行政サービスの決定と自治体労使関係
中村 圭介, 前浦 穂高
発行:明石書店
この版元の本一覧
A5判 288ページ 上製
定価:3,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-1972-8(4-7503-1972-4) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2004年09月
書店発売日:2004年09月27日
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紹介

市民への資金の貸付,補助金の交付,税金の算定・徴収,保健福祉,公共施設の提供など地方自治体の行政サービスの決定において,中央との関わりや自治体の裁量,そして労働組合の関与など望ましい労使関係を,1県,2市,1町の調査事例をもとに提示。

目次

第1章 目的と課題
1.行政サービスの決定
2.中央・地方の政府間関係
3.行政裁量
4.行政サービスの決定と労働組合
5.課題と方法

第2章 事前協議制の定着と参加への歩み
1.はじめに
2.事前協議制の定着
大規模機構改革と事前協議(1972年)/周到な準備と強硬姿勢(1979年)/革新系知事の誕生と事前協議制の定着/小括
3.組合の組織構造と交渉協議機構
組織構造/本部と総支部/交渉協議機構
4.行財政改革と財政非常事態宣言
行財政改革(第1期)/財政非常事態宣言と行財政改革(第2期)/労働組合の対応/小括
5.機構改革
2000年度機構改革/組織内交渉と事前協議/経済部の機構改革/対立点/小括
6.組織の再編統合(保健所)
組合の方針/再編統合(26保健所・21支所へ)/見直し(26保健所・14支所へ)/小括
7.むすび

第3章 参加路線と充実した労使協議機構
1.はじめに
2.参加の進展
革新市長の誕生と労使紛争/労使懇談会と住民要求調査/健福闘争と市民ニーズ調査/小括
3.交渉協議機構と参加
組合の組織構造と機関構成/交渉協議機構と付議事項/行財政改革/健福協議会/小括
4.定員
基本ルール/組織内折衝/部レベルでの交渉/小括
5.むすび

第4章 行政システムの検討と参加への胎動
1.はじめに
2.行政改革
基本方針と推進方向/策定機関とプロセス/民間委託/小括
3.採用と定員管理
定員適正化計画/採用/補充/小括
4.「参加」への胎動
全体の流れ/行政評価システム研究会議/行政評価システム検討委員会の活動/小括
5.むすび

第5章 機構改革、採用停止と労働組合
1.はじめに
2.行政改革大綱
大綱策定/実施事項一覧/行政改革推進計画/労使関係上の課題
3.機構改革
第1次当局案/組合案/第2次案と確定/配置/小括
4.採用と定員管理
採用計画/採用停止/長期採用計画/定員管理/小括
5.むすび

第6章 要約と含意
1.歴史
2.行政改革
3.組織改正と定員をめぐる労使関係
組織の再編統合/機構改革/定員変化/まとめ
4.行政への「参加」
5.背景と意義

前書きなど

 地方自治体で働く人々、とりわけ、忙しい中、組合活動に従事している人々、当局側として彼らとの交渉や協議に携わっている人々に、本書を読んでほしい。私は強くそう思う。  私たちが本書で描き出そうとするのは、一つの県、二つの市、一つの町における組織の再編統合、機構改革、定員変化をめぐる労使間の話し合いであり、さらに、事例によっては、行政諸施策にかかわる労使間の話し合いである。すでに、そうした話し合いが行われている自治体で働く人々にとっては、それはあたりまえのことであり、ことさら読むに値しないと思うかもしれない。だが、それでも、自らの経験と本書で綴られる経験を比較し、自分たちの位置を確かめてほしい。もし、話し合いがない、あるいは形式的な話し合いにすぎないというならば、本書をまじめに読んでほしい。そして、自分たちとは違う考えをもって、労使関係を築き上げてきた仲間の経験に学んでほしい。  これらの課題についての労使間の話し合いは、地方自治体が提供する行政サービスの内容・質・量を、部分的にではあれ、決定する。これが、私たちが本書で主張したいことの一つである。地方自治体の行政サービスの決定が、国会、中央省庁、地方議会、地方自治体によってなされることを知らないわけではない。これらの当事者と並んで、地方自治体の職員から構成される労働組合もまた、労使間の話し合いを通じて、行政サービスの決定に関与する場合がある。これが私たちの主張である。  地方分権改革とは、地方が提供する行政サービスの決定権を今まで以上に地方自治体に委ねていくことである。労働組合にとっては、行政諸施策、組織改正や定員をめぐる話し合いを通して、その決定に関与する機会が増えることを意味する。言い換えれば、労働組合は地方分権改革を積極的に推進する一翼を担えるかもしれない。そのために必要なことは、一つには、これらの課題について労使間で話し合う場を設けることである。換言すれば、労使協議制を確立し、充実させることである。二つには、本書が繰り返し強調するように、「自らの労働のありようを、サービスの受け手である市民の立場にたって見つめ直す」という運動を組合として創り、それを持続することである。言い換えれば、組合を構成する職員の自己改革、自己革新を進めることである。これらもまた私たちが本書で主張したいことの一つである。  できるならば、行政学を研究する人々、および行政学に関心を抱く人々にも本書を読んでいただきたい。私の専門は労使関係論であり、行政学の専門家ではない。だから本書も労使関係に関する本であって、行政学とは無関係だと思われるかもしれない。  「行政学は、国家の任務の中で、政策の執行を委ねられた行政システムと、その担当者である公務員集団の活動を説明することを目的としている」(村松岐夫『行政学教科書』有斐閣、1999年、1頁)。この定義に従えば、「公務員集団」のうち管理される側の職員から構成される労働組合が、当局との間で取り結ぶ労使関係もまた、行政学の研究領域に入るように思われる。しかも、上述したように、行政サービスの決定にかかわる重要な関係である。  行政サービスの決定において、地方自治体は中央省庁の厳しいコントロールの下にあるわけではなく、地方自治体にも独自の決定領域がある。予算、事業計画、条例などの形で、提供する行政サービスが公示されたとしても、実際に、どのようなサービスがどの程度、提供されるかは一義的には決まらない。以上の中央・地方政府間関係、行政裁量に関する研究の成果から、私は多くを学んだ。だが、それらの研究において、労働組合や労使関係が明示的に取り上げられ、その役割が論じられることは、きわめて少ない。なぜなのだろうか。この点への回答を含め、私たちの研究に対する厳しい批判をしていただきたい。制度改革が重要な政策課題となっているいまだからこそ、異なる学問による多面的な分析が必要だと私は思う。  もちろん、労使関係に関心をもっている人々にも、本書を読んでもらいたい。仕事と報酬をめぐるルールに焦点を当てながら、と同時に、一方で環境要因、他方で「産業民主主義」に注意を払いつつ、職場社会のありようと特徴を描き出す労使関係論は、産業社会の分析ツールとしていまなお有効である。その有効性は公共部門においても変わらない。少なくとも私はそう思う。労使関係論というツールをもって、行政学という異分野に挑戦するのは本書で二度目である。労使関係研究者の目からみて、この挑戦が成功したのかどうか、厳しい評価をしていただきたい。ちなみに、前回の挑戦は『教育行政と労使関係』(共著、エイデル研究所、2001年)としてまとめられている。  私の声が届くことのないことを十分に承知したうえで、それでもやはり、公務員制度改革に直接、間接に関係する人々にも、できるならば、本書を読んでもらいたいと願う。制度改革を論ずる際に、是非、現在の制度のもとで働き、生活している人々のことを忘れないでほしい。人間の行動のある側面を取り上げ、特定の制約条件のもとで、いかに行動するかを理論的に考えることは、とても重要であり、有用だと私は思う。だが、理論を現実に適用する際には、慎重でなければならないとも思う。そうした慎重さに欠け、節度を忘れた人々が、ごく一部ではあるけれど、存在する。しかも、制度改革論議の中心にいたりする。制度改革が働く人々にどのような影響をもたらすのか、これをリアリティをもって認識するためにも、本書を手に取ってほしい。(後略)

著者プロフィール

中村 圭介(ナカムラ ケイスケ)

1952年生まれ<br>東京大学社会科学研究所教授、経済学博士<br>主要著書<br>『日本の職場と生産システム』東京大学出版会、1996年<br>『教育行政と労使関係』(共著)エイデル研究所、2001年<br>『変わるのはいま─改革は地方公務員の手で』ぎょうせい、2004年

前浦 穂高(マエウラ ホダカ)

1974年生まれ<br>東京大学大学院経済学研究科博士課程<br>主要著書<br>「地方公務員の昇進管理─A県の事例を中心に」(『日本労働研究雑誌』No. 509、2002年12月)<br>「地方公務員の人事異動─A県の事例を中心に」(『日本労働研究雑誌』No. 524、2004年3月)

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