
シリーズ・叢書「明石ライブラリー74」の本一覧
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 736ページ 上製
定価:8,500円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2059-5 (4-7503-2059-5) C0336
品切・重版未定
奥付の初版発行年月:2005年02月 書店発売日:2005年03月04日
あらかじめご了承下さい。
紹介
この200年の間に,どのようにフェミニズムの運動と思想は拡大してきたのか。フェミニズム以前に,女性たちはどのような権限を獲得してきたのか。その多様なネットワークとは何か。女性運動の世界的な結びつきとともに「地方のフェミニズム」をあとづける。
目次
日本語版への序文
序文
謝辞
第1章 フェミニズムの歴史的擁護
第1部 フェミニズム以前
第2章 ジェンダーと権力
第2部 複数のフェミニズムの歴史的登場
第3章 女性の権利、女性の労働、女性の領域
第4章 アメリカ合衆国のフェミニズムに見られる人種とアイデンティティの政治学
第5章 世界の舞台と居住地の政治学
第3部 労働と家族の政治学
第6章 決して終わらない仕事——女性の家事労働
第7章 工業化、賃金労働、そして経済的なジェンダー・ギャップ
第8章 労働者たちと母親たち——フェミニズム社会政策
第4部 健康とセクシュアリティの政治学
第9章 医療、市場、そして女性の身体
第10章 再生産——選択の政治学
第11章 複数のセクシュアリティ、複数のアイデンティティ、そして自己決定
第12章 ジェンダーと暴力
第5部 フェミニストの展望と戦略
第13章 新しい言葉、新しいイメージ——フェミニストの日常活動としての女性たちの創造力
第14章 後戻りさせない——女性と政治
原注
付表
文献目録
訳者あとがき
索引
前書きなど
訳者あとがき 本書は、Estelle B. Freedman, No Turning Back: The History of Feminism and the Future of Women ( New York: Ballantine Books, 2002) の翻訳である。日本語の表題は、副題と本題をひっくり返しているが、原著のとおりに訳せば、「後戻りさせない——フェミニズムの歴史と女性の未来」ということになる。このNo Turning Backという短いフレーズに、歴史学者フリードマンの歴史観、つまり歴史の中に生きる主体としての彼女の強い意志がこめられている。歴史は「後戻りしない」だけではなく、「後戻りさせない」のだと。いささか日本語を理解する著者フリードマンも、この「後戻りさせない」という日本語訳に賛成している。 本書にたいしては、アメリカの女性史研究の第一人者であるゲルダ・ラーナーが「エステル・フリードマンは不可能な仕事を成しとげた——フェミニズム学と行動主義を見事に統合し、真に学際的でトランスナショナルな研究を成しとげた。女性の運動に関する過去と未来の役割についての彼女の明快な分析は、人に元気を与え、力をあたえるものである」と評し、またハーヴァード大学の歴史学教授であるナンシー・コットも「今日世界中の女性の置かれた状況について、この書一冊で、他の何十冊の本を合わせた以上に、優れた知識と洞察を提供している。——フリードマンの研究は、グローバルな展望と正確な知識の勝利である」と評している。こうしたアメリカでの評価からもわかるように、確かに本書は、この半世紀の間に飛躍的に発展し、多様に、かつ大量に生み出された「フェミニズム学」を、総合し、新たな高みに引き上げるものであることは間違いない。 エステル・B・フリードマンは、一九四七年生まれで、アメリカのユダヤ人社会で育った。本書の「日本語版への序文」で書いているように、彼女は、ニューヨークのバーナード女子大学の学生であった一九六八年夏、三ヶ月間であったが日本にいたことがある。日本とアイルランドというユーラシア大陸の両端にある神秘の国にあこがれていたというフリードマンは、国際的なインターンシップの制度を利用して日本にきて、名古屋の「国際ホテル」で、英語を教え、同時にウェートレスとして働いた。このときの経験が、フェミニズムに目をむけるきっかけになったのだと彼女はいう。日本への言及が本書においてたびたび見られるのは、こうした彼女の経験による。 一九六〇年代のアメリカは、公民権運動とベトナム反戦運動がひろがり、アメリカの大学は、全体として変革の気風にみち、政治的にはラディカルな雰囲気が時代の空気になっていた。フリードマンもこうした雰囲気の中で学生時代を送り、マルクスを読み、歴史研究の確たる方法を学んだ。大学院に入るころから彼女は、ベティ・フリーダンをはじめとするアメリカの女性運動の高揚のなかで、フェミニズムに関心をもち、アメリカ女性史を専攻するようになった。このことは本書の「序文」に明らかにされている。 現在彼女は、スタンフォード大学の歴史学の教授で、同時に同大学の「フェミニズム学プログラム」の創設者でもある。コロンビア大学での博士論文をもとにして書いたTheir Sisters' Keepers: Women's Prison Reform in America, 1830-1930( Ann Arbor, The University of Michigan Press, 1981)は、アメリカの女子刑務所改革運動の成立と変化を扱ったもので、この研究で、フリードマンはシカゴ大学の「ハミルトン賞」をえた。 (中略) 本書は、題名のとおりフェミニズム思想の歴史を概括し、それをとおして女性の未来を展望するという著者の壮大な意図のもとに書かれたものである。ほぼ二百年の歴史をもつ「複数の」フェミニズムをそれぞれ歴史の中に位置づけ、そこから引き出される「一つの」フェミニズムは、どのような姿をしているのか。著者の関心は、この未来を切り開く「一つの」フェミニズムの骨格を明らかにし、それを用いて未来を切り開いていく主体を形成することにある。ミネソタ大学のイレイン・タイラー・メイが、「21世紀の女性の未来にむけてのわくわくするメッセージを与える」と本書を評したのは、このことを表している。 本書の特徴は、何よりも第一に、思想としてのフェミニズムが、歴史と社会の中に位置づけられて、そのもつポジティヴな意味とともにネガティヴな意味が複合的にとらえられ、それが同時に相対化されていることにある。そうすることで、フェミニズムの相対立する概念、例えば、「差異と平等」、「母性のもつ両義性」、あるいは「個人の独立と国家の独立」、「人種と階級とジェンダー」、あるいは「リベラル・フェミニズムとラディカル・フェミニズムと社会主義フェミニズム」といった、これまで対立する局面が強調されてきた「諸」フェミニズムの思想と運動が、それぞれ歴史的、社会的文脈の中に位置づけられ、そうすることで対立を乗り越えるための手がかり、つまり「一つの」フェミニズムを構築する。その道筋があきらかにされている。 本書の第二の特徴は、フェミニズムを生み出した西洋近代社会、つまり工業化と民主主義にたいするポジティヴな姿勢が基本とされていることである。著者の歴史観は単線的な進歩史観ではけっしてない。しかしそれにもかかわらず、女性と男性の平等の政治学は、工業化、つまり資本主義社会の展開をとおして生み出されたのであり、それを推し進める力は、それを通して生み出された人権(セクシュアリティや労働を含めて)の理念なのだという。地球規模で進む工業化つまり資本主義は、一方で、ジェンダーや人種や階級が絡み合った複雑な位階制システムを作り上げるモメントでもあった。このことを著者は明確に指摘しながら、この位階制を解体させる手がかりも、この工業化から生み出されるとみている。歴史学者フリードマンの面目躍如たるところである。本書が、グローバルに記述された単なるジェンダーの歴史や、フェミニズム思想史の書を超えて、魅力的なのはここのところにある。 21世紀の入り口に立った今、フェミニズムの課題は、著者によれば、「融合の政治学」、つまり「対立する相手と向き合って差異を乗り越えて信頼すること」であり、「権利の闘争から変化の主体として女性が権能をもつ闘争」へ転換することである。20世紀の半ば、ボーヴォワールやフリーダンが提起したフェミニズムの政治学は、半世紀の歴史をへるなかで、地球規模に広がり、それが21世紀の歴史を構築する力となろうとしている。本書をとおしてフリードマンが伝えようとしている政治的メッセージは、フェミニズムこそが21世紀の世界を変革する力なのだということである。学際的でトランスナショナルな叙述が、単なる知識の寄せ集めや、好奇心を満足させるための歴史書にならなかったのは、こうした著者のフェミニズムの政治学への熱い思いが秘められているからだといえる。(後略)
著者プロフィール
安川 悦子(ヤスカワ エツコ)
1936年横浜に生まれる。
1964年名古屋大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士(名古屋大学)。
名古屋市立女子短期大学教授、学長、名古屋市立大学人文社会学部教授をへて、現在、福山市立女子短期大学学長。
専攻、社会思想史、ジェンダー論。
主要著書
『アイルランド問題と社会主義』(御茶の水書房、1993年)
『フェミニズムの社会思想史』(明石書店、2000年)
『「高齢者神話」の打破─現代エイジング研究の射程』共編著、竹島伸生(御茶の水書房、2002年)
訳書
ヴェロニカ・ビーチ『現代フェミニズムと労働─女性労働と差別』共訳・高島道枝(中央大学出版、1993年)
ジャネット・K・ボールズ他編『フェミニズム歴史事典』共訳・水田珠枝他(明石書店、2000年)
メールアドレス:yasukawa@fukuyama-jc.ac.jp
西山 惠美(ニシヤマ エミ)
1943年名古屋市に生まれる。
1965年愛知県立女子大学(現愛知県立大学)卒業。
愛知県立大学文学部助手、日本福祉大学助教授をへて、現在、愛知学泉大学コミュニティ政策学部教授。
専攻、アメリカ文学
主要著書
『物語の楽しみ』共編著(ナカニシヤ書店、2001年)
『もう一つのアメリカ人を求めて−ライト、ドライサー、ヘミングウェイ、モリスンを読む』(英宝社、2003年)
『福祉の人間学』共著(勁草書房、2004年)
共訳書
ジャネット・K・ボールズ他編『フェミニズム歴史事典』共訳(水田珠枝・安川悦子監訳、明石書店、2000年)
メールアドレス:enishiyama@gakusen.ac.jp
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