アジア・市民・エンパワーメント進化する国際協力NPO
特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会:編
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 384ページ 並製
定価:2,600円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2307-7 (4-7503-2307-1) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2006年03月 書店発売日:2006年04月07日
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紹介

バングラデシュ,ネパールでの海外協力30年。現地事務所襲撃事件,たび重なる資金難等の危機をどう乗り越え,基盤を広げてきたのか? 現場の熱いメッセージを日本社会はどのように受け入れてきたのか? NPOが進化するための秘訣がつまった渾身の一冊。

目次

はじめに
バングラデシュ地図
ネパール地図
第一章 創設から鎌倉合宿までの一五年間 1972年—1987年
 第1節 バングラデシュ復興農業奉仕団を派遣する
 第2節 HBCの誕生
 第3節 現地事務所を開設へ
 第4節 ポイラ村に行く
 第5節 女性の手工芸品生産組合を結成する
 第6節 東京事務所生まれ変わる——第二次HBCへ
 第7節 ポイラ村事務所が襲撃される
 第8節 バングラデシュ人によるショミティ方式のはじまり
 第9節 資金難と方針転換
 第10節 ショミティ連合の試み
 第11節 進化するショミティ
 コラム ポイラ村事務所襲撃事件
第二章 手探りの組織化 1987年—1990年代初頭までの日本の動き
 第1節 混沌としたエネルギーのなかで
 第2節 鎌倉合宿——専従スタッフとボランティアによる新体制づくり
 第3節 新体制がスタートする
 第4節 日本社会からの評価とネットワークの形成
 第5節 離れゆくメンバーと難航する組織化
 第6節 事務局体制の立て直し——新しい人材を求めて
 コラム 福澤が語る会報デザインの変遷——バングラデシュの文化や人々を伝えたかった
第三章 拡大する現地の活動と開発協力NGOとしての役割 1987年—2000年初頭までのバングラデシュの動き
 第1節 地域活動センターへの転換
 第2節 NGOブームとマイクロ・クレジットブーム
 第3節 進む日本の公的機関との連携
 コラム ショミティメンバーの横顔
第四章 新しい協力対象国ネパールへ 1994年—2003年
 第1節 新しいプロジェクト地を求めて
 第2節 長期調査、そしてパートナーを選ぶ
 第3節 ネパールでの活動
 第4節 活動国拡大の意義とは何か
 コラム マオイスト問題
第五章 市民が創るNGOとしての日本での活動と組織化 1990年初頭から2000年代前半まで
 第1節 参画するボランティア
 第2節 地域へ広がる輪
 第3節 日本社会への働きかけ——会員拡大とNPO・企業との協働
 第4節 組織運営の強化と法人化
 第5節 NPO法人化でみえるもの
第六章 もうひとつの海外協力のかたち 1987年—2003年のクラフトリンク活動
 第1節 「クラフトリンク」前史——一九七四年から一九八六年まで
 第2節 手工芸品で海外協力——一九八七年から今日まで
 第3節 日本の販売協力者たち
 第4節 活動資金源として事業を拡大
 第5節 クラフトリンク発足までの道のり
 コラム 彼女の得たもの〜ミルク、そして自信〜
第七章 国際NGOの役割 1997年のバングラデシュでのストライキが問いかけるもの
 第1節 バングラデシュでストライキ発生
 第2節 ストライキに至るまで
 第3節 シャプラニールのスタッフとは誰なのか
 第4節 交渉はどのように進められたのか
 第5節 なぜ起こったのか——ストライキからの学び
 第6節 ストライキが残したもの
 第7節 国際NGOとしての役割
第八章 シャプラニールの今日、そしてこれから
 第1節 理念の転換——援助から協力へ、協力から「共生」へ
 第2節 今日の海外協力活動
 第3節 クラフトリンク活動の今
 第4節 今日の国内活動と組織運営
 《付録》シャプラニールの今後の方向性——中期ビジョン
あとがき
用語解説
年表

前書きなど

はじめに
 シャプラニール=市民による海外協力の会がNGOとして一九七二年に活動を開始してから三四年がたちました。設立当時はまだNGOとよばれる団体も少なく、社会にも認知されていない状況でしたが、今ではNPOやNGOの活動が新聞に載らない日がないほどになり、市民セクターがまさに「市民権」を得たかのようです。私たちの主な協力先であるバングラデシュとネパールにおいても実力のある現地NGOが育ち、行政や企業に伍するようになってきています。
 「市民による海外協力」を掲げ、数多くの市民が、バングラデシュの人々とともに、一つひとつの課題に対して議論に議論を重ね、失敗を踏み台にして経験を培ってきたシャプラニールは、「進化するNPO」としてとどまることなく前へ前へと進むベクトルをもち続けています。
 本書では、シャプラニールの活動の八〇年代から現在にかけて、特に紙面を割いて執筆しました。この時期はシャプラニールにとって、活動の規模と内容が大きく変わった二〇年間です。まず、活動対象国がバングラデシュ一カ国からネパールを加え、二カ国となりました。また、緊急救援活動については、広く南アジア全域を対象とするようになっています。活動地域についても農村部に加えて深刻になる都市部での問題にも取り組みはじめています。
 農村開発に目を向ければ、これまで生活向上のための相互扶助グループ(ショミティ)支援がシャプラニールのバングラデシュにおける主な開発手法であったのに対し、農村の社会状況の変化に伴い、ショミティを中核に据えながらもその手法の内容に変容がみられはじめています。さらにプロジェクトの実施にあたっては、シャプラニール本体が直接行う形から現地NGOをパートナーとして協働していく「パートナーシップ方式」に切り替えはじめた時期でもあります。
 組織的には任意団体から特定非営利活動法人(NPO法人)格を取得し、名実ともに責任ある社会的立場をもつと同時に、これまで培った知見、経験や人脈を活用してODAやNPOに対して広く知的に貢献していこうという動きも出てきています。一方、財政・運営的にはやたら規模を大きくすることなく、民主的な意思決定の体制やきめの細かい組織運営を保てる範囲内にとどめています。
 国際社会に目を向ければ、国際連合が採択したミレニアム開発目標の筆頭に掲げられている貧困撲滅については、各ステークホルダーの努力にもかかわらず、いまだ解決の途は見いだせていない状況です。グローバリゼーションの拡大やインターネットの拡大による、さらなる貧富の格差も認められています。こうした状況下で、小さな規模のNGOであるシャプラニールの役割は何なのか。「国際NGOとしてのシャプラニールの役割」についてもずっと議論を続け、現時点での一定の結論を見いだしつつあります。
 現在のシャプラニールは、組織のミッションとして、「南北問題に象徴される現代社会のさまざまな問題、とりわけ南アジアの貧しい人々の生活上の問題解決に向けた活動を現地および日本国内で行い、すべての人々が豊かに共生できる地球社会の実現」を掲げています。開発の分野ではあまり語られることのない「共生」をキーワードに、富める者が貧しい者へ単に「援助」するという考えではなく、お互いが学び合うなかで「共生」していこうという姿勢をもちつつ、当事者自らが主体的に社会を変えていくことを活動の原則に据えています。
 九・一一以降、「平和構築」や「紛争予防」が国際協力分野における政府や世論の主要な関心となるなかで、南アジアの貧困問題のような「静かなる緊急事態」はあまり注目されなくなりました。シャプラニールはこうした状況下、草の根の立場から見過ごされがちな課題に対して取り組むほか、国内においては市民セクターの社会的ポジションの確立に向けて積極的に寄与することを使命と考えています。こうした考え方は、七〇年代、八〇年代の議論を経て、本書に主に記した期間に確立してきたものです。
 なお、設立当初から八〇年代前半までの活動については第一章にまとめました。シャプラニールの活動には実に多くの市民が参画してきました。今回、十分な活動実績がありながらも、そのすべてを書けていないこと、また熱い議論の過程をすべては再現できていないことは重々承知していますが、どうかご寛恕ください。
 日本の一つのNGOが活動を組み立ててきた軌跡から、関わった市民の熱い思いを読み込んでいただければ幸いです。

シャプラニール=市民による海外協力の会

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