台湾総督府と慰安婦
朱 徳蘭
発行:明石書店
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A5判 272ページ 上製
定価:4,500円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2215-5(4-7503-2215-6) C0021
在庫あり
奥付の初版発行年月:2005年11月
書店発売日:2005年11月10日
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紹介

日本の植民地時代の台湾では,日本軍慰安婦はどのように集められ,どのように戦場に狩り出されたのか。植民地経営のなかの「花柳業」の展開,植民地会社の深い関与,軍による直接,間接の関与など,様々な側面から台湾総督府の慰安婦問題への関わりを分析する。

目次

序論
第一章 日本統治時代の台湾における花柳業
 はじめに
 第一節 台湾における花柳業の発展
 第二節 台湾における花柳業と地域社会のつながり
 第三節 花柳業と社会問題
 むすびに
第二章 戦争と花柳業の関係
 はじめに
 第一節 戦争の拡大と台湾の重要性
 第二節 花柳業の国策への対応
 第三節 台湾総督府による花柳業者への干渉
 むすびに
第三章 渡航政策と台湾島内外の慰安所
 はじめに
 第一節 台湾総督府の渡航取締措置
 第二節 日本軍人と慰安所
 むすびに
第四章 台湾拓殖株式会社の慰安所事業への参与
 はじめに
 第一節 台湾拓殖株式会社設立のプロセスと経営概略
 第二節 台拓重役と企業ネットワーク
 第三節 台拓による海南島慰安所事業
 むすびに
第五章 福大公司の慰安所事業への参与
 はじめに
 第一節 福大公司設立に関する背景と重役
 第二節 福大公司の経営状況と営業利益
 第三節 福大の融資による厦門慰安所経営者
 第四節 福大の融資による広州慰安所経営者
 むすびに
第六章 台湾軍の慰安所事業への参与
 はじめに
 第一節 台湾軍の編成および作戦兵站
 第二節 台湾軍の島外への支援作戦および物資補給
 第三節 台湾軍による南方軍への台湾慰安婦徴集の実態
 第四節 台湾慰安婦の台湾兵站での状況
 むすびに
第七章 台湾元慰安婦の傷跡
 はじめに
 第一節 台湾元慰安婦の調査資料およびその分析
 第二節 台湾元慰安婦のインタビュー
 むすびに
総論
あとがき
参考文献目録一覧
索 引

前書きなど

あとがき
 一九九八年に筆者は台北市婦女救援基金会(婦援会)主催の台湾慰安婦ドキュメンタリー放映会「阿媽的祕密—台籍慰安婦的故事(おばあちゃんの秘密——台湾元慰安婦物語)」に参加し、さらに誠品書店で初代婦援会董事長でもある王清峰女史と出会い、王女史支援の下、台湾元慰安婦に関する問題の研究調査を始めることとなった。この五年間を振り返ると、学術界に身を置く学者として恥ずべきところがないようにと一心に研究を重ね続けた日々であった。『日據時代台湾戸籍資料』『台湾拓殖株式会社文書』といった膨大な資料から元慰安婦問題にかかわる資料を発見したときの喜びは文字では到底表現しきれないほどであった。また、婦援会のボランティアとして台湾元慰安婦の確認作業と訪問の際には、台湾元慰安婦の経験した過酷な日々に涙し、彼女たちが詐欺や脅迫によって貴重な青春期を軍専用売春婦として過ごしたことに心を痛め、やりきれない思いであった。元慰安婦たちの悲惨な体験は筆者の脳裏に深く焼きつき、眠れない日々を過ごすこともあった。
 さらに東京高等裁判所では、これまでに一度も台湾元慰安婦の控訴内容に対し調査および訊問を行っておらず、裁判官は冷酷な表情のまま簡単な判決を述べて退廷してしまうという事務的な処理態度には怒りを抑えきれない。筆者はかつて二度にわたり台湾元慰安婦に同伴し出廷したことがあった。彼女たちは病気がちな体にもかかわらず一〇度以下の寒さの中、問題理解への希望に満ちた表情で厳粛な法廷へ足を踏み入れるのだが、正義感の感じられない裁判結果に傷つき悲しみ、涙しながら台湾へと戻るのである。そんな台湾元慰安婦たちに心を痛めずにはいられなかった。
 「慰安婦」問題とは日本軍による侵略戦争における人権問題という歴史問題であるだけでなく、元慰安婦に対する公平で人道的な対応が注目される国際問題である。長期にわたり日本、韓国、中国における多数の研究者が「慰安婦」は基本的人権に違反した戦争犯罪であったと断言し、日本政府は「慰安婦問題」に対し、真摯な態度で臨むべきであると明言している。しかし一方では「国内での売春婦が慰安婦となった」「慰安婦は身体的に拘束されてはおらず、休日には買い物に出かけることもでき、その暮らしはけっして悲惨なものではなかった」「戦時中の日本の法律下では公娼制度は合法であり、慰安婦も公娼と同じである」「慰安婦は自分から望んで志願したものである」といった発言をする人もいることは事実である。こうした歴史的事実に反する意見を聞くたびに、法体系が不完全であった戦時中における様々な入り組んだ複雑な問題点が浮かび上がっているのだと筆者は感じている。本書の研究目的はこうした様々な問題点を明らかにし、元慰安婦に対する誤解や偏見、無知を改善することである。元慰安婦に関する資料に限りがあったことと、筆者自身の専門分野に対する研究不足もあり、本書で探究するテーマに限りがあることは否めない。こうした問題点については今後も研究を続け、新しい資料が発見され次第、随時研究結果を発表していきたいと考えている。
(中略)
 最後に、本書によって元慰安婦問題を理解する人が少しでも増え、元慰安婦に対する偏見や彼女たちの心の負担が少しでも軽くなることを心より願ってやまない。
二〇〇五年一〇月
朱 徳 蘭

著者プロフィール

朱 徳蘭(シュ トクラン)

台湾国立政治大学卒業、お茶の水女子大学文学修士、九州大学文学博士。
海洋史、日本植民地史専攻。
台湾中央研究院人文社会科学研究中心・台湾史研究所副研究員。また、台湾国立政治大学・国立中央大学歴史研究所兼任助教授。
著作:『長崎華商貿易の史的研究』(東京:芙蓉書房出版、1997)、『崔小萍事件』(南投:台湾省文献委員会、2001)、「1939〜1945日[にんべん+占]海南下的皇軍“慰安婦”」『人文学報』第25期(台湾:国立中央大学文学院,2002)、「日治時期台湾花柳業問題」『人文学報』第27期(台湾:国立中央大学文学院、2003)など。
編集:『長崎華商泰益号関係商業書簡資料集:台湾・日本地区商号』(1992台湾将経国国際学術交流基金会補助、1993-1995日本文部省科学研究費補助)、『台湾慰安婦関係資料集』2卷(東京:不二出版、2001)、『戒嚴時期台湾政治事件档案、出版資料、報紙人名索引』2冊(南投:台湾省文献委員会、2001)、『中琉歴史関係学術会議論文集目録要覧』(台北:中琉文化経済協会、2002)など78冊。

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