質の良い効率的な医療システムに向けて世界の医療制度改革
OECD:編著, 阿萬 哲也:訳
発行:明石書店 この版元の本一覧
B5判 160ページ 並製
定価:2,500円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2040-3 (4-7503-2040-4) C0047
在庫あり
奥付の初版発行年月:2005年01月 書店発売日:2005年01月12日
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紹介

新たな医療関連技術,長期介護,民間保険,医療費のコントロール,医療への平等なアクセス,医療従事者の増加と生産性などの多岐にわたるテーマについて,加盟各国のデータをもとに,医療パフォーマンスの効率化に向けた制度改革を提案する。

目次

日本語版刊行によせて
訳者序文
序 文
はしがき
概 要
はじめに
第1章 より良い医療を通じた健康水準の向上:医療の質を求めて
 人口全体で見た健康水準の劇的な向上
 健康結果(health outcome)の国ごとの違い
 医療の質に係る重大な欠陥
 医療の質の改善に向けた手段・戦略
 医療の質に係る各国間の相違に関する情報の拡充
 健康水準および医療の質を向上させるためのアプローチ:結論のまとめ
第2章 医療へのアクセス:向上および維持を求めて
 公的な制度または私的保険は医療へのアクセスおよび金銭的保護を進めるために重要である
 アクセスへの障害の中にはなかなか解消できないものもある
 医療提供者の適切な供給の確保
 適切に組み合わせられた介護サービスの利用可能性の保障
 新しい医療関連技術へのアクセス
 適切かつ公平なアクセスの保障のためのアプローチ:結論のまとめ
第3章 満足した患者・消費者:ニーズへの対応の在り方の改善を求めて
 選択的手術のための過度の待機期間に対処する政策
 患者・要介護者および介護者の選好および期待により良く適合した介護サービス
 医療保険の選択肢は医療制度のニーズへの対応を改善することができる
 医療制度のニーズへの対応の在り方を改善するためのアプローチ:結論のまとめ
第4章 医療費支出:支弁可能なコスト水準と安定的な資金供給を求めて
 医療費の上昇とその影響
 医療費抑制に係る経験
 医療・介護に係る持続可能な資金供給
 支弁可能なコスト水準と安定的な資金供給のためのアプローチ:結論のまとめ
第5章 医療制度における「バリュー・フォー・マネー」の向上:効率性を求めて
 医療制度の非効率性を示す証拠
 疾病予防および健康増進に対する投資の費用対効果
 効率性を向上させるための需要面での取り組み
 効率性を向上させるための供給面での取り組み
 医療のための人的資源の効率的な配置
 病院部門における効率性の向上
 介護サービス提供における効率性の向上
 医療関連技術の効率的な利用の推進
 効率性向上における私的医療保険の役割
 効率性を向上させるためのアプローチ:結論のまとめ
結 論 OECDヘルス・プロジェクトにおける結論:医療制度の実績を向上するための有望なアプローチ
参考文献
囲み記事
 記事1.1 肥満:公衆衛生上の脅威
 記事1.2 選択的手術のために待機することが健康上より悪い結果をもたらすことになるのか
 記事1.3 医療の質の向上:政策上の選択肢
 記事1.4 質を監視するメカニズム:OECD諸国の例
 記事1.5 介護サービスの質の向上に向けた動き
 記事1.6 医療における情報伝達技術の応用
 記事1.7 医療の質について国際比較を行う上での課題および国際比較を行うことの意義
 記事2.1 医療へのアクセスの向上:OECD諸国における最近の取り組み例
 記事2.2 私的医療保険の利用可能性や低価格化を進めるための施策
 記事2.3 医師の移住を活発化する施策:英国の経験
 記事2.4 医療技術の採用および普及の割合に関する各国間の相違点
 記事2.5 将来の技術によって課される意思決定上の課題
 記事3.1 なぜいくつかのOECD諸国では選択的手術のための過度の待ち時間が存在するのか
 記事4.1 韓国での医療費抑制への取り組みの中での患者一部負担の影響
 記事4.2 待機期間の存在は医療への公的支出の欠陥を意味するのか
 記事4.3 高齢化社会のための社会的な介護保険:ドイツおよび日本における最近の経験
 記事4.4 私的介護保険:経験および課題
 記事5.1 米国退役軍人保健庁における最近の効率性の向上策
 記事5.2 OECD諸国中3カ国の医療制度における意思決定の際の医療技術評価の利用
 記事5.3 OECD諸国における保険者間の競争の拡大に係る経験
 記事 医療政策に関する将来有望な方向性

前書きなど

訳者序文  経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development, OECD)は、もともとは国際経済について協議することを目的として設立された国際機関であったが、近年では、その他の分野にも活動範囲を拡大してきており、医療(介護)政策分野における研究に関しても数々の成果を残している。本書は、過去3年間の「OECDヘルス・プロジェクト」の中で進められてきた医療制度の実績評価や各制度の実績の違いに関する要因分析、高齢者介護、全体的な制度の評価等に関する数々の研究における成果の総括報告書として、2004年5月の第1回OECD保健大臣会合に提出されたものである。  本書では、医療の質、医療へのアクセス、患者・要介護者のニーズへの対応、医療費及び医療財政、制度全体の効率性の向上等が大きなテーマとして取り上げられている。特に、これまでのOECDの医療(介護)政策研究においては、制度的・経済的な視点や財源論が強調されがちであったが、本書においては、医療(介護)の質を含めた「サービス利用者のニーズ」への対応に力点を置いたものとなっていること、政策担当者としていかに具体的な制度を構築していくかといった視点にも配慮しつつまとめられていること等が大きな特徴と言えるであろう。  本書は5章構成となっており、まず、第1章から第3章までは、医療・介護サービス利用者の視点から、サービス提供の枠組み、サービスへのアクセスの確保等、制度のパフォーマンスを向上させるための施策の在り方やそれに付随するコスト等について取り上げている。第1章では、医療現場における実態等を踏まえた医療の質の向上に関する取り組みについて分析しており、特に、客観的なデータの収集・分析の重要性を指摘している。また、質の改善を進める体制を確保する手段として、診療報酬等による経済的なインセンティブの設定等を進めることが重要であると論じている。第2章では、医療サービスへのアクセスの確保のために各国において採用された施策を紹介し、その基本的考え方等について論じているが、特に、医療関係職種の新規雇用、養成訓練、離職防止等にまで踏み込んで論じている他、最新の医療技術へのアクセスの重要性についても指摘しているところが特徴的である。第3章では、選択的手術(elective surgery)のための待機期間の短縮や介護サービスの質の改善を中心として、より主観的な要素である患者の満足度を向上させるための取り組みについて論じている他、医療・介護サービスに対して利用者が持つ選択の幅の拡大という観点から保険者間における競争の重要性についても指摘している。  次に、第4章および第5章では、それまでの章とは観点を逆にして、医療・介護サービスの提供にかかるコストを分析の中心に置き、それらのコストを勘案した上でいかに効率性の高い医療制度を作っていくことが重要であるかについて論じる形をとっている。第4章においては、持続的な財源の確保策について重点的に論じている他、財源という観点からみたときに、私的医療保険の役割が十分に発揮されるためには適切な政府の関与が必要であること等を指摘している。また、さまざまなコスト抑制手法の長所・短所についても論じている。その上で、第5章においては、「効率性の向上」を、医療制度による実績を改善しつつ費用を節約するための唯一の方法として位置づけ、その実現のためのさまざまな方策についてその長所・短所を論じている。最後に、本章では、「バリュー・フォー・マネー(費用に見合った価値)」という目標を達成するためにも、国内外における客観的な関連情報の収集、それらに基づくベンチマーキングおよび情報共有が役に立ちうると結論づけている。  このように、本書は、これまでのOECDにおける医療(介護)政策研究の集大成と言ってもいいものであり、他の関連文書(http://www.oecd.org/document/25/0,2340,en_21571361_30968861_31283993 _1_1_1_1,00.htmlからその多くが入手可能)と合わせて、各国の医療政策担当者や医療政策研究を行う者にとって非常に重要な示唆を与えるものであることは間違いない。各国の政策の最大公約数的な部分について論じている部分が多いために、我が国の状況との関連性については判然としない部分もあるが、ある意味では、先進諸国における医療(介護)政策の現時点での到達点を示すものと言うこともできるであろう。  なお、国立社会保障・人口問題研究所編「海外社会保障研究」2004年12月号において第1回OECD保健大臣会合を特集しており、その中で、本書を下敷きとしつつ、その他の「OECDヘルス・プロジェクト」の研究成果も参照してより深いレベルで分析を行った研究論文がいくつか掲載されているので(訳者も執筆陣の1人)、興味のある方はそちらも参照していただきたい。(後略)

著者プロフィール

OECD(オーイーシーディー)

経済協力開発機構(OECD)<br>経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development)は、1960年12月14日にパリで調印され61年9月30日に発効した条約の第一条に基づき、次のことを意図した政策を推進する。<br><br>(a)加盟国において、財政金融上の安定を維持しつつ、出来る限り高度の経済成長及び雇用並びに生活水準の向上を達成し、もって世界の経済の発展に貢献すること。<br>(b)経済的発展の途上にある加盟国及び非加盟国の経済の健全な拡大に貢献すること。<br>(c)国際的義務に従って、世界の貿易の多角的かつ無差別的な拡大に貢献すること。<br><br>OECD原加盟国は、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイスランド、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、イギリス、アメリカである。以下の諸国はその後加盟した。日本(1964年4月28日)、フィンランド(1969年1月28日)、オーストラリア(1971年6月7日)、ニュージーランド(1973年5月29日)、メキシコ(1994年 5月18日)、チェコ(1995年12月21日)、 ハンガリー(1996年5月7日)、ポーランド(1996年11月22日)、韓国(1996年12月12日)、スロバキア(2000年12月14日)。 欧州委員会もOECDの活動に参加している(OECD条約第13条)。

上記内容は本書刊行時のものです。

阿萬 哲也(アマン テツヤ)

宮崎県生まれ。京都大学法学部、マニトバ大学(カナダ)法学部大学院(修士課程)卒業。<br><br>(過去の業績)<br>○“Social and Health Policies in OECD Countries: A Survey of Current Programmes and Recent Developments” (共) David W. Kalisch, Libbie A. Buchele, Labour Market and Social Policy Occasional Paper No. 33, OECD (1998.7.20)<br>○ 「OECD諸国における年金改革の動向」『海外社会保障研究』第126号、国立社会保障・人口問題研究所 (Spring 1999)<br>○ 「経済協力開発機構(OECD)における医療(介護)政策分析:これまでの成果と展望」『海外社会保障研究』第149号、国立社会保障・人口問題研究所 (Winter 2004)

上記内容は本書刊行時のものです。
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