発行:明石書店
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A5判 352ページ 上製
定価:4,000円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-2068-7(4-7503-2068-4) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2005年02月
書店発売日:2005年03月15日
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沖縄・台湾・香港を包括する「辺境東アジア」を概念化し,それらの地域における民族と国家の視点から,主権・政治的帰属の変更と住民のアイデンティティの関係を焦点に,そのダイナミックなエスノポリティクスを検証する。
目次
序章 本書の視角
第1節 「辺境東アジア」概念提起の動機
第2節 「辺境東アジア」の特徴1——歴史的「辺境性」
第3節 「辺境東アジア」の特徴2——「帰属変更」と「祖国復帰」の経験
第4節 「辺境東アジア」の特徴3——「祖国」とのアイデンティティ問題と「脱辺境化」
第5節 本書の仮説と構成
第1部 「帰属変更」の遺産としての沖縄ナショナリズム
第1章 「琉球抗日復国運動」の性格
第1節 沖縄近現代史の事大主義現象
第2節 復国運動の形態と時期区分
第3節 復国運動の特徴
第4節 復国運動の反日感情
第5節 「琉球アイデンティティ」の凝集
結びに 「琉球抗日復国運動」の歴史的位置づけ
第2章 戦後初期沖縄諸政党の独立論——失敗した沖縄主体性回復の試み
第1節 戦前沖縄アイデンティティの葛藤
第2節 沖縄の独自政党の成立と運営
第3節 初期政党の性格と独立論
第4節 独立論の実像
第5節 独立風潮の形成と消滅の背景
結びに 「凧型ナショナリズム」の宿命?
第3章 「祖国復帰」と「反復帰」——沖縄アイデンティティの十字路
第1節 沖縄アイデンティティの史的反復性
第2節 イデオロギーとしての「祖国復帰運動」
第3節 「反復帰運動」1——「復帰反省論」の思想構造
第4節 「反復帰運動」2——「復帰尚早論」と独立論の文脈
結びに 「祖国」をめぐる「復帰」・「反復帰」の記憶・想像構造と沖縄アイデンティティの特徴
第2部 「帰属変更」の遺産としての台湾エスノポリティクス
第4章 「省籍矛盾」と蒋経国の「『本土化』政策」
第1節 「『本土化』政策」研究の課題
第2節 「省籍矛盾」の構造と「戡乱(かんらん)体制」
第3節 「『本土化』政策」の決定要因
第4節 「『本土化』政策」の実態
第5節 「『本土化』政策」の影響
結びに 「省籍矛盾」から台湾ナショナリズムへ
第5章 「新中国文化」から「新台湾文化」への転轍の政治的文脈
第1節 文化の再構築とアイデンティティ
第2節 擬似「皇民化運動」としての「祖国化文化運動」の諸形態
第3節 「新中国文化」の創出と「中国人」アイデンティティの定着
第4節 「脱中国化」運動としての「全住民『本土化』運動」
第5節 「新台湾文化」の構築と「台湾人」アイデンティティの確立
結びに アイデンティティは植えつけうるか、自己決定しうるか
第3部 「帰属変更」の遺産としての香港アイデンティティ
第6章 「香港共同体」の確立と「香港人」の想像・創造
第1節 「返還」と国民統合の不安材料
第2節 「香港共同体」のハードウェア——自律的経済・政治システムの確立(一九四九—)
第3節 「香港共同体」のソフトウェア——独自性ある「香港文化」の創出(一九六〇年代半ば—)
第4節 「香港人」形成史の時期区分と生成・強化の要因
第5節 「香港人」生成の特徴とその定義
結びに 「準ナショナリズム」の可能性
第7章 「一国」VS「二制度」の力学と香港住民のアイデンティティ
第1節 「一国二制度」下の香港住民のアイデンティティ
第2節 「香港人」アイデンティティのリベラル性とリアル性
第3節 「終審権論争」に見る「一国」と「二制度」の攻防
第4節 立法会の攻防戦とアイデンティティの政治地図
第5節 「終審権論争」と香港住民のアイデンティティ
結びに 香港の「中国化」とアイデンティティ競合ゲームの行方
終章 「辺境東アジア」アイデンティティ・ポリティクスのダイナミズム
第1節 「辺境東アジア」アイデンティティ・ポリティクスの要因再考
第2節 アイデンティティの理論と「辺境東アジア」
第3節 「辺境東アジア」研究の課題と展望
あとがき
図・表・年表目次
参考文献
索引
前書きなど
序章 本書の視角 第1節 「辺境東アジア」概念提起の動機 本書は、沖縄・台湾・香港を包括して「辺境東アジア」という新しい地域概念を提起し、そのもっとも重要な特徴である「帰属変更」によってもたらされたこの三つの地域のダイナミックなアイデンティティ・ポリティクスを比較するものである。 これまでの地域研究者によるもっとも重要な貢献のひとつに、地域研究の方法として各個別の地域を包括し、より上位の地域概念を提示してきたことが挙げられる。このような地域の概念化の試みは、各個別地域自体の本質にたいする理解に新たな視点を提供しうるのみならず、他の近隣個別地域との類似性に配慮した分析作業を通じて、これらの個別地域間の関連性や全地域の特徴への理解をも可能にする。さらに、包括化された地域概念の創出は、他の地域概念との比較のさいにその相違性をより明白なものにさせることから、地域戦略の思考においても役立つと思われる。本書における「辺境東アジア」という新たな概念提出の試みも、これまでの東アジア研究にたいして新たな視点を提供する、という目的によるものである。 東アジアの地域研究におけるこれまでの地域概念化の試みは、単純に地理的要因で他の地域と区別したりそれを概念化したりするというよりも、政治的・文化的・経済的のいずれかの分野あるいは複数の分野における類似性との関連で行なわれてきた作業であると言ってよい。たとえば、政治的連繋から、前近代の東アジアの地域秩序は中国を頂点とする「中華世界システム」もしくは「華夷秩序」と称されてきた。同様に、文化的・言語的同質性から中国(台湾・香港・マカオを含む)、朝鮮半島、日本、ベトナムは「儒教文化圏」や「漢字文化圏」など、また、経済的関係から「華南経済圏」「環日本海経済圏」などの呼称が用いられてきた。本書における「辺境東アジア」の概念は、主に歴史的位置づけ、ならびに古今の政治的地位などから発想したものである。というのも、本書における「辺境東アジア」提起の背景には、まさに既存の「東アジア」といった地域概念では同地域の諸現象を分析するに当たり、不十分で処理しきれないところがあるからである。 加えて、「辺境東アジア」という新たな地域概念の提起は、近年の国際関係や地域秩序の変化をも意識したものである。 二十世紀の、とくに第二次世界大戦以降の国内政治と国際政治におけるもっとも重要な課題は、「民族」と「国家」の関係にあると言えるだろう。この「民族」と「国家」との関係は、ポスト冷戦期において民族問題の噴出がもたらした既存の国家枠組ないし世界システムの動揺によって、よりいっそう注目を集めている。東アジアでは、旧ユーゴスラビアやチェチェン、あるいは独立前の東ティモールなどの地域で見られた「血で血を洗う」民族紛争が生じなかったため、冷戦終結の波は比較的平静に受け止められてきたようにも見受けられる。 しかし、一九八〇年代以降の東アジアにおいても、民族と国家をめぐるアイデンティティの問題は、実際、顕在化してきた。それは、中国にたいする「台湾ナショナリズム」および「香港人」アイデンティティの噴出、そして日本にたいする「沖縄人(ウチナーンチュ)」自立意識の顕在化である。ここで注目すべきは、台湾、香港そして沖縄で起きたアイデンティティあるいはナショナリズムの問題は、東アジアの「中心」である中国・日本の現行国家システムにたいする挑戦を意味するということである。むろん、中国や日本は東アジアの超大国である以上、その国家システムの動揺は、この地域の秩序や国際システムにも影響を及ぼすことになる。本書が掲げる「辺境東アジア」研究の重要性は、まさにこの点にあると言えよう。(後略)
著者プロフィール
林 泉忠(リム チュアンティオン)
林泉忠(リムチュアンティオン、LIM, Chuan-Tiong)<br>1964年中国集美(厦門)生まれ、1978年香港へ移住、1989年来日。2002年東京大学法学政治学研究科博士課程修了。法学博士。ハーバード大学フェアバンク東アジア研究センターの客員研究員(1997〜99)などを経て、2002年より琉球大学専任講師、現在同助教授。<br>論文に「『辺境東アジア』——新たな地域概念の構築」(『国際政治』第135号)、「台湾政治における蒋経国の『本土化』政策試論(1972—1991)」(『アジア研究』第44巻3号)、「『香港人』とは何か——戦後における『香港共同体』の成立から見た新生アイデンティティの性格」(『現代中国』第74号)、「戦後台湾における二つの文化の構築——『新中国文化』から『新台湾文化』への転轍の政治的文脈」(『日本台湾学会年報』第6号)、 “Democracy in Taiwan: KMT Transforms Itself”, Harvard China Review, Vol. 2. など。
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