ナショナル・アイデンティティをこえて紛争下のジェンダーと民族
シンシア・コウバーン:著, 藤田 真利子:訳
シリーズ・叢書「明石ライブラリー69」の本一覧
発行:明石書店 この版元の本一覧
四六判 400ページ 上製
定価:4,500円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-1998-8 (4-7503-1998-8) C0336
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奥付の初版発行年月:2004年10月 書店発売日:2004年10月22日
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紹介

英国の社会学者がおこなったフィールドワークで描き出す紛争下で対立するそれぞれの民族に属する女性たち。民族の対立,紛争の下でもっとも過酷な被害を受ける女性たちの視点から対立を解きほぐし,紛争を解決する道を模索する新しい試み。

目次

謝 辞
序 文
第1章 女性とナショナリズム
 北アイルランド——脱植民地後の地獄
 イスラエル/パレスチナ——間違いに間違いを重ねる
 ボスニア=ヘルツェゴビナ——エスニシティと運命
 同胞、民族、土地
 女性とフェミニズムとナショナリズム
第2章 北アイルランド——分断された町での女性の行動主義
 異なった文化、異なった階級
 共有された弱み
 草の根行動主義
 女性センター
 宗教の境界を越えて
 女性の生き方の変化
第3章 〈女性サポート・ネットワーク〉、ベルファスト
 差異と共通性
 不一致に対処する
 複数の架け橋
 同盟を維持する——差異の民主主義
第4章 イスラエル/パレスチナ——深淵を越えて
 キブツのユダヤ女性
 見知らぬ隣人——パレスチナアラブ人の女性
 女性の不利益とフェミニズムの勃興
 平和を求める女性の行動
第5章 〈バット・シャローム〉——平和を求める女性グループ
 アイデンティティの違いに対処する
 平和——もう一つの戦い
 政治的分断の大きさ
 団結を維持する——資源と脅威
第6章 ボスニア=ヘルツェゴビナ——崩壊するユーゴスラビアの女性たち
 チトー時代の女性
 ナショナルな計画に女性を利用する
 女性の行動主義と戦争
 反戦活動する女性
第7章 〈メディカ女性セラピー・センター〉
 トラウマに対応する
 チームにとっての〈メディカ〉の意味
 フェミニズムと民主主義
 〈メディカ〉でのエスニシティ
 支えあうこと
 エスニシティとジェンダーの関係——適応性のある革新
第8章 アイデンティティと民主主義
 アイデンティティ確立のプロセスと民主主義
 ナショナル・アイデンティティおよびジェンダー・アイデンティティと自我意識——ラダの物語
 暴力と民主主義の空間
解説(木本喜美子)
参考文献
索引

前書きなど

解説  木本 喜美子   本書の著者、シンシア・コウバーンさんは、常に時代をきりひらく研究書を世に問うてきた実証的社会学者である。現在も、ロンドンシティ大学ジェンダー研究所の名誉教授として教鞭をとっており、またオランダの人文科学大学(ユトレヒト)やスウェーデンのリンシェーピング大学で教鞭をとってきている。ジェンダーの視点からの労働研究からスタートした彼女は、九〇年代の半ばから、同じくジェンダーの視点を駆使しての戦争・平和・紛争研究にシフトさせてきている。本書は彼女の研究史におけるセカンド・ステージを飾る初めての著作であり、その意味で記念碑的な位置にある。  (中略)  こうして長年にわたって労働とテクノロジー変動をジェンダーの視点から実証的に考察するというジャンルを、文字どおり切りひらいた彼女は、同時に一貫してたいへん熱心な反戦運動の活動家でありつづけた。八〇年代にはアメリカによるイギリスへのミサイル配備に反対するグリーナムコモンの女性たちの闘いに加わり、九〇年代には「湾岸戦争に反対する女たち」を結成した。また一九九四年からは「ウィメン・イン・ブラック(黒衣の女性たち)」の活動家である。六〇歳の誕生日を迎えた彼女は、研究方向の大転換を決意した。それは、これまで培ってきた労働研究で磨きあげてきた方法をひっさげて、戦争と平和構築過程を対象とするジェンダー研究に身を投じる決意であった。自分自身のこれからの人生を何に捧げるべきかと考え、これまでの反戦活動家としての問題関心をストレートに研究課題化し、戦争を憎み平和を希求する女性たちの重大な役割を浮き彫りにしていく研究につきすすむ道を選択したのである。そして本書こそは、研究ジャンルの大きな転換を決意した彼女のはじめての作品であり、彼女の研究史においてターニングポイントを画するものである。  読者は、彼女の労働研究でとったのと同じ方法的スタンスを本書からも読み取ることができる。それは、深みのあるセンシティブなインタビューにもとづく実証的な研究方法が貫かれているという点である。インタビュー調査において初めて出会ったインフォーマントから深い話を聞きとっていく場面では、ややおおげさに言えば人間的力量が問われることになる。人々の話に共感しつつ重要な事実関係やそれを把握する主体の感受性をしっかりと受けとめていく過程は、調査者の人間性を鍛え上げていく過程でもあり、またそうして培われた総力が発揮されるまさに「現場」でもある。数限りない調査経験、そしてさまざまな社会的経験を蓄えてきた彼女は、今度の作品でもまたあたたかい人間力を最大限に発揮しての、精緻なインタビューの積み上げを最大限に生かしていることが明らかである。そこには被調査者と調査者のあつい相互信頼関係が埋め込まれていることに、読者は気づくにちがいない。とりわけ、はじめて彼女の反戦活動家としての関心にストレートに導かれた本書では、困難な活動にたずさわる女性たち、女性グループへの共感と理解が根底に据えられている。紛争の起こった地帯で奮闘する女性たちとのつきあいは、今も続いているという。(後略)

著者プロフィール

藤田 真利子(フジタ マリコ)

英仏翻訳家。アムネスティ・インターナショナル会員。主な訳書に『優生思想の歴史——生殖への権利』(スティーブン・トロンブレイ、明石書店)、『不完全犯罪ファイル——科学が解いた100の難事件』(コリン・エヴァンス、明石書店)、『そして、死刑は廃止された』(ロベール・バダンテール、作品社)、『娘とはなす 国家のしくみってなに?』(レジス・ドブレ、現代企画室)、『グローバリズムは世界を破壊する——プロパガンダと民意』(ノーム・チョムスキー、明石書店)、他多数。

上記内容は本書刊行時のものです。


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