黒羽清隆 日本史入門講座歴史を楽しむこと、歴史に参加すること
黒羽 清隆:著, 池ヶ谷 真仁:編
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 432ページ 上製
定価:3,800円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-2024-3 (4-7503-2024-2) C0021
在庫あり
奥付の初版発行年月:2005年01月 書店発売日:2005年01月14日
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紹介

研究,教育,運動の三位一体を具現した歴史学者・黒羽清隆。「木戸幸一日記」をもとに日本近代史を深く追求した前作『日米開戦・破局への道』を補完する「日本史料講読」講義録の他,反戦・平和の市民運動,教科書裁判等における集会,学習会の発言記録集。

目次

はじめに
凡例
第一章 武士の流儀について、二題——浅野内匠頭と井伊直弼
1 刃傷、松之廊下
日本人と忠臣蔵/赤穂事件史料「多門伝八郎覚書」/時代劇の嘘/吉良上野介/乱心は仕らず候/多門伝八郎、幕閣の裁定を批判する/大目付と目付の論争/内匠頭、切腹/その後の幕府の裁き
2 井伊直弼と開国——部屋住みから彦根藩主へ
“花の生涯”/ヤマトタケルノミコト/埋木舎/禅と茶の湯/居合いの達人と美貌の師匠/一五万両の大盤振る舞い/そばと酒の値段/将軍継嗣をめぐる対立/皇国の流儀/癸丑以来
3 井伊直弼と開国——黒船来航
蒸気船とお茶/ゴールドラッシュ/水と石炭と生鮮食品を求めて/地球は丸い一つの世界/日米和親条約/ピヂン・イングリッシュ/服部之総の視点/反井伊という政治運動
4 井伊直弼と開国——大老就任
貪欲なオオカミと優しいオオカミ/日米修好通商条約と降伏文書の調印/秘書官の記録/大老井伊直弼の心境と論理/継嗣決定と一橋派の処分/長野主膳VS京都尊攘派/これが京都の宿だ/国家意識の芽生え
第二章 日記と文学から学ぶ日本近代史
1 日記・伝記から読む日本近代史
母の歴史を作る/伝記と日記/『原敬日記』の価値/原敬と山県有朋/日記から分かること、日記では分からないこと/桂太郎の苦悩を語る蚊帳の焼け穴/神主の日記から見た秩父事件/「ええじゃないか」——脇本陣大黒屋の日記
2 戦時体制の構築—『木戸幸一日記』一九四〇年一〇月一日〜六日
木戸内大臣の情報源/松岡洋右の南進策/三笠宮崇仁とオリエント学/近衛新体制と企画院事件/逼迫する食糧事情/杉山元、参謀総長に親任/軍財抱合/十月五日、六日
3 民衆史としての近代詩文
『破戒』の初版本/一冊だけの『中野重治詩集』/「雨の降る品川驛」/伏せ字の思想/中野重治の恋愛詩/大胆不敵、金子光晴の「泡」/高村光太郎の世界/会田綱雄「伝説」の背景
第三章 戦争と民衆
1 美談の恐怖
ミサイルの精密度/沖縄に核兵器はあるのか/爆弾三勇士/九軍神の偽り/神風特別攻撃隊/鬼畜米英
2 今、なぜ七・七なのか——盧溝橋事件四八周年によせて
一九三七年七夕の深夜、盧溝橋に謎の銃声/極東の憲兵/内地三個師団の華北派兵を決定/御前会議/南京大虐殺/抗日のネット・ワーク
3 戦時下の民衆
塹壕の中の世界/千人針/出征する氏神/柳田民俗学が切り開いた民衆の心情/足らぬ足らぬは夫が足らぬ
第四章 教科書問題を考える
1 一九八二年、教科書検定ドキュメント
正誤訂正/「侵略」の不透明化/一五年戦争という歴史認識/民衆史に対する露骨な否定/国家権力としての検定/良い教科書を作るために
2 教科書裁判と大学
裁判の性格/ブリの照り焼きはハケで塗れ/聖徳太子は死にません/「原爆の図」/自由ということ
あとがき
黒羽清隆著書一覧
著者・編者略歴

前書きなど

はじめに  二冊目の「黒羽清隆講義録」である。  前作は、一九八二年度に静岡大学教育学部の二年生に向けて行われた「日本史料講読」という講義のうちの九回分を収め、『日米開戦・破局への道』として、二〇〇二年に明石書店から公刊することができた。今回の講義録は、前作のような大学でのある講義をまとめたものではない。それゆえ、前作と同様の期待をもって本書を手に取られた方は、いくぶんとまどわれることになるかもしれない。そこで、前回同様、はじめにこの講義録の一応のガイダンスを試みる。ただし、講義録を作ることにした経緯など、前作で紹介した部分との重複はなるべく避ける。  今回の黒羽講義録は、前作のように一つの講義をまとめたものではないが、一二回の講義・講演のうち五回の講義は、静岡大学で一九八一年度に人文学部の一年生を対象に行われた、一般教養科目としての日本史の講義である。その他の講義、あるいは講演は、時々の集会や学習会で行われたもので、全て講義としての連続性はない。ただし、第二章2(一九八二年六月八日の「日本史料講読」の講義)は、前作の中に収められるべきものであった。つまり、この日の「日本史料講読」の講義テープを私が紛失しており、その紛失分を以前コピーをお渡ししていた黒羽家よりお借りして、ここに収録することができた次第である(残念ながら我が家にあるはずのオリジナルテープは、いまだに発見されていない)。  まず、八一年度の五回分の講義(第一章および第二章3)について。  私自身は、実はこの講義の正式な受講者ではなかった。黒羽先生の評判を聞きつけて、時間が許す日のみ講義に潜入していた。だから、一年間のこの講義の流れを体験者として紹介はできない。ただ、その当時の静岡大学が学生に配布した「授業内容の紹介」と、この講義での先生のテキストである『日本史への招待』(黒羽清隆著、大和書房、一九七四年初版)から察して、講義の内容は原始・古代から近現代まで幅広く取り上げられたようである。  これらの講義は、前作同様静岡大学内での講義で、黒羽先生の魅力を十分に楽しめると思われるが、前作とこの講義とは、ずいぶん性格が異なるものとなっている。読者の皆さんには、是非とも前作と併読された上で、黒羽先生の魅力を味わってもらいたいと思う。  (中略)  第二章1は、大学で日本史を学ぼうとしている学生たち向けの入門講座として設定された講演である。日記・伝記史料の楽しみ方をアカデミックに紹介している。前作は『木戸幸一日記』を題材にした日記史料の全面的な研究の具体例であったから、この講演と前作とを並行して学ぶこともたいへん大きな楽しみではなかろうか。  第三章は、いわゆる日中戦争・日米戦争を通して戦争に対する民衆の意識を探ったものである。これらの講義・講演は平和教育、あるいは反戦・平和を訴える市民運動の中での発言を集めた。また、第四章は、教科書問題を題材として、学問、とりわけ歴史学のあり方や、大学そのもののあり方を問い直したものである。  教科書問題は、多岐にわたる問題の中で何が最も論争の火種になりやすいかといえば、その中心はやはり日本軍による侵略行為の記述であるから、第三章と第四章は決して無関係ではない。むしろ関係が深いというべきだろう。これらの講演とちょうど前後した時期に、中国をはじめとするアジア諸国から、猛烈な日本史教科書に対する批判が向けられた。第四章1などは、まさにその渦中における集会での記録である。  前述のように前作が、歴史研究者、大学での歴史教育実践者としての黒羽先生の魅力を遺憾なく紹介していることに比べると、今回はそれとはずいぶん異なった一冊になっている。部分によっては今回も前作同様の魅力を伝えているが、今回は、平和教育、反戦・平和の市民運動、教科書問題における教育運動など、多岐にわたる黒羽先生の活動を知ることができる。すなわち、今回、黒羽先生の講義・発言は、研究内容そのものだけではなく、前作ではなかなかふれることのできなかった研究内容にまつわる政治情勢や、研究に携わる者の姿勢、あるいは大学という研究・教育機関そのもののあり方にも及んでいる。総じて、前半では歴史を楽しく学ぶことを味わわせてもらえるが、後半では、私たち自身が歴史にどのように参加し、歴史をいかに築いていくのかという問いかけが、部分によっては相当強く発せられている。  私たちは、歴史というものと二つの付き合い方をしている。一つの付き合い方としては、すでに過去となってしまった歴史については、探究し、学び、あるいは楽しみ、そこから何らかの教訓を引き出したりすることができる。もう一つの付き合い方としては、今現在いずれは過去となる歴史の瞬間に参加しており、その舞台から降りることはできないのであって、未確認な未来に対して、私たち自身がどのように参加し、どのような歴史を築くのかを問われている。  黒羽先生の著作はすでに数多く出版されているが、今回ほど歴史への参加のモーメントを強く感じることができる出版物は、それほど多くはないように思われる。そうした一面も、黒羽先生の魅力を、読者の皆さんに新鮮に伝えることになるのではないかと期待している。 池ヶ谷真仁

著者プロフィール

黒羽 清隆(クロハ キヨタカ)

1934年2月25日 東京都杉並区阿佐ヶ谷に生まれる<br>1952年3月 東京都立武蔵ヶ丘高等学校卒業<br>1952年4月 東京教育大学文学部史学科入学<br>1956年3月 東京教育大学文学部史学科(日本史専攻)卒業<br>1956年4月 東京都新宿区立東戸山中学校教諭<br>1961年4月 東京都新宿区立四谷第一中学校教諭<br>1964年4月 東京都立大学付属高等学校教諭<br>1969年4月 NHK通信高校講座日本史〔テレビ〕担当(1979年3月まで)併任<br>1974年4月 東京学芸大学付属高等学校教諭<br>1975年4月 東京学芸大学教育学部非常勤講師(1977年3月まで)併任<br>1975年4月 中央大学経済学部非常勤講師(1977年3月まで)併任<br>1979年4月 静岡大学教育学部助教授<br>1981年4月 静岡大学教職員組合執行委員長<br>1981年4月 岡崎市史編纂委員<br>1981年5月 静岡大学教育学部教授<br>1981年9月 掛川市史編纂委員<br>1984年4月 静岡大学教育学部教務副委員長(1985年3月まで)併任<br>1985年4月 静岡県史編纂委員会近代史専門委員(1987年3月まで)併任<br>1987年6月19日 逝 去<br>(『昭和史(上)戦争と民衆』(1989年 (株)飛鳥)より転載)

上記内容は本書刊行時のものです。

池ヶ谷 真仁(イケガヤ マヒト)

1962年10月26日 静岡県静岡市に生まれる<br>1981年3月 静岡県立静岡西高等学校卒業<br>1981年4月 静岡大学教育学部養護学校教員養成課程入学<br>1985年3月 静岡大学教育学部養護学校教員養成課程卒業<br>1985年4月 静岡大学大学院教育学研究科社会科教育専攻日本史専修入学<br>1988年3月 静岡大学大学院教育学研究科社会科教育専攻日本史専修修了<br>1988年4月 静岡市立西奈小学校講師<br>1989年4月 愛知県私学豊川高等学校常勤講師<br>1995年4月 愛知県私学豊川高等学校教諭

上記内容は本書刊行時のものです。
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