スポーツ・ジェンダー学への招待
飯田 貴子:編著, 井谷 惠子:編著
発行:明石書店
この版元の本一覧
A5判 344ページ 上製
定価:2,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-1944-5(4-7503-1944-9) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2004年07月
書店発売日:2004年07月07日
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紹介

スポーツ分野におけるジェンダー研究はこの数年で急速に進んでいる。本書は,それらの成果を集大成し,歴史,文化,教育,身体,ムーブメント,可能性などから体育・スポーツのジェンダー構造を包括的に読み解いた初の入門書である。

目次

序章 スポーツ・ジェンダー学のプロローグ
第1節 スポーツのジェンダー構造を読む 飯田貴子
第2節 スポーツにおけるジェンダー構造の現状を見る 井谷惠子
第3節 女性スポーツのムーブメントを問う 井谷惠子

第1章 ジェンダー・シンボルとしてのスポーツの登場——歴史
第1節 近代スポーツの発展とジェンダー  來田享子
第2節 スポーツへの女性の参入  來田享子
第3節 スポーツとナショナリズム  阿部 潔
コラム1 高等女学校——日本女性スポーツ黎明期を支える  北田和美
コラム2 ドイツ体操祭の歴史から見た女性体操のジェンダー問題  吉中康子

第2章 ジェンダーを増幅するスポーツ——文化
第1節 スポーツ・コマーシャリズムとジェンダー  平川澄子
第2節 スポーツ・メディアの現状——テレビスポーツのジェンダー分析  飯田貴子
第3節 スポーツと男らしさ  吉川康夫
第4節 スポーツとジェンダー表象  阿部 潔
第5節 女性スポーツの商品化  梅津迪子
コラム3 スポーツウェア  萩原美代子
コラム4 競技年齢とジェンダー  赤坂美月
コラム5 ロッカールームの倫理学——スポーツ文化・男らしさ・ホモソーシャリティ 岡田 桂

第3章 スポーツする身体とジェンダー——身体
第1節 近代スポーツと身体観の変遷  松田恵示
第2節 スポーツ記録とジェンダー  田原淳子
第3節 スポーツにおけるセクシュアル・ハラスメント  熊安貴美江
コラム6 摂食障害  涌井佐和子
コラム7 ドーピングと女性アスリート  近藤良享
コラム8 スポーツと体罰  阿江美恵子
コラム9 相撲——痛みと感動のなかのジェンダー問題  池本淳一

第4章 ジェンダーを生産する体育・スポーツ——教育
第1節 学校体育とジェンダー  井谷惠子
第2節 子どもの遊びとジェンダー  佐野信子
第3節 女性のスポーツ嫌いとスポーツ離れ  井谷惠子
第4節 体力テストとジェンダー——文部省「スポーツテスト」を問う  飯田貴子
コラム10 ジェンダーと運動音痴の男たち  大束貢生
コラム11 レモンの砂糖づけと女子マネージャーの歴史  高井昌吏
コラム12 性を分割する体育  橋本秀雄
コラム13 男女共習VS男女別習——男女共習体育授業は本当に必要だろうか?  佐野信子

第5章 ジェンダー再構築への挑戦——ムーブメント
第1節 女性とスポーツをめぐる国際的なムーブメント  來田享子
第2節 TitleIXの成立と30年  井上洋一
第3節 オリンピック・ムーブメントとジェンダー  田原淳子
コラム14 イスラーム女性とスポーツ——イランを中心として  荒井啓子
コラム15 「ゲイ・ゲームズ」  稲葉佳奈子
コラム16 シニア女性のスポーツ熱  工藤保子

第6章 オルタナティブなスポーツ文化の創造——可能性
第1節 ジェンダー視点から見たウォーキングブーム  高峰 修
第2節 オルタナティブな存在としての障害者スポーツ  藤田紀昭
第3節 ジュニアスポーツとジェンダー——バイアスをさらに弱めるために  近藤良享
第4節 ワールド・ジムナストラーダ  松本迪子
コラム17 オルタナティブとしての女子ボクシング  藤山 新
コラム18 車いすダンス  寺田恭子
コラム19 『ウォーターボーイズ』  谷口雅子

文献
あとがき

前書きなど

あとがき  『スポーツ・ジェンダー学への招待』発刊にあたり、何より嬉しいことは、体育・スポーツ分野におけるジェンダー問題を取り扱った「1冊の書」を世に出せたことである。日本の体育・スポーツ分野において、ジェンダーが問われるようになった歴史はごく浅く、1990年代中頃以降のことである。20年以上もの蓄積がある他分野、あるいは諸外国に比べて大きな遅れをとっている。  日本体育学会で「ジェンダー」というキーワードがはじめて登場したのは1994年で、体育社会学専門分科会シンポジウムでは伊藤公雄さん(大阪大学)が「スポーツとジェンダー」について報告された。伊藤さんはそのなかでジェンダーを「女性は子どもを産む。けれども、子どもを産むからといって、子育てや家事が女性に向いているというのは、セックスとジェンダーを混同している」と説明された。フロアにいる会員は半信半疑というありさまであったように記憶している。  1998年に『ジェンダーで学ぶ社会学』(世界思想社)、『変容する現代社会とスポーツ』(世界思想社)、『スポーツの社会学』(杏林書院)が相ついで出版されたが、スポーツとジェンダーに関わる記述は、その一部を占めているにすぎなかった。  その後、スポーツとジェンダーに関心を持つ主として女性研究者により、研究/実践活動が個々に進められてきた。こういった活動を通し、点在していた研究者が、次第に連帯し1つの目的、つまりスポーツにおけるジェンダー問題を探求するという目的を持って活動するようになった。その成果であり、さらなる原動力を生み出したのは、2000年に発刊した『目でみる女性スポーツ白書』(大修館書店)と『フェミニズム・スポーツ・身体』(世界思想社)であったと推察する。  これらの企画・編集作業を通じて得られたネットワークは広さと深まりを増した。つづいて、本書の土台となった『体育科教育』連載「スポーツのジェンダー学」(大修館書店)が2001年4月から2年間続き、待望の『スポーツ・ジェンダー学への招待』発刊が実現するに至った。  その間、研究組織としてのまとまりも実現し、2002年に「日本スポーツとジェンダー研究会:Japan Society for Sport and Gender Studies」を設立することができた。こうして振り返ってみれば、編者として感慨深く、また共に歩んできた仲間たちと喜びを分かち合いたい気持ちで一杯である。  本書は、「スポーツ・ジェンダー学」の入門書である。そして、執筆者は体育・スポーツ研究の内外から合わせて33名にもなる。通常の書物としては異例であろう。しかし、このことは、「スポーツ・ジェンダー学」をより多くの人びとに理解してもらい、実践への広がりを持たせるという本書の企画に沿っている。ここであらためて、協力いただいた執筆者各位に感謝の意を申し上げたい。  ところで、近年のジェンダー理論は、ジェンダー解体への道々で多様なジェンダー・トラブルを起こすことを予見している。その過程における優先課題は、人間の性を「女」/「男」というように二元論的立場で捉えることからの脱皮であると考えられている。  しかし、本書の編集を通じて気がつくのは、その枠組みから離脱する道筋がきわめて険しく複雑であるということである。たとえば、序章のなかで、女性間の差異について配慮することを述べているにもかかわらず、編者を筆頭に女性をひとくくりにして論じすぎているように思う。このひと月ばかり、毎日のように紙面に掲載されているイラク戦争におけるイラク人への虐待問題では、米軍女性兵士が加害者として軍法会議にかけられようとしている。女性だから非道なことはしないなどという一般論は、通じないことを痛感する。体育・スポーツ界でも同様である。「スポーツ・ジェンダー学」を進展させていくにあたり、このことは肝に銘じておかねばならないだろう。    本書は序章から第6章まで、歴史、文化、身体、教育、ムーブメント、可能性をテーマに25節、19コラムで構成されている。今日的トピックも包括したつもりであるが、編者の力量不足は否めない。多くの読者の目に触れて、テーマ選択や各論考に関するご批判を仰ぎたい。それが、スポーツ・ジェンダー学発展への近道だと信じている。(後略)

著者プロフィール

飯田 貴子(イイダ タカコ)

帝塚山学院大学人間文化学部教授<br>専門:スポーツ社会学 スポーツ・ジェンダー学<br>主な著書:『目でみるシニア健康体操』(共著)大修館書店 1993年、『講座・スポーツの社会科学/スポーツの社会学』(共著)杏林書院 1998年、『フェミニズム・スポーツ・身体』(監訳)世界思想社 2001年、『現代メディアスポーツ論』(共著)世界思想社 2002年

井谷 惠子(イタニ ケイコ)

京都教育大学教授、博士(学校教育学)<br>専門:体育科教育学 スポーツ・ジェンダー学<br>主な著書:『目でみる女性スポーツ白書』(共編著)大修館書店 2001年、月刊『体育科教育』連載「スポーツのジェンダー学」(編集)大修館書店 2001年4月−2003年3月、『体力づくりからフィットネス教育へ』(単著)明石書店 2004年9月刊行予定

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