
シリーズ・叢書「明石ライブラリー72」の本一覧
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 344ページ 上製
定価:3,000円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2051-9 (4-7503-2051-X) C0336
在庫あり
奥付の初版発行年月:2005年01月 書店発売日:2005年02月04日
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イラク問題,パレスチナ問題……現ブッシュ政権はクリントン政権によって積み残された課題を引き継いだと言ってよい。今後のアメリカ外交を理解するためには,冷戦終結後8年間にわたって舵取りをおこなったクリントン政権の外交を知ることが不可欠である。
目次
第1章 クリントンが引き継いだ遺産
第2章 新世界秩序構築の任務
第3章 ユーゴ紛争への介入
デイトン合意——ボスニア和平プロセスへ
コソヴォ紛争
第4章 ソマリアとハイチにおける国家建設
ソマリア
ハイチ
第5章 南側の国境を越えた国々との関係
北米自由貿易協定(NAFTA)
ファースト・トラック
第6章 ロシア問題への対応
第7章 欧州の安全保障とNATOの東方拡大
第8章 蛇行した対中国政策
第9章 沈まぬ日本
第10章 転換点——内政と外交の狭間で
第11章 一九九六年の大統領選挙と外交政策
第12章 オスロ合意以降——中東での手詰まり
第13章 イラク——サダム・フセインとの対決
第14章 危機管理に対する不手際——アジアの金融危機とインドの核実験
アジアの金融危機
インドの核実験
第15章 終章——希望と歴史の狭間で
訳者あとがき
参考文献
注
索引
前書きなど
訳者あとがき アメリカ外交は、一九九〇年代初めの冷戦終結で大きな転機を迎えた。ソ連の消滅によって世界で唯一の超大国となったアメリカは、その持てる強大なパワー——全世界総計の国内総生産と軍事費で、各々、三割と四割を占める——を対外政策にどのように活用すべきかについて試行錯誤を繰り返した。アメリカにも確たる処方箋はなかったのである。 この処方箋の欠如が冷戦後のアメリカの外交をわかりにくくしている。共和党のブッシュ政権が着手したイラク戦争はその最たるものだろう。この戦争に対しては、アメリカ国内はもとより世界中で反対の声が強かった。しかも、開戦理由としてあげられていたイラクによる大量破壊兵器の秘密製造は後にねつ造された情報であることが判明し、世界のマスコミや専門家は中東の石油資源確保、イスラエル保護、テロ対策がイラク戦争の隠された動機であると解説した。つまり、ブッシュ政権内におけるネオコンと呼ばれる人々が中心となって戦争を引き起こしたという解釈である。 しかし、イラク戦争の真因をブッシュ政権の特殊性に求めるのは、一面的な読みにすぎない。真相の究明には、一九九〇年代の民主党・クリントン政権時代まで遡る必要がある。クリントン政権もまたイラク問題には手を焼いたのであり、ブッシュ政権が前政権以来の懸案を解決すべく、イラク進攻をおこなったと見ることも可能であろう。本書は次のように指摘する。 ……クリントンにとって、フセイン政権の存続は払いのけることのできない悪夢となった。クリントンは、政権発足から半年後、フセインの向こう見ずで挑戦的な振る舞いを目の当たりにし、小規模な懲罰的空爆を命じた。三年後、クリントンが再選運動に臨んだ際にもイラクとの危機が起こり、その後もたびたび危機が繰り返された。 イラクは、クリントンに対して、ポスト冷戦期における最も悩ましい問題——アメリカは圧倒的な軍事的優位をどう使用すべきか——を何度となく突き付けた……(本書第13章「イラク——サダム・フセインとの対決」)。 強大なパワーを持つアメリカに突き付けられた課題は、イラク問題だけにとどまらない。パレスチナ問題、NATO拡大、対中政策、民主化の推進、ユーゴ問題、アジアの経済危機、対日政策、そして、根本的な問題である新しい国際秩序の形成——アメリカは第一次世界大戦後に国際連盟、第二次世界大戦後に国際連合をそれぞれ立ち上げて世界秩序の形成を図った——など、問題は山積していた。こうした国際的な重要課題は、すべて、冷戦終結後に最初のアメリカ大統領となったクリントンに委ねられた。ブッシュ政権は、クリントン政権が積み残した課題を引き継いだと言ってもよい。 9・11事件後、世界は「ポスト・ポスト冷戦期」に入ったとも言われる。しかし、9・11事件という眼鏡を外してみれば、アメリカ外交が直面する基本的な課題は従来のまま未解決である。この課題は、第二期ブッシュ政権にもつきまとう。したがって、最近、そして今後数年間のアメリカ外交を理解するためには、冷戦終結後の八年間にわたってアメリカ外交の舵取りをおこなったクリントン政権の外交を知ることが不可欠である。 本書は、クリントン大統領自身の行動パターンにも鋭いメスを入れる。著者のハイランドによれば、クリントンは大局的な視野を持たなかったので、必然的にほとんどの問題を場当たり的に処理し、次々と降りかかる危機に足元をふらつかせることになったとされる。ともかく彼が見極めようとしたのは、国民に人気がある政策は何か、どうすれば要領よく片付くか、どの選択肢ならば自分の地位や特に評判が傷付きにくいか、ということだったという。クリントン外交に対する支持率は政権後半の一九九八年になっても六〇%台を維持していたが、それもクリントンがそれだけ人気取りに長けた大統領であったことを示している(本書第15章「終章——希望と歴史の狭間で」)。 筆者のハイランドは、CIA、国家安全保障評議会スタッフ、国務次官補(諜報・調査担当)などを歴任した後、アメリカの外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』の編集長を長年にわたって務め、ジョージタウン大学外交学部で教鞭をとった経験を持っている。実務と研究に通じたアメリカでも第一級の国際政治学者であり、冷戦終結後におけるアメリカ外交の実態を解明し、総括するには、相応しい著者と言えよう。クリントン政権に関する書物は多いが、その外交に焦点をあてたものはアメリカでも類がない。冷戦後における現代アメリカ外交の源流を探る上で、本書は貴重であろう。(後略)
著者プロフィール
ウィリアム・G・ハイランド(ハイランド,ウィリアム・G)
ウィリアム・G・ハイランド(William G. Hyland)<br>1929年生。ワシントン大学卒業と同時に軍役召集。ミズーリ大学で修士号(国際関係論等)取得後、CIA分析調査員を振り出しに、情報調査国務次官補(キッシンジャー国務長官時代)、大統領国家安全保障補佐官補などを経て、『フォーリン・アフェアーズ』編集長(1982−93)。その後、ワシントンのジョージタウン大学外交政策部で国際関係の教鞭をとる。『フルシチョフの失墜』(1968)、『冷戦』(1990)など、数冊の著作がある。国際関係の権威。
上記内容は本書刊行時のものです。堀本 武功(ホリモト タケノリ)
中央大学法学部卒業。デリー大学政治学修士。国立国会図書館・調査及び立法考査局長を経て、現在、尚美学園大学総合政策学部・大学院教授。専攻は米アジア外交・南アジア国際関係。編著に、『アメリカはなぜインドに注目するのか──台頭する大国インド』(訳書。明石書店、2003年)、『現代アメリカ入門』(明石書店、2004年)、『現代南アジア叢書第3巻 民主主義へのとりくみ』(東京大学出版会、2002年)など。
上記内容は本書刊行時のものです。塚田 洋(ツカダ ヒロシ)
慶應義塾大学法学部卒業。東洋英和女学院大学大学院修士課程修了。1990年国立国会図書館入館。参議院第一特別調査室(国際問題調査会担当)出向を経て、現在、国立国会図書館調査及び立法考査局外交防衛課勤務。専攻は国際政治。論文に、「冷戦後の外交・安全保障政策──アメリカの使命をめぐる試行錯誤」(堀本武功編『現代アメリカ入門』明石書店、2004年)、「カナダの『人間の安全保障』外交」(『立法と調査』2004年7月号)など。
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