発行:明石書店
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四六判 344ページ 上製
定価:3,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2321-3(4-7503-2321-7) C0336
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年04月
書店発売日:2006年04月18日
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韓国フェミニズムの今日を築き,それぞれの専門分野でも著名な研究者の論文をまとめ紹介した希有の書。女性学,文学,哲学,倫理学,法学,教育の各分野から構成,韓国フェミニズムの斬新な活力と韓国固有の課題を模索する姿が多くの貴重な示唆を与える。
目次
刊行に寄せて(チャン・ピルファ)
第1章 性差別と性倫理(チャン・ピルファ)
第2章 我われの生に内在する軍事主義(クォン・インスク)
第3章 北朝鮮文学に現れた女性登場人物形象化の意味(キム・ヒョンスク)
第4章 哲学におけるフェミニズム受容と哲学体系の変化(イ・サンファ)
第5章 韓国女性の生の脈絡から見た女性主義倫理学(シン・オクヒ)
第6章 家族法上の性差別(シン・イルリョン)
第7章 韓国女性と未来の梨花女子大学(ユン・フジョン)
解 説(西村裕美)
初出一覧
人名索引
著者・編訳者紹介
前書きなど
解 説
本書は、韓国フェミニズムの今日を築くうえで大きな足跡を残した研究者たちとそのこころざしを受け継ぎ今後を担う中堅・若手研究者たちの論文を集め、広く日本の読者に紹介することを意図して、元来、別媒体に掲載されていたそれぞれの論文を、今回、編訳者があらたに編んだものである。
日本では、これまで欧米のフェミニズムに関する数多くの研究や翻訳書が公にされてきたが、韓国フェミニズム研究については、言語上の壁も加わって、依然として関心の向けられ方が希少の域を出ていない。本書において示されている韓国フェミニズムの斬新な活力や韓国固有の課題を模索する姿は、同じ東アジア圏の我われにとって学ぶに値する貴重な示唆を与えてくれるものとなるだろう。
本書の構成は、女性学、文学、哲学、倫理学、法学、教育の各分野の論文から成っている。そのいずれもが、韓国固有の主題を切り口に女性の変革と社会の変革を模索してきた研究者たちの、実践に裏付けられた論文であることが理解できるだろう。著者七名の大部分が韓国フェミニズムの分野では重鎮であるのみならず、それぞれの専門領域においても著名な研究者として知られている。また、著者のうち六名までが梨花女子大学関係者であるのは、韓国フェミニズムの今日をあらしめた点で梨花女子大学の存在が大きいからである。これに関して、以下で少しく言及しておきたい。
二〇〇五年六月、「第九回世界女性学大会」(Women's Worlds 2005)が約一週間にわたってソウルで開催された(一九日〜二四日)。世界七五か国から女性学研究者やNGO関係者など二三〇〇名が集い、大会期間中、一七〇〇編に上る論文発表・シンポジウム等における発表が行なわれた。もちろん、日本からも多くの参加・発表があった。この大会を共同で主催したのが、「韓国女性学会」と梨花女子大学であった。三年に一度のこの大会がアジアで初めて開催されるということもあって、準備段階から主催者側の意気込みには並々ならぬものがあった。女性学研究者たちのみならず広く韓国の女性運動界をも巻き込んで、韓国の女性界が総力をあげてこれまで蓄積してきた力をこの大会に結集させた。大会は大成功のうちに幕を閉じた。この大会で組織委員長としての重責を果たしたのが、チャン・ピルファ(第1章)であり、組織委員として後方で取り仕切ったのがイ・サンファ(第4章)である。そして、梨花女子大学の顔として、表舞台に立ったのがシン・イルリョン(第6章)とユン・フジョン(第7章)である。
この例からも明らかなように、梨花女子大学は韓国社会で女性の声を代弁するために、これまでもさまざまな政策を先取りしながら果敢にメッセージを発してきた。女性運動界にも多くの人脈を持つのは、梨花女子大学がこうした分野へも多彩な人材を送り出してきたためである。その意味で、梨花女子大学は、韓国の女性界全般において歴史的に中心的役割を担ってきたと言えるし、また、韓国フェミニズムは机上の理論構築のための一学問分野として捉えられるべきではなく、韓国社会のさまざまの女性運動と連携しつつ社会と女性の変革を目指した広さと深さを持つ大学発信の運動体として捉えられるべきである。本書を編むにあたって梨花女子大学関係者の論文が大部分を占めたのも、こうしたこれまでの経緯と無関係ではない。
(中略)
これら七点の論文を通して見える韓国フェミニズム固有の課題を三点あげるとすれば、それは、第一に家父長制の克服であり、第二に軍事主義の解体であり、第三に分断された朝鮮半島の統一を実現するという課題であるだろう。
一九九〇年代後半以降、韓国社会において民主化が進展する中で、フェミニズムの関心も日帝下の植民地支配に起因する国家や民族をめぐる諸問題をテーマとしたものから、世界の資本主義の動向を見据えた中での韓国の位置といったグローバリゼーションに関わるテーマの方向へと視点が移動してきた。特に、戸主制度の廃止が決定して以降の女性学会では、貧困や障碍者や保育など社会福祉と関連させて女性の人権に焦点を当てたフェミニズムに関心が持たれはじめている(なお、韓国女性運動の最近の動向については、以下を参照。ハン・ミョンスク〈韓明淑〉/聞き手 ユン・ギョンウォン〈尹京媛〉、ソ・キョンシク〈徐京植〉「インタビュー・時代をひらく——韓国女性運動の経験」『前夜』5号、二〇〇五年秋、一六六〜一八二頁)。
しかしながら、依然として韓国社会の現状は、前記の三つの課題をどれ一つとして十分に解決できてはいない。その意味では、今後、たとえ社会の諸矛盾の解決のために女性の人権の確立を主要課題として鮮明に打ち出した方向へと韓国のフェミニズムが進むにしても、家父長制と軍事主義と南北分断の現状を克服するという課題は、韓国固有のフェミニズムを定立するに際して基本に据えねばならない重要事項であると考えられる。
本書が、日本の読者に何がしかの刺激を与え、かつ韓国女性学界の発展のための一助となれば幸いである。
二〇〇六年二月 東京にて
西村 裕美
著者プロフィール
チャン・ピルファ(チャン ピルファ)
梨花女子大学大学院院長、同大学院女性学研究科教授(女性学)
英国サセックス大学にてPh.D.取得(女性=発展学博士)
【主要著書・論文】
『女性・身体・性』、「北朝鮮社会の性別役割分業」
クォン・インスク(クォン インスク)
明知大学教育学習開発院専任講師(女性学)
米国クラーク大学にてPh.D.取得(女性学博士)
【主要著書・論文】
『大韓民国は軍隊だ』、「ヘゲモニー的男性性と兵役義務──KATUSAの男性性を中心に」
キム・ヒョンスク(キム ヒョンスク)
梨花女子大学国語国文学科教授(韓国現代批評)
梨花女子大学大学院にて博士号取得(文学博士)
【主要著書・論文】
『韓国女性詩学』、「北朝鮮文学に表現された女性の主体性と指向」
イ・サンファ(イ サンファ)
梨花女子大学哲学科教授(社会哲学)
ドイツ・テュービンゲン大学にてPh.D.取得(哲学博士)
【主要著書・論文】
「性と権力」、「社会主義と男女平等」
シン・オクヒ(シン オクヒ)
梨花女子大学名誉教授(宗教哲学)
スイス・バーゼル大学にてPh.D.取得(神学博士)
【主要著書・論文】
『一心と実存──ウォンヒョとヤスパースの哲学的対話』、「女性・実存・他者—実存哲学の他者概念と現代女性学」
シン・イルリョン(シン イルリョン)
梨花女子大学総長(労働法)
梨花女子大学大学院にて博士号取得(法学博士)
【主要著書・論文】
『法女性学』(共著)、『労働人権と労働法』
ユン・フジョン(ユン フジョン)
学校法人梨花学堂理事長(憲法学)
米国ノースウェスタン法科大学院にてPh.D.取得(法学博士)
【主要著書・論文】
『法女性学』(共著)、『女性の人間化のために』
西村 裕美(ニシムラ ヒロミ)
立教大学コミュニティ福祉学部教授(近代英米キリスト教思想)
同志社大学大学院神学研究科博士後期課程修了(神学博士)、梨花女子大学アジア女性学センター客員研究員(2000年−2002年)
【主要著書・論文】
『小羊の戦い──17世紀クェイカー運動の宗教思想』(未来社、1998年)、『韓国人権運動の証言』(ソ・ジュンシク著、共編訳、明石書店、2001年)
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