オセアニア
綾部 恒雄:監, 前川 啓治:編, 棚橋 訓:編
シリーズ・叢書「講座 世界の先住民族—ファースト・ピープルズの現在 09」の本一覧
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 300ページ 上製
定価:4,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2187-5 (4-7503-2187-7) C0339
在庫あり
奥付の初版発行年月:2005年09月 書店発売日:2005年09月22日
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紹介

いまオセアニア先住民の問題は「国内政策」から国際的な政治的テーマとして扱われる時代となった。国家の象徴を先住民に求める発想と,オセアニアらしさを多文化性とする発想とを融合させる方向が顕在化しつつある。オセアニア各国のいまを詳細に事例分析する。

目次

序 文 先住少数民族について
第1部 オーストラリア・ニュージーランド
解 説(前川啓治)
〈オーストラリア〉
1 アボリジニ◇アボリジナルと都市——地方都市とメトロポリタンの人びと(松山利夫)
2 アボリジニ◇地方に暮らすアボリジニ(上橋菜穂子)
3 アボリジニ◇「ファースト・ピープルズ」をめぐるパラドックス——オーストラリア辺境のアボリジニの過去と現在(窪田幸子)
4 トレス海峡諸島民◇生成する、生成される先住の人びと(松本博之)
5 オーストラリア先住民◇差異化の意味するところ——多文化主義と先住民(鈴木清史)
〈ニュージーランド〉
6 マオリ◇大地のマナの行方——マオリの土地権問題(内藤暁子)
7 マオリ◇マオリ社会の都市化と都市マオリ集団の形成(深山直子)
8 マオリ◇「マオリ個別の知」の発現と伝達——知識社会学的視点から(伊藤泰信)
9 マオリ◇先住民マオリと移住民ポリネシア人(棚橋 訓)
第2部 オセアニア島嶼部
解 説(棚橋 訓)
〈ニューカレドニア〉
10 カナク◇「ピープル」としてのカナク・アイデンティティ復権運動(江戸淳子)
〈タヒチ〉
11 マオヒ/タヒチアン◇民族のイメージと実態(桑原牧子)
〈ハワイ〉
12 カナカ・マオリ/ハワイアン◇「先住民」カテゴリーの変遷を軸に(大林純子/山中速人)
〈グアム〉
13 チャモロ◇チャモロはミクロネシア人か、アメリカ人か(前川啓治)
〈西パプア(イリアンジャヤ)〉
14 ダニ◇遺された者たちの「近代」——西パプア(イリアンジャヤ)における紛争の歴史と先住民ダニの現状(行木 敬)
〈フィジー〉
15 フィジアン◇フィジー人とインド人の共存(丹羽典生)
監修者あとがき
索 引
編者・執筆者紹介

前書きなど

刊行にあたって
 一九九一年のソ連邦の崩壊により、米ソの冷戦構造は終焉を迎え、折から目覚しい発展を遂げてきたIT(情報技術)の時代が、政治的平和とともに華やかに幕開けしたかにみえた。
 しかし他方で、地球の自然、人間の環境は恐るべき勢いで荒廃してきている。空気や水の汚染、地球温暖化による氷河・氷山の溶解と海面水位の上昇、森林の破壊による砂漠化の広がり、エネルギー資源の枯渇、人口の増大と食糧不足、そして貴重な動植物の種の絶滅、狂牛病の発生、HIVやSARSのような新型ウイルスの出現も、人類による自然の秩序破壊と無関係ではないと思われる。
 こうした人類文化の変化・発展と地球環境の荒廃の中で、そのマイナス面のしわ寄せを最も苛酷に蒙っているのが一般的に当該国民国家の中で少数民族と呼ばれている人びと、なかでも先住少数民族と呼ばれる多くの孤立的集団であろう。
 先住少数民族が他の少数民族ともっとも異なっている点は、彼らが自らの自由な意思や合意の確認がないままに当該国家に組み込まれた人びとだということである。したがって、先住少数民族の場合、「民族自決権」が留保されていると考えることができる。先住少数民族に民族自決権が残されているということは、彼らには土地権や資源権も留保されているということであり、きわめて重要な属性であるといわねばならない。国家が各自の主権と国境を不可侵のものとし、他方で、多くの国家がいくつかの政治・経済連合へと向かう動きを示しつつある現代世界で、先住少数民族の問題は、基本的人権思想をもちだすまでもなく、人類史に残されてきた深刻な未解決の課題であろう。
 本講座は、このような21世紀初頭における先住少数民族の状況を、国連の議決から10年を経た今再確認し、より多くの人びとにその情報を届け、少しでも早く、先住少数民族の社会、経済、文化的状況を、彼らの主体性において改善していく上での一助になることを願って企画されたものである。
 IT革命、グローバル化が加速度的に進む現在、貴重な文化を育てて来たこれらの人びとの苦難を救っていくことこそ人類の最も緊急な責務ではなかろうか。(序文より抜粋)

著者プロフィール

綾部 恒雄(アヤベ ツネオ)

国連ユネスコ企画専門員、九州大学、筑波大学、京都文教大学教授(副学長)。この間スタンフォード大学、ペンシルベニア大学、マサチューセッツ大学、マッギル大学などの客員教授などを歴任。現在城西国際大学人文学部客員教授。筑波大学名誉教授。文学博士。
単著
『アメリカの秘密結社—西欧的社会集団の生態』中央公論社、1970年
『タイ族−その社会と文化』弘文堂、1971年
『クラブの人類学』アカデミア出版会、1988年
『東南アジアの論理と心性』第一書房、1992年
『現代世界とエスニシティ』弘文堂、1993年 その他
編著
『アメリカ民族文化の研究—エスニシティとアイデンティティ』弘文堂、1982年
『文化人類学15の理論』(中公新書)中央公論社、1993年
『カナダ民族文化の研究—多文化主義とエスニシティ』刀水書房、1988年
Nation State, Identity and Religion in Southeast Asia. Singapore Society of Asian Studies, 1998.
『文化人類学のフロンティア』ミネルヴァ書房、2003年 その他
監修
ジュリアン・バージャー『図説世界の先住民族』明石書店、1995年
『世界民族事典』弘文堂、2000年
翻訳A・ファン・ヘネップ著『通過儀礼』(綾部裕子と共訳)、弘文堂、1977年 その他

上記内容は本書刊行時のものです。

前川 啓治(マエガワ ケイジ)

筑波大学人文社会科学研究科国際政治経済学専攻教授。筑波大学国際関係学類講師、静岡大学人文学部助教授、筑波大学国際総合学類助教授を経て、現職。この間、ハーバード大学人類学部客員研究員。博士。
専攻 文化人類学、経済人類学、オセアニア研究など。オーストラリア・トレス海峡およびミクロネシア連邦共和国、グアム、サイパンで社会変化の調査を行う。
単著
『開発の人類学—文化接合から翻訳的適応へ』新曜社、2000年
『グローカリゼーションの人類学—国際文化・開発・移民』新曜社、2004年
共著
「システムの変容」上野千鶴子編『贈与と市場の社会学』岩波講座現代社会学、岩波書店、1996年
“The Continuity of Cultures and Civilization: An Introduction to the Concept of Trans-lative Adaptation,” Japanese Views on Economic Development: Diverse Paths to the Market, (K. Ohno and I. Ohno eds.), Routledge, 1998など。
翻訳
J・ワトソン編『マクドナルドはグローバルか—東アジアのファースフード』新曜社、2003年など

上記内容は本書刊行時のものです。

棚橋 訓(タナハシ サトシ)

首都大学東京都市教養学部准教授。北海道東海大学国際文化学部専任講師、慶應義塾大学文学部助教授、東京都立大学人文学部助教授を経て現職。博士(社会人類学)。
専攻 社会人類学、オセアニア民族誌学(ポリネシア研究)。1992年よりクック諸島で土地所有制度、首長制、伝統復興運動などに関する調査に従事し、並行してオークランド、ホノルルなどの環太平洋大都市圏でクック諸島マオリ移民の動向に関する調査を行う。
共著
『都市の誕生—太平洋島嶼諸国の都市化と社会変容』アジア経済研究所、2000年
『民族の運動と指導者たち—歴史のなかの人びと』山川出版社、2002年
『恋愛と性愛』早稲田大学出版部、2002年
『時空をこえた対話』六一書房、2004年
『生命の教養学へ—科学・感性・歴史』慶應義塾大学出版会、2005年

上記内容は本書刊行時のものです。
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