委によって持っていかれ、教員たちは厳重注意を受けたうえ、異動によってバラバラにされてしまったからです。
裁判
この本を作った私たちは、「こころとからだの学習」をこんなふうにつぶしてしまったことが間違いであったことを認めてほしいと起こされた「こころとからだの学習裁判」にかかわっています。
裁判は、教員と保護者三〇名以上が原告となり、二〇名近い弁護士とともに進められ、すでに数回の法廷を重ねています。傍聴席はいつも満員で、この問題に対する関心の高さを示しています。
各章の紹介
私たちは、都議や都教委による教育現場への不当介入とその後の裁判を通じて、介入をしてきた人たちが、「こころとからだの学習」について何も知らないまま否定してきたことを知り、そのことに怒りました。
他方で、七生の卒業生を含む障がいのある子どもたち、七生の子どもたちの親を含む保護者のみなさん、現場で障がい児教育や性教育に取り組んでいる方々など、全国各地から多くの励ましの言葉をいただきました。「こころとからだの学習」が目指していたものに共感しての言葉が多かったことに元気づけられました。
私たちは、「こころとからだの学習」について、また、その意義について、そしてそれをつぶされた悔しさについて、一人でも多くの方に知ってもらいたいと思い、本を作ることにしました。
この本は以下のような内容で構成されています。
第一章 七生養護学校の子どもたち
知的障がいのある子どもたちはどんな生きづらさを抱えているのでしょうか。そして、どんな表現でその生きづらさを訴えているのでしょうか。その子どもたちの悩みやつらさを親とともに受け止める七生養護学校の教員たちは、どのようなことを考えてどのような授業をしていたのでしょうか? この章では、親と福祉園職員、教員らがそれぞれの思いを語ります。
なぜ「こころとからだの学習」が作られていったのか、その背景を伝えたいと思います。
第二章 七生養護学校の教育実践
第一章で述べた七生の子どもたちの様子に応えるために、多くの議論を経て「こころとからだの学習」が始められました。
「こころとからだの学習」が「性」の問題と正面から向き合いながらも、一般にイメージされる「性教育」とは大きく違うことがわかっていただけると思います。
第三章 七生養護学校で起こった事件
こうして築かれてきた「こころとからだの学習」は、二〇〇三年夏につぶされました。この夏のこと、そしてそれ以降、七生養護学校で起こったすさまじい実態について描かれています。
第四章 そして、私たちは立ち上がった〜裁判の原告として〜
保護者や教員たちには、七生の子どもたちとのかかわりのなかで、「こころとからだの学習」に対してそれぞれの思いがあります。そうした思いをつぶされたことに納得できないと裁判に立ち上がった保護者・教員たちがいます。ここでは、「こころとからだの学習」裁判の原告となった保護者・教員たちの何人かにその思いを語ってもらいました。
なぜ「訴え」ざるを得なかったのかを受け止めていただければうれしいです。
第五章 支援のメールと声
事件についてのTV報道後に寄せられたメールに私たちは励まされました。この章ではいただいたメールの中から一部を取り上げ紹介します。また、裁判を支援してくださる各地の人びとの声も紹介します。
特別論稿 障がい児性教育と教育の自由
「こころとからだの学習」への介入の法的問題点について、教育法学者の立場から解説していただきました。
付録 裁判用語基礎知識/弁護団によるひとこと解説
「こころとからだの学習裁判」、略して「ここから裁判」の鍵となる言葉を弁護士たちが説明しました。
裁判の中身について少し知りたいな、と思った方向けのコンパクト解説です。
七生養護学校の「こころとからだの学習」は、一人ひとりの子どもを正面から受け止め、一人ひとりの子どもと向き合うなかから作り上げられてきました。これは何も七生養護学校だけに特別なことではなく、そもそも教育ってこういうものではなかったでしょうか。
この本が、「教育って何だろう」ということまでみなさんと一緒に考えるきっかけになればとても幸せです。
『知的障がい児のための「こころとからだの学習」』編集委員会
著者プロフィール
『知的障がい児のための「こころとからだの学習」』編集委員会(チテキショウガイジノタメノココロトカラダノガクシュウヘンシュウイインカイ)
井上千代子(都立学校教員 「ここから裁判」原告)
内山 裕子(都立学校教員 「ここから裁判」原告)
岡田 充生(日野市立学校教員 「ここから裁判」支援日野市民の会)
木村 真実(「ここから裁判」弁護団)
窪田 正子(「ここから裁判」支援日野市民の会)
洪 美珍(元七生養護学校保護者 「ここから裁判」原告)
小林 和(「ここから裁判」全国連事務局長)
佐藤 明子(「ここから裁判」全国連運営委員)
杉崎 愛史(「ここから裁判」全国連運営委員)
野原 恵子(都立学校教員 「ここから裁判」原告)
日暮かをる(都立学校教員 「ここから裁判」原告)
宝方■代美(都立学校教員 「ここから裁判」原告)[■七が三つ〔名前読み:キヨミ〕]
山下 太郎(「ここから裁判」弁護団)
横尾 澄子(都立学校教員 「ここから裁判」原告)
渡邊 好造(都立学校教員 「ここから裁判」原告)
「こころとからだの学習裁判」(略して「ここから裁判」)は、原告(現在31人)、弁護団(18人)、支援する全国連絡会(約900会員。日野市民の会は全国連会員で構成される)によって支えられている。本書編集委員会はその3者から数人ずつのメンバーによって構成された。編集会議のほとんどは、支援する全国連絡会の連絡先のひとつとなっている日野市民法律事務所を使っておこなわれた。
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