発行:明石書店
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四六判 328ページ 並製
定価:2,600円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2115-8(4-7503-2115-X) C0336
在庫あり
奥付の初版発行年月:2005年06月
書店発売日:2005年05月27日
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16世紀,スペイン人コルテスによって征服されたメキシコの先住民族。写真家の著者が,その血で血を洗う征服の痕跡をつぶさに歩き,多数の写真とともにメキシコの歴史の暗部を明らかにする。
目次
はじめに<br>センポアラ——●メキシコの運命を決した町<br>ラ・アンティグア——●アメリカ大陸最初の植民地<br>トラスカーラ——●泉の湧きいづる町<br>チョルーラ——●ピラミッドの上のキリスト教会<br>ウエホツィンゴ——●メキシコの桃源郷<br>アコルマン——●不思議な十字架を持つ要塞型教会<br>テペアカ——●「辺境の守り」<br>イェカピストラ——●自然要塞の上の町<br>テポストラン——●自然の宝石箱<br>メキシコ市——●今も地下に眠るテノチティトラン<br>アクトパン——●「良く肥えた土地」<br>イスミキルパン——●「黒曜石の豊富な土地」<br>おわりに
前書きなど
はじめに<br> (前略)こうした魅力に満ちた教会を本書でたくさん紹介できないのは残念だが、私の中では、それよりもむしろ、そこに到達するまでのスペインによるメキシコ征服の歴史と、その直後の教会建設がおこなわれた背景を、どうしても知ってもらいたいという思いが募っているのである。と言うのも、私の読んだメキシコのどの歴史書にも、征服以前アステカ帝国が支配していたときの人口が征服後五○年余りの間に約十分の一に減少したと書かれていて、短い期間にインディオと呼ばれたメキシコ先住民の人口破壊が起きていたことを知ったからである。研究者により征服以前の先住民の総人口に差異があるために断言できないが、現在、ほぼメキシコの国土となっているアステカ帝国とマヤ文明の地域を合わせて二○○○万人から三○○○万人の人口だったといわれている。仮に少なく見積もって二○○○万の人口だったとすれば、スペイン人支配がおこなわれてから五○年の間に一八○○万の人口減少が起き、一五七○年頃にはこの地域全体で二○○万の先住民しか住んでいなかったということになる。さて、これらの数字に驚く前に、その意味を吟味してみる必要があろう。<br> 減少した一八○○万という数字には、征服戦争で失われた命の数と、ヨーロッパから持ち込まれた疫病によって奪われた命の数とが含まれている。征服者や植民者としてメキシコに土地を持ち成功したスペイン人たちは、疫病による死亡者のほうが多数だと主張している。しかし、その主張に簡単に惑わされてはいけない。先住民に疫病が取り付いたのは満足な食料もなく劣悪な労働条件でスペイン人に働かされたからであり、もしこうした悪条件さえなければ数をもっと抑えられたにちがいないからである。スペイン征服者兼入植者たちは、「高度な石器時代」に生きていたメキシコ先住民を、まるで家畜や奴隷のように自分の畑や鉱山で働かせて、ついには彼らを消費していったのだ。しかし、人命を消費するとは、いったいどういうことであろうか。人件費のまったくかからない企業の経営者は巨富を手にすることができる。そうした巨富が一七世紀に金ぴかのメキシカン・バロックを生み出すことになるが、そこには多くのメキシコ先住民の血の代償があることを忘れてはならない。そのことを思うとき、このメキシコ先住民の人口破壊が起きた征服後五○年というのは、まさにスペイン人征服者の狂気の五○年であり、強制的に口をつぐまされた先住民の「封印された半世紀」でもある。<br><br> こうしたことを知るに及んで、この「封印された半世紀」に残されたメキシコ先住民の指紋といえるものを探すのが、写真家としての私の旅の主目的となった。とはいっても、歴史は遥か五○○年を遡り、当時をしのばせるものといえば、征服後にわかに建設された教会などの石の建造物以外には見ることができなかった。<br> いっぽう私は、メキシコについて著されたさまざまな書物によって、クリストバル・コロンから始まる大航海時代のヨーロッパの人々、そして、発見された土地を統治するスペイン国王と顧問会議や官僚たち、さらにその前線基地が置かれていたエスパニョーラ島、キューバ島、ジャマイカ島、プエルトリコ島のスペイン人入植者、新しい領土と黄金を求めて探検に船出する冒険者たち、キリスト教の宣教に情熱を燃やす聖職者たち、そしてそうした人たちと、彼らヨーロッパ人の強欲の餌食となったメキシコ先住民との間で交わされる激しいやり取り、それらの登場人物の不運な死、賄賂に塗られた黒い政治、制止の効かない冒険者たちの暴力と酷い殺戮、さらには金銀鉱山や教会を初めとする都市建設での先住民の辛い賦役、まるで奴隷制度のような先住民分配制度(レパルティミエント)や先住民委託制度(エンコミエンダ)、修道士たちが上げた不正告発の声、メキシコ先住民の悲痛な叫び、血の錬金術師によって鋳なおされた巨額の富、そういったものに彩られたメキシコの一六世紀を知ることになった。そしてもはや写真映像だけで「封印された半世紀」を表現することの限界を感じたのである。とはいえ、一介の写真家にすぎない自分が文章により表現することの非力を思い、しばらく悶々とした時間を費やしたあと、自分のテーマを語ることができるのは自分以外にいないと判断して執筆に取りかかり、その文章に写真を加えて本書にまとめることにしたのだった。<br> (中略)<br> スペインに征服され、植民地にされたメキシコの、この「封印された半世紀」に無念にも葬り去られた驚くべき数の先住民の魂のことが、私の脳裏から離れない。できれば彼らの生きた時間に舞い戻って、彼らがたしかに生きていたという証言者になりたいと思う。しかし残念ながら、それは無理な話である。それでもせめて、メキシコ先住民が新しい支配者に強制されながらも築き上げた一六世紀の建築物と、そこに封じ込められている彼らの手のぬくもりを文章と写真で著して、本書を彼らへの鎮魂のミサとしたい。
著者プロフィール
阿部 修二(アベ シュウジ)
1947年、岩手県花巻市生まれ。岩手大学工学部電子工学科卒業。桑沢デザイン研究所ビジュアル・デザイン科卒業。日本写真家協会・日本写真芸術学会会員。<br>著書・訳書 1978年 『インディペンデント・フォトグラフィー』ロバート・フットラップ著、クイック・フォックス社(共訳) 1994年 写真集『PARIS・夢の軌跡』宝島社 <br>個展 1988年 「やさしい・トーク」ミノルタ・フォトスペース新宿・東京 1994年 「PARIS・夢の軌跡」ニコンサロン新宿・東京 2004年 「オマージュ・パリ」プランタン銀座・東京 他
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