アメリカの人種偏見と黒人差別サンボ
ジョゼフ・ボスキン, 斎藤 省三:訳
発行:明石書店
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四六判 392ページ 上製
定価:3,800円+税 総額を計算する
ISBN978-4-7503-1938-4(4-7503-1938-4) C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月:2004年07月
書店発売日:2004年07月07日
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紹介

米国の歴史のなかで浮かんでは消え,消えては浮かぶ黒人像・サンボ。白人社会の黒人に対する根深い蔑視に特徴づけられるサンボの変遷を歴史・社会・文化の多様な側面から追跡する。

目次

1 時間を逆転させた墓碑銘
2 名の通り
3 皆様すこしお静かに。アメリカが生んだ初めてのエンターテイナー・サンボをご紹介します!
4 舞踏場でもサーカスでも、劇場、ピクニック、教会、学校、刑務所でもへこたれることのない元気いっぱいの、笑いを絶やさないジム・クロー様をご紹介いたします!
5 肉太活字の印象
6 色彩豊かな投影
7 カメラの目
8 ラジオの耳——おかしな二人の親類
9 解放主義者としてのおろかもの


訳者あとがき

写真
索引

前書きなど

訳者あとがき  本書はJoseph BoskinのSambo: The Rise & Demise of an American Jesterの全訳である。  本書は一九八六年に初版がオックスフォード大学出版局から出されている。他民族に対する偏見と差別の根源を究める上で新しい方法論を提示しているとして高い評価を得ている。偏見が日常的な笑いの中で形成される過程をきめ細かく分析している。  著者のボスキン氏はアメリカのボストン大学教授で、歴史学研究者であるが、特にアフリカ系アメリカ人に興味をお持ちである。アメリカ文化におけるアフリカ系アメリカ人の果たした役割、特に笑いの文化について造詣が深い。ボスキン氏はニューヨーク州立大学を卒業したあとニューヨーク大学で修士号を取得、その後ミネソタ大学で Ph.D を取得している。ミネソタ大学、アイオワ大学、南カリフォルニア大学などで教えた後ボストン大学教授となり現在に至っている。多くの論文、記事を書き、新しい切り口のもとに研究を深めると同時に啓蒙にも力を注いでいる。主な著書にはRebellious Laughter『反抗的な笑い』、Humor and Social Change in the Twentieth Century『二十世紀におけるユーモアと社会変化』、Into Slavery『奴隷へ』、An Oppenheimer Affair『オッペンハイマー事件』等がある。  『ちびくろサンボ』(本書では『黒人少年サンボ物語』と原文に近い形で訳している)が日本でも絶版になっていることは多くの日本人の知るところである。絶版というよりも廃版、発行禁止といった方が適当かもしれない。その理由はいうまでもなく、黒人に対する差別を助長するから、というものである。黒人に対する差別に留まらず、民族と民族の間の偏見と差別、同じ民族・国民の中での差別・偏見、男女間の偏見と差別をできるだけなくそうとする世界的な流れの中で起こった現象である。当然といえば当然の社会現象である。偏見・差別に関しては日本での反応はやや遅い感じがないでもないが、世界の大勢に逆らうことはできない。男女の差別については法制的な問題としてはクリアーしているとしても、実生活の場面では差別は厳然として存在しているというべきかも知れない。「負け犬の遠吠え」なる書物が売れるところを見ると心理的差別はかなり強いものがあるのであろう。黒人差別などの問題をわれわれの身近な問題と結び付けて読んでいただけると差別の本質を理解する上で役立つと思われる。ことばの問題としては他の表現形式に変えることによって差別の本源となることの本質の捉え方を見直している。表現を変えたというのは表面的なことばの問題ではなく、本質の捉え方を見直した結果出てきたことであろう。アメリカでは黒人を表す一般的なことばであったnegroとかniggerなどは現在の辞書でtaboo slang 「俗語で禁句」と表記されている。  差別そのものや差別的用語法を廃止することに賛成する日本人でも「サンボ」についての意見が分かれることがある。私は何人かの母親に「ちびくろサンボ」について感想・意見をお聞きした。「ちびくろサンボ」のどこが差別的なのか、とする意見が案外根強い。日本の桃太郎の鬼退治物語と変わらないのではないか、子供に勇気というものを教えることができる良い本だ、とする意見を述べた母親もいた。インターネット上でもサンボ復活論が出されているぐらいである。数社から出ていた『ちびくろサンボ』の巻末には解説としてちょっとした文章が児童文学者、評論家、出版関係者、翻訳者などによって書かれている。その中には「ちびくろサンボ」は「永遠のアイドル」とか「イギリス児童文学の傑作童話」などの文字が見られる。「ちびくろサンボ」誕生までの具体的な歴史的背景を欠いた所から出たことばであろう。  本書はアフリカ黒人が奴隷化され、商品としてアメリカ大陸へ輸出されるいきさつ、移送中の船中での生活、プランテーションでの労働と日常生活、娯楽を中心としたアメリカの大衆文化に取り込まれる過程などが活き活きと描写されている。その全ての過程に差別が大きく横たわっていることを著者は余すところなく明らかにしている。本書の意義の一つはその辺にあるだろう。日本でのアメリカ黒人問題の第一人者である猿谷要氏の『アメリカ黒人解放史』には目を覆うような奴隷の実態が書かれている。アフリカ黒人はどこででも奴隷化されることに抗議・反抗している。アフリカ大陸から大西洋を移送されている船中でも機会をうかがって反抗を試みている。その反抗に対して白人の奴隷商人は残忍極まりない方法で鎮圧に努めた。首謀者を殺し、その体を切り刻んで、内臓を取り出し、その内臓を他の者に食べるよう命じている。いったんアメリカ大陸へ渡ると大農場での奴隷生活が始まる。ことばは通じない、文化、宗教は全く認められない。そのような生活の中で故郷の歌と踊りが唯一の楽しみだったことであろう。その才能を白人は自分らの娯楽として利用したのだった。白人といえども都会からはるかに離れた大農場では娯楽といえるほどのものは全くない時代である。そのうち娯楽専用の奴隷が誕生するようになる。その辺のところを著者は丁寧に跡付けている。  黒人の娯楽性について著者はもう一つの要素を上げている。黒人の明るさである。笑い、所作、歌、踊りが一体となっている。苦痛というべき昼間の労働のあとでも活き活き歌い、踊り、笑うのは黒人の天性であり、その子供じみた底抜けの明るさは「知能の低さ」から来るもの、と白人の偏見は確信へと発展する。ステレオタイプ化(固定観念化)が形成される過程を著者は克明に追っている。その固定観念化が偏見・差別へと発展する。実はここ数年にわたって日曜日の夜に放映されているある娯楽番組があるが、その番組に三人の黒人が出演している。三人の黒人の出演の目的は「笑い」を取るためである。日本語がまだ十分でない(ように思われるが)ためか、言い間違えることが多いが、笑いは単に言い違いで取るのではなく、それに対する反応、お叱りに対する反応、物事に全般に対する反応のおかしさで笑いを取っている。あのおかしさの要素の中に三人が「黒人である」ことが入っていないだろうか。私は多くの日本人にその辺について質問してみた。驚いたことに「黒人の純粋さ、明るさ、幼さ」を上げた人がかなりいた。もちろんそれに対する否定的な意見を述べた人もいた。「あれは意識した演技である」「あれはデイレクターに指示されてやっている演技である」演技である点では同じ意見である。問題は前者の意見であるが、「黒人はそういう人種である」と言い切った人はいなかったが、本書の著者も言っているように具体的に直接黒人と接する機会のない人たちは程度の差はあれ、黒人について何らかの「固定観念化」がおこなわれていないだろうか。ついでにその番組について言うならば、笑いを子供にも求めている。話がそれてしまったが、「ちびくろサンボ」の成立過程を克明に追っていくと『ちびくろサンボ』の廃版の理由が理解される。(後略)

著者プロフィール

ジョゼフ・ボスキン(ボスキン,ジョゼフ)

アメリカ・ボストン大学歴史学教授

斎藤 省三(サイトウ ショウゾウ)

前東海大学講師、武蔵野外語専門学校講師<br>上智大学卒業後、中・高等学校の英語教師を経て、カリフォルニア州フンボルト大学に留学・中退。アメリカ・インディアンの家族と認められる。<br>〈主要著書・訳書〉<br>『外国語教育』『外国語の授業』『中学校教科書の研究』(以上、共著、一ツ橋書房)、『教科別学習大辞典・英語』(共著、旺文社)、『アメリカ先住民ウェスタン・ショショニの歴史』『アメリカ先住民アリゾナ・フェニックス・インディアン学校』(以上、明石書店)他。

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