特集 発達相談と援助そだちと臨床 Vol.1
『そだちと臨床』編集委員会:編
発行:明石書店
この版元の本一覧
B5判 148ページ 並製
定価:1,600円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2416-6(4-7503-2416-7) C0311
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年10月
書店発売日:2006年10月05日
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紹介

福祉臨床の最前線で働く専門職が編集委員となってつくる発達臨床の専門誌。子どものそだちを支援する現場の人たちに役立つ知恵を結集。特集は発達相談と援助,事例研究とプライバシーの2本。団士郎のエッセイ,新しい法律や制度を概観する行政アップ・トゥ・デイなど読み応えある連載も。

目次

創刊にあたって
特集 発達相談と援助
 役に立つ発達臨床を追い求めて
  ——ミネルヴア書房刊『発達相談と援助』のあと[川畑隆(本誌編集委員)]
 誌上カンファレンス
  ——新版K式発達検査2001による検査データの読み込みから[東方愛(本誌編集委員)]
 対談 大六一志(筑波大学講師)×大島剛(本誌編集委員) WISCの世界、K式の世界
 公開します! 発達相談のコツとツボ[戸倉幸恵/上松幸一(本誌編集委員)/勝亦弥生]
 援助職は何を学んだか
  ——ルポ ワークショップ・イン・熊本[菅野道英(本誌編集委員)/佐澤智恵子]
 たとえ話で納得! 発達臨床心理学用語講座[『そだちと臨床』編集委員会]
特集 事例研究とプライバシー保護
 個人情報保護法とプライバシー[中川利彦(弁護士)]
 座談会 本誌で事例をどのように扱うか、配慮すべきことは何か[本誌編集委員]
 事例を扱ううえでの編集方針
連載
 「そだちと臨床」を支える人たち
 「家族の構造理論」私風 第1回 内と外[団士郎(仕事場D.A.N)/立命館大学大学院]
 みん&もこのりんしよう談義1「薄い」
 行政up to date
  障害者自立支援法/市町村における児童相談/少年法の改正
 Windows of Books
  私のすすめる書籍・論文 No.1 大阪市編
 一時保護所論序説 第1回 新たな自分を見出す〈再生〉の場所
 [小木曽宏(淑徳大学教員)/本誌編集委員]
編集後記/次号予告

前書きなど

創刊にあたって
 はじめてお目にかかります。定期刊行(年2回)雑誌『そだちと臨床』です。どうぞよろしくお願いします。
 さっそくですが、この雑誌の発行をつうじて、「そだちと臨床」にかかわる現場スタッフが、日頃の実践をもとに培った発達臨床における現場の知恵を結集したいと考えています。そして、それぞれの現場の「そだちと臨床」実践の向上に役立つことをめざします。
 編集委員のほとんどは、児童相談所をはじめとする福祉臨床の現場で仕事をしてきました。そして、これまでにも、日々の業務の合間をぬってさまざまな地域で働く同業種の人たちとの交流を図り、お互いの臨床実践の力量の向上に努めてきました。今回、「そだちと臨床」に関連あるより多くの人たちと実践や意見を交換し、実際に役立つ現場の知恵の蓄えと発信の場にしようと、この新しい雑誌の刊行を決めました。

「そだちと臨床」観
 子どもたちは与えられた環境のなかで自らそだっていきます。その道筋は、その子の特性のみによっているのではなく、また家族や地域、社会のありかたなど周囲からの一方的な影響だけで決まるものでもありません。子どものそだちの道筋は、子ども自身が周囲を巻き込みながら、また巻き込まれながら複雑な様相をみせるものであると考えています。そして、その道筋の途上で、気がかりな症状や問題行動といわれる障壁があらわれる場合もあります。私たちは、この症状や問題行動も社会的なその子の「そだち」という観点からとらえ、もつれた糸をほぐすように、そして「そだち」の方向を見据えながら、子ども自身と家族や地域社会に対してていねいに働きかけています。
 このような援助は、一人の臨床家(各種の専門職)による面接室での治療だけでできるものではなく、いろいろな職種間の協働(コラボレーション)が重要です。もっとも「面接室での治療」が成立しない場合も多くあり、子どものよりよい「そだち」を目標にした協働は、さらにその重要性を増しています。援助につながる道筋の端緒はどんなところに転がっているかわかりません。それを見つけ援助につないでいくためには、見つけることのできる“たしかな目”を、関係者が共同して自分たちの中に持ち続ける努力が必要です。そのために、一人の臨床家は自分の属する組織内でのチームワークをよくしなければなりませんし、組織と組織の間の連携が有効になるような働きかけを工夫する必要があります。

「臨床」と社会
 「臨床」という言葉が、医療現場だけではなく広く使われるようになってきました。「臨床心理学」「臨床福祉学」「臨床教育学」などは、ここに挙げた順番にポピュラーになってきているようです。本誌のタイトルにこの言葉を入れたのもその流れにそっています。
 「臨床」といえば「専門性」とセットで認識されます。もちろん、臨床の「専門性」を高め、専門的に扱っていくことは重要なことですが、「そだち」に関することは、その問題が複雑なものであればあるほど一専門領域だけでは扱えません。ところが、ある子どものことでむずかしい問題が起きると、むずかしいということと子どもの専門機関の存在とがリンクして、地域社会が解決を丸ごとその専門機関に委ねてしまうように見えることがあります。そしてそのときに、問題のむずかしさに窒息し思考を停止したかのように、一足飛びの解決を求める短絡的な圧力が専門機関に向けられたりしがちです。
 私たちは専門家として、目の前の“やっかいなこと”の場あたり的な処理ではなく、長い発達の道筋を想定しながら、その子のいまを創り出さなければなりません。そして、「子どもがそだつ」「子どもをそだてる」「子どもをそだてる人たちをそだてる」「援助する」とは具体的にどういうことなのかについて、想像力を高めながら考え合い、それを地域社会にアピールしていく役目も負っているように思います。

臨床心理学への視点
 編集委員の多くは臨床心理学を専攻しており、臨床心理学の視点からそれぞれの現場で対人援助(臨床)活動を行なってきました。さまざまな社会的要因の渦巻く現場は、臨床心理学をオールマイティなものとしてではなく体験させてくれます。私たちは私たちなりに、その体験をとおして、臨床心理学の備えていなければならないことや、臨床心理学を実践する者が身につけておくべき社会的な“バランス感覚”などについて、考えてきたと思っています。「何を根拠に何をしようとしているのか。そしてそのことは妥当なことなのか」という問いかけは、私たちが大切にしているものです。それには、アセスメント(査定)を含めた仮説構成や、実践によるその仮説の修正の重要さ、方法論は自己目的化されることなく柔軟であるべきこと、偏った心理主義に陥らず社会的視点を十分に含み込むこと……等々が含まれています。本誌では、これらに関する記事も多く顔を出すことでしょう。

本誌の読み手と書き手
 私たちは、この雑誌を「そだちと臨床」にかかわる現場から立ち上がっていくようなものにしたいと思います。
 本誌の中心的読者として想定しているのは次の方々です。
 児童・思春期・障害者福祉臨床やその近接領域に従事している各職種(ソーシャルワーカー・心理職・各相談員・児童指導員・保育士・医師・各セラピスト・保健師・看護師・助産師・教師・弁護士・法務関係者・司法関係者・その他の実務家・研究者・大学院生や研究生)の方々、この分野に興味・関心をお持ちの他分野の実務家や研究者、その他の方々です。
 そして、書き手としてお願いしたいのもこの方々です。
 じつは、編集委員の一部が中心となって、これまで『そだちと援助——児童・思春期・知的障害者福祉臨床の展開』という雑誌を自主発行してきました。その雑誌では読者の交流の場を強く意識し、投稿いただいた原稿は最小限の編集を経てすべてを掲載する方針が採られていました。
 新しく刊行する『そだちと臨床』の記事原稿(編集委員会からの執筆依頼によるものと、自主的に投稿していただくものがあります)については、いただいた原稿に関して編集委員会からの要望もお伝えしながら、よりよい記事となるよう共同作業をさせていただく場合もある、という方針で進めたいと思っています。

 裏話的な編集方針も書いてしまいましたが、読者の皆様と一緒に作っていける、現場にどっぷりつかった、ある意味で“泥くさい”雑誌を作りたいと思っていますので、どうぞごひいきによろしくお願いします。

2006年9月
『そだちと臨床』編集委員会

著者プロフィール

『そだちと臨床』編集委員会(ソダチトリンショウヘンシュウイインカイ)

川畑 隆/菅野道英/大島 剛/宮井研治/笹川宏樹/梁川 惠/伏見真里子/衣斐哲臣/木村辰己/東方 愛/上松幸一/小木曽宏

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