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色彩の魔力
文化史・美学・心理学的アプローチ
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2005年4月
- 書店発売日
- 2005年4月8日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
自然,芸術,社会から生活,心理まで,無意識の下で人間の営み,現代社会の根幹と密接につながっている「色彩」。本書は,視覚のなかの色彩から歴史上の色彩までを,社会学,文化史,美術史,心理学といった多様な視点から分析し,その魔力を明らかにする。
目次
はじめに(浜本隆志)
序 章 色彩のプリズム(浜本隆志)
第1章 聖なる色・邪悪なる色(浜本隆志)
第2章 青のヨーロッパ――その軌跡を追って(柏木 治)
第3章 黒の横顔――影絵の肖像画(ポートレート)(森 貴史)
第4章 東西美術の光り輝く色彩(中谷伸生)
第5章 色彩と心理(伊藤誠宏)
終 章 色彩のカノン(規範)は死んだか?(伊藤誠宏・浜本隆志)
あとがき(伊藤誠宏)
索引
前書きなど
あとがき 街の色について調査し尋ねたことがあった。京都を色でイメージしたら何色か? 大阪の街の色は? 京都は、落ち着いた渋いトーンの色、大阪は派手で、はなやいだ、明るい色をイメージする人が多かった。 神戸は、山の緑、海の青を基調にしたソフトで明るい色が街のイメージカラーであった。ところが、一九九五(平成七)年に起きた、阪神・淡路大震災以降、人びとが感知する神戸の街の色は、多様で広範囲に及び、街の共通したイメージカラーが得られないと聞く。 震災時の神戸の状況が人びとに語りかけてくるもの、それを受け止める人びとの複雑な思い、嘆き、後悔、不安、絶望などが交錯する。この人びとの気持ちが、街に対する意識の多様さを生み、神戸の街に対する個別的色合いを強める。それが微妙に色にあらわれ、街の共通したイメージカラーの構築をむずかしくしているのであろう。つまり、神戸を見る人は、その人の思いを投影して神戸の街を見るため、複雑で微妙な、共通性を欠く、街のイメージカラーを抱くのである。このように街の色のイメージは、住んでいる人びとの意識を映し出したものであることがわかる。その際重要なことは、色を意識的に見るという行為である。街を見る場合、無意識的に見ても、ただ漠然としたイメージしか浮かんでこないからである。 見るという行為には、「物」を見る場合であれ、「色」の場合であれ、見る人の意識にすべてが委ねられている。色彩論は意識的に見て分析することから始まる。色を見るということは、見る人の意識が色にぶつかり、返ってきた感覚を受け止めることである。わたしたちは、自分の感情をとおして、隣りあう色のなかに、ある色を意識しそれを見ているのである。 色を見てイメージや印象を抱く場合、見る人の感情・心理という微妙で、うつろいやすいものが強く影響する。それゆえ、同一人物が同じ色を見たとしても、見る人の感情や時間、場所など、時空間的状況がちがえば、まったく異なったイメージや印象が構築される。わたしたちは、同じ色を見ていても瞬時、瞬時にちがった感覚で色を受け止めているのである。このような色彩と感情の一例を、筆者は本書第5章の「色彩と心理」のなかで展開した。 色と人間とのつながりは、心の奥深い部分で複雑・微妙に絡み合う神秘的な魔性の世界への広がりをもっている。本書のタイトルを『色彩の魔力』としたのには、このような色と人間のつながりを考慮した面もある。 一方、色と人間のかかわりを考えると、現代社会だけでなく、過去にさかのぼって考えなければならない。人間の歴史は、色彩との関係史といえなくはない。過去の色彩の歴史を考察する場合にも、意識的に色彩を見るという行為は必要であろう。わたしたちは、社会学、文化史、美学の観点からも色彩の考察を展開した。このような多角的視点から、色彩を論じた著作があまりみられないだけに、わたしたちは、それなりに意義ある著書ができたのではないかと思っている。 本書により、読者の皆さんが色彩に関心を抱き、色彩に対する認識を深める一助になれば幸いである。(後略)
上記内容は本書刊行時のものです。