米国の爆撃による、罪のない民間人犠牲者たちアフガニスタン悲しみの肖像画(ポートレート)
「グローバル・エクスチェンジ」および「平和な明日を求める9.11遺族の会」:編, 寺島 隆吉:訳, 岩間 龍男:訳
発行:明石書店 この版元の本一覧
A5判 80ページ 並製
定価:1,200円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-7503-1971-1 (4-7503-1971-6) C0036
品切・重版未定 へ復刊希望を出す
奥付の初版発行年月:2004年09月 書店発売日:2004年09月17日
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紹介

米国主導の軍事作戦によって死亡したアフガニスタン民間人は800人余。「犠牲者」として括られがちな彼らの人生を明らかにすべく,9.11同時多発テロ犠牲者の遺族が調査を始める。人間の尊厳を追求する奮闘の記録。

目次

まえがき
序論
地方別犠牲者リスト
調査の方法
調査の例外
今後の課題
犠牲者の肖像
結論
米国政策立案者への提案

アフガニスタン悲しみの肖像画   解説・寺島隆吉
1. はじめに
2. 「ピースフル・トゥモローズ」との出会い
3. なぜ『アフガニスタン悲しみの肖像画』が必要だったのか
4. アフガンの人々は米国によるタリバン政権の打倒を望んでいるのか
5. 米国のアフガン介入は「人道的」理由によるものだったのか
6. ソ連のアフガン介入は米国によって仕組まれた罠だった!?
7. 「アフガニスタン犠牲者基金」をどう捉え、どう考えたらよいのか
8. タリバンはビン・ラディンの引き渡しを拒否したのか
9. タリバンと米国政府、蜜月と敵対の日々
10. おわりに
   参考文献および映像資料について

   あとがき

前書きなど

INTRODUCTION 序論  昨年、9.11テロ攻撃の犠牲者とその家族は世界中の人々から多くの同情と支援を受けた。これは当然のことである。9.11の悲劇は、想像を絶する恐怖の事件であった。その波紋の中で、無数の新聞特集、テレビ・ラジオ特別番組、写真コレクション、映像ドキュメンタリーが、その犠牲者と生存者の人柄や人間性を描いてきた。『ニューヨーク・タイムズ』の1年間続いた「悲しみの肖像画(ポートレート)」のシリーズは、犠牲者の人柄を巧みにつかんでいるという点で、特に感動的なものだった。  9.11の犠牲者数千人の顔や声を描写することによって、これらの企画は一人一人の人間の命の貴さを訴え、その攻撃の恐ろしさを強調するのに役立った。これらの物語を通じて、残虐行為の犠牲が実感を持つものとなり、世界は共感をもってこれに応えた。この無類の悲劇の中で、各人各様の生きざまが敬意をもって描写されていた。  それとは著しく対照的に、米国主導の軍事作戦で命を失ったアフガニスタンの民間人は、米国のメディアではほとんど注目されることがなかったし、ブッシュ政権によって実質的に認知されることもなかった。稀に、多少なりとも報道されることがあるとしても、それらの人々はしばしば集合的に「巻き添えの被害」として語られるだけだった。それは非人間的な表現であり、彼らの人間性を否定するものである。そのような表現を繰り返して使うことは、アフガニスタン人を人間として認めることを拒否する行為だ。  罪のないアフガニスタン民間人の苦しみに人間性を与える努力として、2002 年1月に国際的な人権組織である「グローバル・エクスチェンジ」はアフガニスタンへの画期的な代表団を送った。代表団のメンバーは、9.11の犠牲者の家族で、彼らは米国の爆撃作戦で愛する人々を失ったアフガニスタン民間人と個人的な結びつきを作りたいと望んでいた。代表団は、米国の攻撃で破壊的被害を受けたアフガニスタン人と会い、彼らの辛い物語を世界の人々に伝えるために、10日間にわたって記録する手助けを行った。  代表団は、過去23年間の戦争を経験してきた人々に、また米国の爆撃がいっそうの惨状を加えることになった事実に、強く心を揺り動かされた。彼らは、米国のメディアで報道されるアフガニスタンについての情報が極めて不足していることや、米国政府の援助機関によって提供される援助が非常に貧しいことに困惑した。代表団は、アフガニスタン人犠牲者の苦境を公にし、米国の攻撃で殺され傷つけられた罪のないアフガニスタン人の事例を調査することを誓った。この報告は、その誓約を実現するためのひとつの試みである。  2001年10月7日、米軍はタリバン政権を政権の座から引きずり下ろすための作戦の一部として、アフガニスタンへの空爆を開始した。10月から12 月半ばまで、米国とその同盟国の飛行機は24時間体制でアフガニスタン上空を飛び、数百カ所を空爆した。タリバンの軍事拠点が標的とされたが、空爆は時として標的を誤り、非軍事の民間人集落や建物を襲った。多くの場合、爆弾は標的に命中したが、それでもなお民間人に計り知れない影響を与えた。  たいてい米国のメディアは爆撃作戦を無血の落ち度のない精巧な武器の使用として描いていた。しかし、「グローバル・エクスチェンジ」は、独自の調査と米国以外の報道機関から、実際には民間人犠牲者が出ていることを知っていた。2002 年2 月、「グローバル・エクスチェンジ」は、9.11の犠牲者家族(現在は正式に「平和な明日を求める9.11遺族の会」として組織されている)の財政的援助で、何人の民間人が殺されたのかをつきとめる調査を始めた。  その調査は大部分が認知されていないアフガニスタン人犠牲者の顔や生きざまを明らかにするために行われた。それは犠牲者数や惨状を明らかにして、米軍の作戦によって被害を受けた人々への支援策を生み出すために行われた。  私たちの調査によれば、米国主導の爆撃作戦で2001年10月7日から2002 年の1月までに、少なくとも824人のアフガニスタン民間人が殺害された。しかし、私たちの調査を完全で広範囲のものにすることは不可能であった。なぜなら継続する爆撃のため現場に近づくことができず、爆撃の被害を受けた多くの州に到達できなかったからだ。記録できたのは、824人の民間人の死亡状況と家族に与えた悲劇的な結果の幾つかにすぎない。  実は、この調査は全人類共通の苦しみを示す方法として始められたのだった。たとえ9.11攻撃のような「民間人被害が意図的である場合」と、爆撃作戦のような「民間人犠牲が事故である場合」の間に、重要な区別がなされなければならないとしても、人の死は同じである。ニューヨークに住んでいようがカブールに住んでいようが、両親・子どもたち・夫たち・妻たち・兄弟姉妹・友人たちは苦しみ悲しむのである。愛する者の死を経験する時、悲しみは国籍や言語や人種や民族を区別しない。  この報告は、犠牲となった罪のない人々の生命を敬い、生き残った人々の苦しみを受け入れる努力として提供されている。犠牲者の肖像を伝えることによって、9.11の犠牲者家族に差し伸べられた同情と援助が、アフガニスタン民間人犠牲者にも差し伸べられることを、私たちは期待している。

著者プロフィール

寺島 隆吉(テラシマ タカヨシ)

1944年生まれ。東京大学教養学部教養学科(科学史・科学哲学)卒業。岐阜大学教育学部教授。英語教育応用記号論研究会(JAASET)代表。コロンビア大学、カリフォルニア大学バークリー校、サザン・カリフォルニア大学客員研究員、カリフォルニア州立大学ヘイワード校日本語講師。
訳書:K・ブース& T・ダン(編)『衝突を超えて──9.11後の世界秩序』(監訳、日本経済評論社)、チョムスキー『チョムスキー 21世紀の帝国アメリカを語る──イラク戦争とアメリカの目指す世界新秩序』(明石書店)、ロートブラット他(編)『核兵器のない世界へ』(共訳、かもがわ出版)など。
著書:『学習集団形成のすじみち』(明治図書)、『つまずく生徒とともに』(共著、三省堂)、『センとマルとセンで英語が好き!に変わる本』(中経出版)、『英語にとって学力とは何か』、『英語にとって授業とは何か』、『英語記号づけ入門』、『英語音声への挑戦』全6巻、編著『シリーズ授業の工夫』全5巻、(以上、三友社出版)、『国際理解の歩き方 映像と音楽で学ぶ平和・人権・環境』『英語にとって評価とは何か』『英語にとって教師とは何か』(以上、あすなろ社/三友社出版)他多数。

上記内容は本書刊行時のものです。

岩間 龍男(イワマ タツオ)

1954年生まれ。愛知県立大学外国語学部英米学科卒業。岐阜県立各務原高校教諭。英語教育応用記号論研究会(JAASET)会員。
これまで下訳者として以下の翻訳に関わった。K・ブース& T・ダン(編)『衝突を超えて──9.11後の世界秩序』(日本経済評論社)、チョムスキー『チョムスキー 21世紀の帝国アメリカを語る──イラク戦争とアメリカの目指す世界新秩序』(明石書店)。また共訳者として以下の翻訳に関わった。「チョムスキーと国際理解教育とイラク情勢」(2003年岐阜大学教育学部研究報告)、「チョムスキーと国際理解教育とイラク戦後」(2004年岐阜大学教育学部研究報告)

上記内容は本書刊行時のものです。


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