脱冷戦と護憲・軍備全廃の理想を目指して晩年の石橋湛山と平和主義
姜 克實
発行:明石書店
この版元の本一覧
四六判 248ページ 上製
定価:2,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2440-1(4-7503-2440-X) C0021
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年11月
書店発売日:2006年11月28日
※送料は無料です
※版元より営業日2~5日でお届けします
※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカード(VISA、MasterCard、DC、JCB、AMEX、Diners、Nicos、UFJ)がご利用になれます
タグ: まだタグがありません

紹介

石橋湛山は単なる政治家ではない。理想主義的言論人,先駆的思想家でもあった。戦後史上における彼の功績は,「小日本主義」による経済再建と,冷戦の解消・東西和合をめざす「日中米ソ平和同盟」の構想にある。本書は彼の戦後の歩み,晩年に焦点をあてる力作である。

目次

前書き
第一章 「日中米ソ平和同盟」構想の萌芽——石橋湛山の第一次訪中
 第一節 訪中の動機
 第二節 訪中の決意と事前交渉の経緯
 第三節 訪中の経過
 第四節 湛山の自己評価と反省
 第五節 資料紹介——石橋・周「コミュニケ」をめぐって
第二章 「日中米ソ平和同盟」構想の形成
 第一節 現実と理想——湛山の安保構想
 第二節 岸内閣批判
 第三節 理論準備と初期の実践
 第四節 「第三の原理」を求めて
 第五節 日ソ協会会長就任の決断
 第六節 中国とソ連への呼び掛け
 第七節 ソ連訪問の計画とソ連政府覚書
第三章 「日中米ソ平和同盟」の推進活動
 第一節 「日中米ソ平和同盟案」の誕生
 第二節 周恩来の支持を求めて
 第三節 日ソ協会会長辞任の理由
 第四節 二度目の訪ソ計画
第四章 石橋湛山の第二次訪中
 第一節 「日工展」総裁就任
 第二節 総裁と評論家の二つの顔
 第三節 「評論家」としての活動
 第四節 周恩来総理との個人会談
 第五節 第二次訪中の収穫
 第六節 二回の訪中の比較
第五章 フルシチョフ後のソ連
 第一節 ソ連訪問の目的
 第二節 事前準備と訪ソのあらまし
 第三節 訪ソの印象と収穫
 第四節 訪ソ後の情勢認識と新課題
第六章 湛山晩年の言論と思想
 第一節 米中関係の打開をめざして
 第二節 護憲精神と再軍備反対
 第三節 自由主義への帰結
 第四節 最晩年の湛山
終章 理想主義への転回
 第一節 「日中米ソ平和同盟」論の思想源流
 第二節 湛山晩年の思想特徴
付録・私の湛山研究への道——一外国人研究者の目から見た日本の近代化
 日本近代研究の動機/日本近代化の命題/倫理的帝国主義の幻想/湛山の小日本主義経済思想の意義
後書き
石橋湛山略年譜
主要参考文献
索引

前書きなど

前書き
 石橋湛山は政治家だけではない。理想主義的言論人、実践的経済人であり、また時代を見通した思想家でもあった。戦後史上における彼の最大の貢献は、政治家の活動と言うより、思想家としての、先見性に満ちた二つの構想、およびそれを実現させるための弛みない努力にあるのではないかと私は思う。その第一は人間中心の、小日本主義による経済復興再建の理念であり、第二は冷戦の解消、東西の和合を目指した「日中米ソ平和同盟」構想であった。前者において湛山は敗戦後の日本経済に再建・復興の根本的理念を提供し、後者においては、東西の和合、平和共存の歴史的趨勢を先取りし、冷戦進行のさなかの一九五〇年代後半から「日中米ソ平和同盟」の構想を練り上げた。
 この二つの構想はいずれも、その時代においてではなく、後代になって初めて価値を認められた先見性のあるもので、十数年先の戦後日本経済の在り方を規定し、また戦後の国際関係の行方を予見した。振り返ってみれば、湛山の予見は、その後の日本経済成長の軌跡、東西冷戦対立の行方を見事に的中しただけではなく、二一世紀の今日においても経済の遣り方、国家の在り方、また人間の生き方の面において、我々に有益な示唆を与え続けている。
 本書は、こうした戦後における石橋湛山の思想的価値の究明を目的とするもので、二〇〇三年に完成した戦後湛山の第一構想——小日本主義的戦後復興構想——の研究に続く、その第二構想——「日中米ソ平和同盟」——に焦点を当てるものである。時期的には首相になるまでの前者に続き、一九五七年首相引退後から亡くなるまでの、石橋湛山の晩年にあたる。
 「日中米ソ平和同盟」の構想は、湛山の「作用的一元論」の哲学、「帰一」「和合」の倫理学思想と、「世界化、国際化」という経済理論に基づいて次第に生成したものであり、戦前の「経済的ナショナリズム」の克服という帝国主義批判の理論をもって嚆矢とする。その後、戦時下の、経済の国際化を目指す戦後世界経済秩序の構想を経て、朝鮮戦争下の「世界国家」論、またその後の「世界連邦」の思索へと進み、さらに、冷戦対立、日米安保条約の改定をめぐる国際関係の諸問題に触発され、最後に形作られたものと考えられる。
 またそれをめぐる先駆的活動は、朝鮮半島の情勢が緩和した一九五一年後半から、主として対共産圏貿易促進の努力と活動、東西和合の諸言論などを通じて現れたが、政界復帰に従って、鳩山自由党の政策方針、または鳩山内閣期の政府外交、通商政策にもその一部が取り入れられた。しかし、この時期において、湛山の東西和合の政治構想はまだ形成の段階にあり、政治、党派の活動に制約され、どちらかといえば、対米一辺倒の吉田外交路線に反発する、自由党鳩山派の政治的色彩が強かった。その上、党の要人、政府閣僚としての激しい党務・公務に追われ、また経済の専門家として主に経済復興・成長のために尽力していたため、東西和合の理想を抱きながらも、それを政治構想として成長・発展させる機会に恵まれず、後の主張、行動に見られるような独自性も現出させるに至らなかった。この主張は、政党、政府政策のレベルから、一つの夢、一つの雄大な政治構想に昇華し、湛山晩年の言論、思想と活動のすべてを規定するようになったのは、一九五七年、彼が病に倒れ、政界の第一線から退いた後のことである。
 第一線からの引退で、湛山はより自由な立場で、独自な活動と言論を展開する可能性を得た。また大病の後、四〇年間も続けてきた経済評論の仕事に見切りをつけたため、精力的にも「日中米ソ平和同盟」構想一本に絞って専念することが出来た。つまり、病に倒れ、首相引退後の湛山は、もはや今までのような公人の立場に束縛される現実主義的政治家、政党人、経済理論家ではなく、その思想と行動は次第に自由な、献身的理想主義者、また国境のない世界平和主義者の境地へと昇華していった。これまで彼は国内の経済復興に目を向け、人間中心の、小日本主義的生産力発展論を主張してきたが、小日本主義的経済発展の道筋が定まった後、その実現を保障する国際環境の改善に力を注ぐようになった。このあたりから、湛山が新たに唱えだしたのは、脱冷戦を目指し、東西の和合、人類の平和を謳った「日中米ソ平和同盟」論である。
 一方、一九五〇年代の後半に形成されたこの先駆的な構想は、激しい冷戦対立の時代環境の下でその価値がほとんど認識されず、「出来ぬ相談だ」「大概の人はこのことを聞いただけで逃げ出してしまう」ほど、周囲の人間、とりわけ共産主義を敵視する保守陣営の政治家たちから冷ややかな目で見られていた。そのため、湛山の孤独な努力にはほとんど実効が現れず、政府の政治外交政策に影響を及ぼすことも出来なかった。そしてその構想は六〇年代後半、湛山の政界引退と共に悄然と姿を消し、今その存在でさえ、ほとんど知られていない。
 しかし、その三〇年後、冷戦の象徴たるベルリンの壁の崩壊、およびその後の世界情勢の推移を見ると、我々は湛山の予見の正確さに驚嘆せざるを得ない。敗戦前から戦後日本の経済針路を予見した小日本主義構想と同様に、東西の和合を目指す「日中米ソ平和同盟」の構想も、二〇世紀後半の国際関係の流れに合致していたと言える。
 この埋没された、湛山晩年の構想の全貌を明らかにし、東西の和合が当然視される現代において、和解の途を開拓した彼の先駆的努力と、時代を超えたその思想的価値を再評価するのが、本書の目的である。また、政局混迷、国民の思想保守化、改憲、防衛力強化の議論が進行しつつある現在、湛山晩年の護憲主張、軍備撤廃論、徹底した世界平和思想を再提起することも、時代の亀鑑とする現実的意義があろう。本書は、国会図書館、石橋湛山記念財団が保管していた『石橋湛山文書』を始め、この時期における湛山の言論、活動記録に基づいて構成した実証的研究であり、ほとんど知られていない石橋湛山晩年の小伝としてのねらいも併せ持っている。

著者プロフィール

姜 克實(ジャン クウシー)

1953年、中国天津市生まれ。現岡山大学教授。日本近代史専攻。
文化大革命の動乱を経て1982年、南開大学卒業。復旦大学大学院を経て1983年、国費留学生として来日、1991年早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程を修了(文学博士)。
早稲田大学助手、岡山大学助教授を経て現職。
〈主な著書〉
『石橋湛山の思想史的研究』早稲田大学出版部、1992年(第14回石橋湛山賞受賞)
『石橋湛山——自由主義の背骨』丸善ライブラリー、1994年
『現代中国を見る眼——民衆から見た社会主義』丸善ライブラリー、1997年
『石橋湛山の戦後——引き継がれゆく小日本主義』東洋経済新報社、2003年
『浮田和民の思想史的研究——倫理的帝国主義の形成』不二出版、2003年

※送料は無料です
※版元より営業日2~5日でお届けします
※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカード(VISA、MasterCard、DC、JCB、AMEX、Diners、Nicos、UFJ)がご利用になれます


タグで関連している本:

  • まだ見つかりません

コメントとトラックバック »

まだコメントとトラックバックはありません

TrackBack URI : http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-7503-2440-1.html/trackback/

コメントをどうぞ

お寄せいただいたコメントは、当サイトに掲載されますが、内容によっては削除させていただく場合がございます。なお、コメントへの回答は原則としていたしておりません。当サイト・著者・各版元へのお問い合わせの際は、お問い合わせフォームをご利用下さい。

▲ページの上端へ