非武装中立論
石橋 政嗣, 大塚 英志:解説
発行:明石書店
この版元の本一覧
四六判 280ページ 並製
定価:1,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2398-5(4-7503-2398-5) C0031
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年09月
書店発売日:2006年09月15日
※送料は無料です
※版元より営業日2~5日でお届けします
※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカード(VISA、MasterCard、DC、JCB、AMEX、Diners、Nicos、UFJ)がご利用になれます
タグ: none

紹介

元社会党委員長の80年代30万部のベストセラーに,大塚英志の解説をつけて復刊。「戦争をしてはいけない」となぜか言えなくなってしまった人たちに,いまに通じる「憲法9条を実践する」という自主独立の思想,対立から和解への道を提唱する。

目次

復刊によせて(大塚英志)
 可能性としての「非武装中立」——何故「ことばの力」に安全保障を託すべきなのか
はしがき
第一章 平和憲法と非武装中立
 新たな「戦前」への動き/強まる制服組の発言力/日米共同作戦と海外派兵/憲法の空洞化と歪曲の歴史/「交戦権」認めた法制局長官/ねらいは憲法改悪と軍事大国
第二章 非武装中立と自衛隊
 自己増殖を続ける軍事力/アメリカの軍備増強の押しつけ/軍事費増と死の商人/仮想敵国ソ連と「日米共同防衛」/「非武装中立」の条件/「愛国心」の意味/「非武装中立」へのプロセス
第三章 非武装中立と日米安保条約
 アメリカの世界戦略の変化/軍事同盟と共同責任/日米政府それぞれのねらい/共同作戦計画と対ソ包囲/高級軍人の本音とは/死の商人の論理/恐怖の均衡か平和友好の拡大か
第四章 平和憲法と有事立法
 形骸化したシビリアン・コントロール/栗栖発言と防衛庁統一見解/“非常時”立法と機密保護法/有事立法の三つのケース/「三矢計画」の中身/有事立法とわれわれの闘い
第五章 八〇年代と非武装中立
 強まるファッショ化の危険性/憲法感覚の変化と自衛隊のひとり歩き/行政権力の強化と教育・マスコミの変化/革新退潮の要因/改憲への突破口と安全保障の道/「極東の平和と安全」とは/軍国主義の芽と核戦争の可能性/いまこそ「憲法改正」阻止の闘いを
解 説(大塚英志)
 「虚勢」ではない安全保障論をいかに語るか

前書きなど

復刊によせて(大塚英志)
可能性としての「非武装中立」——何故「ことばの力」に安全保障を託すべきなのか
 本書は一九八〇年一〇月二五日、日本社会党中央本部機関紙局から刊行された石橋政嗣著『非武装中立論』を復刊したものである。最初にお断りしておけば、今回の刊行にかつて「日本社会党(社会党)」であったところの現在の「社会民主党(社民党)」は、一切、関与していない。つまり「政党的背景」も「政党的意図」もない。まして本書の刊行は「社民党」の先祖返りを意味するものではないし、そのような狭く、つまらない文脈で受けとめてほしくはないので、まず、そのことを記しておく。
 本書の刊行は、あくまでぼくの全くの個人的な考えに基づき希望したものだ。日本国憲法前文及び九条をめぐってかつて「非武装中立」という選択肢が存在したことを思い起こし、その可能性を改めて受け止めることは、「改憲」が具体的な政治日程に上り、「在日米軍再編」の名の許に自衛隊がアメリカの軍事戦略の中にあからさまに位置付けられてしまった現在、必要だと感じているからに外ならない。
 刊行から二十数年を経た現在、本書の前提となった米ソの冷戦構造も、また、本書の刊行元だった社会党ももはや存在していないどころか、そのような歴史さえ記憶しない世代が「若者」の大半を占める現在にあって、しかし、本書に記された、安全保障における一つの徹底したあり方はむしろ新鮮でさえある。それは「前文」と「九条」の理念を愚直に政策化すれば「非武装中立」しかありえないにもかかわらず、過去も現在もこの国は、憲法をいかに裏切るかにのみ腐心してきた結果、この国は自分たちの憲法に定められた思想を政策化することが出来なくなってしまっているからである。「九条」を正面から政策化することを実はぼくたちは「戦後」が始まって以降、ずっとサボタージュしてきた。「非武装中立」という発想はそれ故、もはや思考の枠外、選択の枠外に置かれてしまっている。しかし、それは正しいことなのか。
 今や世論調査においても「改憲」を肯定する層が多数派となりつつあり、二大政党も実質的な改憲政党である中で、「改憲」のポイントは現に存在する実質的な軍隊としての自衛隊と武力の保有や戦争行為を自らに禁じた「九条」との乖離を、いうなれば違憲としてある「現実」の方に「理念」である憲法を近付けることが共通の前提となっている。しかし、違憲状態を自ら作り出しておいてそれを正すのではなく、違憲状態を合理化するために憲法を改めよ、という思考そのものが冷静に考えればいかに倒錯しているかは、本当は誰にでもわかるはずだ。「非武装中立」という政策は、「九条」に即して違憲状態にある「現実」の側をこそ改めよ、という、もはや現在のこの国では思考の外側に置き去りにした、戦後社会のもう一つの選択肢、もう一つの可能性の所在が「コロンブスの卵」のようにありうることを思い出させてくれる。「現実」に「理念」をいかに合わせるか、という「理念」の敗北もしくはサボタージュの辻褄合わせの中でしか現在の憲法論議がなされない中で、「非武装中立」という思考は「現実」を「理念」に向けていく、というもう一つの、あたりまえの選択肢もまたありうるのだということを、ぼくたちに気付かせてくれるように思うのだ。
 正直に言ってぼくはかつての社会党にも、現在の社民党にも特別の思い入れはない。ただ「九条」を護ることを政策として掲げているのが社民党と共産党の二党でしかないから、選挙の際はどちらかの政党の比較的ましな候補者に投票するしかないだろう、といった形で仕方なく彼らとは関わっている。社民党に頼まれれば彼らのイベントで話すこともあるし、共産党の『赤旗』にコラムを書いたこともあるが、それは「九条」についてどこでも誰とでも話すのがぼくの原則だからで、小林よしのり氏の『わしズム』であっても西部邁氏の『表現者』でも、ぼくは同じことを同じように話す。だから、繰り返すがぼくは古き良き社会党へのノスタルジーとして本書を評価するわけでもない。そもそも若者だった時のぼくは「おたく」や「新人類」のはしりだから、ぼくより年上の人々が抱く社会党へのどうにも倒錯した感情そのものを実は理解しえない。知ってはいるが、理解する必要のないものであることも「知って」いる。そうではなく、本書がかつて示した九条ないし安全保障に対する「非武装中立」という立論そのものを気付かぬ内に(もしくは意識して)自らに禁じてしまったこの国の思考停止ぶりに強い危惧を覚えるからこそ、本書を再び世に問いたいのだ。
 なるほど、この国が「武装」し「日米同盟」に参加することが全ての論議の前提となっている現在、「武装」せず、どの国の軍事戦略にも加担しないという選択肢を理想主義、空論と鼻で笑うことは簡単だ。しかし、もし北朝鮮が攻めてきたら、もし中国が攻めてきたら、という類いの想像力をいたずらにたくましくし、それが安全保障論の根拠となっているのが現状だ。だとすれば、そうではない別の方向に自分たちの想像力を具体的に積み重ねていく努力をすることで、この国の世論は少しは冷静さを取り戻すべきではないか。
 そのように考え、ぼくは新たな版元となった明石書店を介し、著者の石橋政嗣氏から復刊の了解をいただいた。
 それにしても本書の復刊は、ある世代、ぼくよりわずかに上の世代に始まる人々にとって、彼らがすっかり忘却し、そしてできればなかったことにしたかった記憶を、何もわかっちゃいないぼくがわざわざ埃をはたいて持ち出してきた、余計なお世話のように見えるかもしれない。実際、刊行に至るまでにそういう声がいくつも聞こえてきた。ようやく国論が憲法の「改正」も「愛国心」も「自衛軍」もよし、というところでまとまりかけているのに、と、「戦後民主主義」的なるものを罵倒し、ただ清算することに熱心だった人々は思うのだろう。
 しかしぼくが本書を復刊しようと考えたのは、これが過去の思想、終わってしまった思想ではなく、これからの思想としてあるべきだと考えたからだ。例えば本書の復刊に際して時代錯誤もはなはだしいという声が当然、聞こえてくるだろうが、そもそもが石橋政嗣氏の名さえ恐らくは聞いたことのない世代に向けて、この国がこれからでもとりうる自分たちの選択肢として「非武装中立論」という「新しい思想」を構築する第一歩としてのみぼくは本書の復刊を考えるものだ。だから石橋氏には失礼な言い方になるかも知れないが、ぼくは「非武装中立論」がたった今「使える」と考え、かつて本書の立場を支持した人々が本書のことを忘れてしまったのなら、ぼくたちが「もらってしまおう」と呼びかけようと思う。
(中略)
 かつて社会党があった時代に書かれた本書はそれ故、「非武装中立論」を社会党が担うという自負に満ちていて、あるいはその部分に現在の読者は違和感を持つかもしれない。だが、もはや「非武装中立論」を担おうとした社会党はなく、それ以外の政党も引き受けないのであれば、尚のこと「前文」と「九条」の可能性を信じる人々が、これを新しい思想として引き受けて、作り直せばいい。その意味で本書が石橋氏には本当に申し訳ないが、石橋氏の名も社会党さえも知らぬ世代に、「新しい思想」の出発点として届くことを強く願う。

二〇〇六年七月

著者プロフィール

石橋 政嗣(イシバシ マサシ)

1924年、台湾生まれ。台北経済専門学校卒業。全駐労佐世保支部委員長、長崎県労評議長、長崎県議を経て、1955年に衆議院議員となる。以後連続12回当選。この間に、日本社会党総務局長、国際局長、書記長、副委員長を歴任。1983年9月〜1986年9月、中央執行委員長。1987年11月〜1991年11月、憲法擁護国民連合議長。著書に、『「五五年体制」内側からの証言——石橋政嗣回想録』(田畑書店)など。

大塚 英志(オオツカ エイジ)

1958年、東京都生まれ。まんが原作者・批評家。神戸芸術工科大学教授。まんが原作者として多くのヒット作を持つ一方で、戦後世代の責任として憲法についての発言を続ける。中高生に自分のことばで「憲法前文」を書くことを呼びかける「護憲」の方法を提唱。憲法に関わる著書に、『読む。書く。護る。——「憲法前文」のつくり方』(角川書店)、『憲法力——いかに政治のことばを取り戻すか』(同)、『みんなの憲法二四条』(明石書店、共著)など。

※送料は無料です
※版元より営業日2~5日でお届けします
※お支払いは郵便振替(到着後後払い)・クレジットカード(VISA、MasterCard、DC、JCB、AMEX、Diners、Nicos、UFJ)がご利用になれます


タグで関連している本:

  • None

コメントとトラックバック »

まだコメントとトラックバックはありません

TrackBack URI : http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-7503-2398-5.html/trackback/

コメントをどうぞ

お寄せいただいたコメントは、当サイトに掲載されますが、内容によっては削除させていただく場合がございます。なお、コメントへの回答は原則としていたしておりません。当サイト・著者・各版元へのお問い合わせの際は、お問い合わせフォームをご利用下さい。

▲ページの上端へ