
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 296ページ 上製
定価:5,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2239-1 (4-7503-2239-3) C0036
品切・重版未定
奥付の初版発行年月:2005年12月 書店発売日:2005年12月14日
あらかじめご了承下さい。
紹介
昨今の報道による人権侵害問題の深刻さに鑑み,救済手段の一つとしての反論権に着目し,法的・ジャーナリズム的観点からその反論権の本質に迫り,かつ諸外国の実体との比較検討などによって,日本における反論権制度の導入に向けての考察を行う。
目次
はじめに
第一章 序 論
第一節 問題の所在
第二節 研究目的及び研究主題
第三節 研究方法と範囲
第二章 反論権の本質
第一節 反論権の概念と沿革
第二節 反論権の性質
第三節 権利救済システムとしての反論権
第三章 外国にみる反論権
第一節 フランスにおける反論権
第二節 ドイツにおける反論権
第三節 韓国における反論権
第四節 アメリカにおける反論権
第五節 イギリスにおける反論権
第六節 各国反論権の比較考察
第四章 日本における反論権論
第一節 反論権の沿革
第二節 反論権論の再考
第三節 反論(権)導入に向けて
第五章 結 論
付 録
付録1 反論権法(仮)
付録2 放送法改正(仮)
付録3 BRC関連規定の一部改正(仮)
付録4 プレス評議会(仮)による被害救済の仕組みの骨子
索 引
おわりに
前書きなど
はじめに
近年、日本ではマス・メディア報道による名誉毀損、プライバシー侵害をはじめとする「報道被害」が増えている。この間メディア界は第三者機関の設置・運用、メディアスクラム(集団的過熱取材)対策など、取材・報道上の諸問題に自主的に取り組み、一定の成果を上げているものの、「報道被害」は根本的に軽減されておらず、依然として大きな課題となっている。特に著名人を中心に「報道被害」をめぐって法的争いに発展するケースも少なくない。もちろん、関連訴訟の増加には人権意識の高揚、マス・メディアの表現の自由に対する裁判所の消極的評価など他の要因もあるため、マス・メディアの表現活動の内容や態度を一方的に問題視することはできない。
一方、最近個人情報保護法の制定に加え、人権擁護・救済、青少年保護等を名目とする立法化の動きに伴い、マス・メディアへの未曾有の公的規制ムードが漂っている。これらの立法背景や構想理念の重要性は、今日の社会情報環境の負の現状からすれば十分理解できる。しかし、これらは表現・メディア規制にやや傾斜していることもあり、本来求められる立法のあり方からすれば疑念が残る。特に廃案となったものの再上程が予想される人権擁護法案は、とりわけマス・メディアによる人権侵害を注視しており、被害救済に当たり新設の行政機関の裁量を大幅に認めていることから、表現の自由の観点から懸念がある。
他方で、名誉毀損訴訟等における慰藉料額の高額化が顕著になっている。このような傾向は、現行の免責法理について十分な吟味がなされないまま展開されているため、マス・メディアの表現活動の萎縮が憂慮される。すなわち、名誉の保護と表現の自由の保護との調整を図る見地からすれば、原告の社会的地位を問わず表現者に厳格な立証責任を負わせる名誉毀損訴訟の実際に配慮を欠き、単に侵害された権利を補する賠償額の調整に力点を置くことは問題と言わなければならない。
確かにマス・メディアへの安易な公権力の介入は許容してはならないが、昨今の「報道被害」をめぐる複雑な問題状況に照らせば、被害解決・救済のあり方を多角的に検討する時期にきているのではないか。「報道被害」はなるべく抑制・予防すべきであり、「報道被害」が発生したとしても、早い段階で両当事者の話し合いによって解決するのがもっとも理想的である。しかし、現実は両当事者の自主的交渉が決裂し、法的争いを余儀なくされるケースも多い。加えて、裁判の結果は必ずしも両当事者を満足させる内容になるとは限らない。そこで、「報道被害」の性質や程度にもよるが、マス・メディアの表現の自由を尊重しつつも、被害者に迅速で有効な解決・救済策を探求する必要があろう。
本書は、その一環として、日本では馴染みがない反論権を取り上げ、包括的な考察を試みるもので、著者の博士論文を基本としている。反論権は法学領域においても、ジャーナリズム領域においても重要な検討対象であるが、これまで日本では主に消極的に論じられてきた経緯がある。これに対して、本書は反論権を積極的に捉える立場から、反論権の本質をめぐる理論研究、比較法研究に加え、具体的な提案・検証を含む総合的なアプローチを試みる点で、大きな意義を有すると思われる。
著者は、反論権が「報道被害」の救済手段としてのみならず、民主主義の維持・発展に欠くことのできない言論の多元性の確保や、健全な世論の形成に資する客観的権利としての側面に留意しつつ、反論権の全体像に迫ることで、日本でのこれからの反論権論に一定の示唆を与えることを期待している。本書が、「報道被害」をめぐる現実的な問題に際し、国家権力、市民、マス・メディアの三者の関係に配慮して、バランスの取れた議論を深める一つの題材になれば幸いである。
2005年 初冬
著 者
著者プロフィール
韓 永學(ハン ヨンハク)
1971年韓国晋州市生まれ。1997年韓国・西江大学新聞放送学科(法学副専攻)卒、2003年上智大学大学院新聞学専攻博士課程修了。メディア倫理法制専攻。2003年4月より、北海学園大学法学部専任講師。
[主要著書および論文]
『報道の自由と人権救済』(共著、明石書店、2001年)、『個人情報保護法と人権』(共著、明石書店、2002年)、『誰のための人権か』(共著、日本評論社、2003年)、『住基ネットと監視社会』(共著、日本評論社、2003年)、「アメリカにおける反論権に関する一考察」『コミュニケーション研究』第31号、2001年、「名誉権と表現の自由に関する一考察—日韓の免責法理の比較を中心に—」『北海学園大学法学研究』第39巻第4号、2004年、「プライバシー侵害と出版事前禁止」『言論仲裁』第92号、2004年など。
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